( 253364 )  2025/01/22 06:34:54  
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40代の女性が二人目妊娠で二度の稽留流産を経験し、男女生み分け法に出会う。

男女生み分け法は、夫婦の希望をかなえる医療技術で、産婦人科医師のサポートがあり、性別を選ぶことができる。

長崎県医師会会長の森崎氏によると、男女生み分けは50年以上の歴史があり、初めは跡継ぎ問題で男の子が希望されていたが、時代の変化で女の子を望む声も増えている。

男女生み分けの成功率は60〜80%で、希望しない性別の赤ちゃんを授かっても母親が落胆したケースは報告されていない。

男女生み分けは自然な方法を基盤にしており、性別選択だけでなく重篤な遺伝病の回避にも応用される。

成功するには膣内の酸性度を調節するなどの方法があり、着床前診断も行われる。

女性は希望通り男の子を授かり、男女生み分けを選択して良かったと感じている。

(要約)

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長崎放送 

 

第一子に恵まれたものの、二人目妊娠では立て続けに「稽留(けいりゅう)流産」を経験した40代女性。年齢を重ね押し寄せる焦りと不安の中で出会ったのが『男女生み分け法』だった。日本で50年以上の歴史を持つ医療技術で、自然な方法を基盤に夫婦の希望をかなえるための医師のサポートだ。そして女性が授かったのは…。専門医が語る実状と、実際にトライした女性の思いを取材した。 

 

■心揺れる決断 ―二人目への道のり― 

 

長崎市在住、フルタイムで働く女性が第一子を授かったのは働き盛りの30代の時だった。今から約10年前。夫が男の子を希望する中、第一子は女の子だった。 

 

育休を終え職場復帰して間もなく、2人目を妊娠した。「次はどっちかなー?」夫婦で夢を膨らませる日々。「男の子がいいな」夫は男の赤ちゃん誕生への思いを口にしていた。 

 

しかし6週目になっても胎児心拍が確認されず「稽留流産」と診断された。稽留流産は、本人には自覚症状がなく、受精時に偶発的におきる染色体異常によるものが多いといわれている。 

 

流産を経験した1年後、女性は再び「妊娠」。しかしまたも「稽留流産」だった。年齢を重ねる中で、「二人目不妊」という言葉が頭をよぎり、焦りと不安で押しつぶされそうだった。 

 

その時耳にしたのが『男女生み分け法』だった。性別を選べるの?親が選んでいいの?色んな思いが押し寄せる中、気持ちは固まっていった。「あと1人授かることができるなら男の子が欲しい」。 

 

■時代とともに変化する「男女生み分け」の役割 

 

長崎県医師会の会長で、長崎市の産婦人科院長を務める森崎正幸氏。「男女生み分け」に従事して50年以上になるベテラン医師だ。 

 

森崎医師によると、日本で「男女生み分け」の研究が始まったのは約50年前。当時、全国の産婦人科医が集まって「SS(性別事前選択法)研究会」を発足し、約1,000人の医師が所属して情報交換を行ってきた。しかし、少子化の影響もあり現在では参加する医師の数は減少しているという。森崎医師は、会の発足当時からのメンバーの1人だ。 

 

 

およそ半世紀、医師として「男女生み分け」を指導してきた森崎正幸医師は、生み分けを希望する人の思いを通して、家庭環境の変化を感じていると話す。 

 

長崎県医師会 森崎正幸会長(宝マタニティクリニック院長): 

「男女生み分け法が始まった約50年前は、産婦人科を訪れる人の中に、『跡継ぎ問題(家系を守るための選択)』や男系家族を重要視する『社会の風潮』があって「男の子」を望む声が多かったんですよ」 

 

「その後、多子家庭で、『次こそは別の性別の赤ちゃんが欲しい』と生み分けを希望する人が増えました。今では初産でも、かわいい服を着せたいから女の子が欲しい、老後のことを考えたら世話をしてくれる女の子を―と、女の赤ちゃんを望む人が増えています」 

 

■成功率は60〜80% 

 

森崎医師が院長をつとめる産婦人科院には、年間約230人の出産希望者が訪れる。そのうち「男女生み分け」を希望するのは約10人。成功率は、男女ともに「60〜80%」だ。 

 

この成功率は、SS研究会が発足した当時から変わっていないという。しかし、指導された方法を守らない夫婦が増えていることから「今後は成功率が下がる可能性がある」とのことだった。 

