( 253076 )  2025/01/21 18:17:55  
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日本銀行の植田和男総裁 Photo/gettyimages 

 

筆者は日銀が2024年12月の決定会合で利上げを実施する可能性を指摘した。結果は、ご存じのとおり、その予想は見事に大外れしたということになる。では、来る1月22、23日の決定会合は、どうなるだろうか。 

 

筆者は、つぎの決定会合で利上げが行われるだろうと考えている。 

 

12月の決定会合の見誤りについては、前編『日銀・植田総裁の「真意不明の発言」で混迷!円安&物価高が一段と進む中…日銀政策決定会合「迷走の真実」』でその理由を説明してきた。 

 

日銀は12月18・19日の金融政策決定会合で政策金利の引き上げを見送ったが、植田総裁は、その理由を2点あげた。 

 

第1は日本経済にも大きな影響を与える可能性のある米国のトランプ次期政権の経済政策の行方と影響。 

 

第2は賃上げ動向で、「来年の春闘に向けた賃上げのモメンタムを確認するために、もう少し(ワンノッチ)情報を待ちたい」ということだった。 

 

しかし、トランプが1月20日の大統領就任式でどの程度の政策を打ち出すかも不透明なら、その実現性も不透明である。賃上げも、その実確実な賃上げ動向は春闘まではっきりしない。 

 

そのため、市場では植田総裁があげた2点がある程度明確になるには時間がかかるとの見方から、日銀の利上げは1月ではなく、3月ころまで後ずれするのではないかとの見方が広がり、1ドル157円台まで円安が進んだ。 

 

植田総裁は、利上げに踏み切るだろうか…Photo/gettyimages 

 

一方で、植田総裁は「この2つの要因がはっきりするまで利上げはしないという訳ではなく、会合ごとに総合的に判断して利上げ時期を決める」と述べ、1月利上げを否定しなかった。 

 

キーは米国の金融政策だっただろう。 

 

米国では米連邦準備制度理事会(FRB)が12月18日に0.25%の利下げを実施した。3会合連続での利下げだ。実は、この米国の利下げが日銀に利上げを思いとどまらせる原因となったのではないか。 

 

2024年7月の0.25%の利上げで、日銀は大きな間違いを犯した。米国が利下げを実施したにも関わらず、日銀が利上げを実施したことで、市場は大きく動揺し、日経平均株価の大暴落を引き起こした。この株価暴落は、日本だけではなく米国やその他の国にも波及し、世界的な株価の大暴落の原因となった。 

 

日銀には、この“トラウマ”があったのだ。 

 

 

日本銀行 Photo/gettyimages 

 

しかし、1月の決定会合では、米国の利下げに対して、日本の利上げという構図は起こらない。米国のFRBは2025年の利下げペースが大きく鈍化するとの見通しを示しているため、米国が1月に利下げを実施する可能性は極めて低い。 

 

その上、1月14日には氷見野良三副総裁が神奈川県金融経済懇談会で講演し、その後記者会見で「1月の決定会合で利上げするかどうかが議論の焦点になるだろう」と述べ、利上げに前向きな姿勢を示した。 

 

1月の決定会合前に政策委員が懇談会を開くのは極めて異例であり、市場では「1月利上げの布石」と受け止められている。 

 

いずれにしても、12月の利上げを見送ったことで、円安が進行し、物価は再び上昇の兆しを見せている。過度な円安と物価高を放っておくことはできないだろう。 

 

これまでも指摘してきたが、日銀と市場との対話はうまくいっているとは言い難い。 

 

混乱した金融市場を鎮めるためにも、また、円安進行の歯止めのためにも、日銀の1月利上げの可能性は、より高まっている。 

 

さらに連載記事『日本株を襲うもうひとつの「不都合な真実」…日銀利上げで「円高デフレ大逆流」が招く「日経平均2万8000円台」の悪夢のシナリオ』では、今後の金融政策の影響について詳しく解説しているので、ぜひ参考としてほしい。 

 

鷲尾 香一(ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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