 

■「希望の性別」ではなかったーその時母親は 

 

成功率が「60〜80%」、つまり失敗率は「20〜40%」。 

 

森崎医師が、生み分けに携わる中で、最も記憶に残っている女性がいる。3人の女の子を育てる女性が、「次は絶対に男の子が欲しい!」と相談に訪れた。その後、男女生み分けに挑戦したものの・・・授かったのは、「双子の女の子」だった。 

 

性別を聞いたら落ち込むだろうな…。森崎医師は恐る恐る「双子の女の子です」と伝えた。すると女性は「本当に!?男の子が良かったけど・・・でも、うれしいです!ありがとうございます!」と、とびきりの笑顔で幸せそうに答えてくれたという。 

 

成功率を事前に伝え理解を得た上で「生み分け」にトライしてもらっているとはいうものの、希望の性別でなかった場合、それを伝えることは医師としては心苦しい場面だ。しかし、森崎医師がこれまで担当した妊婦の中で、「希望ではない性別」の赤ちゃんの妊娠に落ち込んだ女性は1人もいないと言う。 

 

 

長崎県医師会 森崎正幸会長: 

「赤ちゃんはそれほどまでに色々なパワーを持っていて、そこに存在することだけで奇跡だから!」 

 

■どうすれば生み分け可能に? 

 

男の子、女の子を確実に産み分けられる方法は存在しない。それを前提に、専門医による産み分けの指導は、‟膣内の酸性度”をコントロールする事を基本に行われる。X精子は酸性の環境に強く、Y精子はアルカリ性の環境に強いといわれており、専用のゼリーなどを使って女の子を希望する場合は膣を酸性の状態に、男の子を希望する場合は膣をアルカリ性にする。 

 

他にも、希望する性別の精子を選別する方法や、受精卵の染色体を調べて子宮に戻す着床前診断などがある。 

 

森崎医師が所属する「SS研究会」では、基礎体温表をつけて排卵日を把握しながら、避妊や受胎性交(妊娠のための性交)日のタイミングなどを指導していく。 

 

長崎県医師会 森崎正幸会長: 

「食べ物で男女を生み分けることはほぼ不可能です。自然の摂理に反することなく、限りなく自然に近い方法で、生殖医学の根拠に基づいた工夫を加えて、性選択の成功率を高めていく、それが男女生み分け法なんです」 

 

■重篤の遺伝病の回避にも 

 

男女の生み分けは、体外受精で得られる受精卵の着床前診断を用い、重篤な遺伝病を回避するために選択されるケースもある。 

親から子へ伝わる「伴性劣性遺伝病(X連鎖劣性遺伝病)」。代表的なものには、血友病(AB)、赤緑色覚異常、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどがあり、X性染色体にある遺伝子の異常によって起こる。 

 

男性(XY)はX染色体が1個しかないため、病気の遺伝子を受け継ぐと必ず発病する。一方、女性(XX)はX染色体が2個あるので、片方が病気の遺伝子でも、もう片方が正常であれば、発病しない可能性がある。 

 

男女生み分けによって、遺伝病そのものが治るわけではない。しかし「潜在者(病気の遺伝子の保因者)となっても、発病しないのであれば女の子をうみたい」との願いがあるのだ。 

 

 

長崎県医師会 森崎正幸会長(宝マタニティクリニック院長): 

「妊娠は神秘的なもので、本来は性別もわからないものです。人間の原点なのでベールがかかっていていい。しかし性の選択に関して私は悪いとは思いません。自然な営みの中で若干補助的にお手伝いします」 

 

「夫婦で性別を選択するという決断をし、努力をする訳だからそれはすごいいいこと。もしうまくいかなかった(希望する性別ではなかった)としても、生まれたら誰もが喜びにあふれる。赤ちゃんは周りを幸せにするパワーを持っています」 

 

■授かった命 

 

二度の「稽留流産」の後、男女生み分け法にチャレンジした女性は、その後希望通り「男の子」を授かった。姉弟で元気いっぱいに走り回っている姿を見て「男女生み分け」を選択して良かったと感じているという。 

 

そして「将来の家族像」について夫と一緒に真剣に考えた時間は、その後の人生においてもかけがえのないものになったと話した。 

 

長崎放送 

 

 

 
 

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