( 253416 )  2025/01/22 14:42:44  
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「つばさの党」黒川敦彦被告と「N党」立花孝志氏 

 

 衆議院の補欠選挙で他陣営の選挙運動を妨害した罪に問われている政治団体「つばさの党」代表の黒川敦彦被告(46、保釈中)が「デイリー新潮」のインタビューを受け、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首に対して「もう誹謗中傷はやめるべきだ」と呼びかけた。自身のこれまでの活動についても見直し「もう凸行為はやめる」と語った。 

 

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 黒川被告は昨年4月に行われた衆院東京15区の補欠選挙で、電話ボックスに立って拡声器で騒ぐ、選挙カーで執拗に追い回すなどして各陣営を恐怖で震わせた。 

 

 その後、幹事長の根本良輔被告ら2人とともに計3回の逮捕を経て、公職選挙法違反罪で起訴された。昨年11月の初公判では「政治的に意味のある適法な行為だった」と無罪を主張。裁判はまだ続いているが、12月17日に1人1000万円の保釈金を支払い保釈された。初公判前には、保釈を認めず不当な長期勾留を続けるのは「人質司法」で憲法違反だとして、国に計2200万円の賠償を求め、東京地裁に提訴している。 

 

 黒川氏は「つばさの党」を立ち上げる前は旧NHK党で幹事長を務めていた。旧NHK党といえば、兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑を調査する百条委員会の委員だった前県議・竹内英明氏(50)が自殺と見られる状態で亡くなり、立花党首が大きな批判を浴びている。この件で話を聞きたい、と取材を申し込むとインタビューに応じた。取材は1月22日、zoomで行った。 

 

――今回の件についてどう受け止めているか。 

 

 一番悪いのは立花さんに乗って誹謗中傷した「普通の人たち」だと思う。普通の人たちの心の中にある汚れが集団心理を引き起こし、凶器となったのではないか。SNSが発達した昨今、自分が持っている不満を他人にぶつけてしまう連鎖が起きやすくなっている。 

 

 マスメディアもこの件を受け報道姿勢をかえりみて欲しい。そもそもはマスコミが斉藤元彦知事を「おねだりパワハラ知事」と叩き始めたところが今回の騒動の始まりでした。マスコミも大衆に迎合し、取材対象者を過剰に叩き過ぎる傾向がある。いつ誰かを死に追いやったとしてもおかしくないという意識を持つべきです。 

 

 

――立花氏についてはどう思っているのか。 

 

 もちろん、不正確な情報を流布するなどして誹謗中傷のきっかけを作ったのは立花さんであり、大きな責任はある。この結果を受けよく考えるべきです。人が亡くなってしまったことはとても重たい。亡くなった後も誹謗中傷を続けたことは謝って許されるような話ではない。立花さんはしょうがないと思っているのでしょうが、私は全く思わない。人が死んでいいわけがない。その点において完全に彼は履き違えている。 

 

――黒川さんが昨年の選挙でやった手法も、同じように大衆心理を焚き付けていたのではないか。 

 

 それはあります。実際、僕は「怒れ」と呼びかけました。ただ、僕らが立ち向うのは巨大な権力だけです。絶対に弱い者いじめはしません。もしそういう危険が起こりそうであれば、僕たちはやめる。世間からは同じように見えているかもしれないですが、そこは絶対に違うということはわかってほしい。 

 

――黒川さんもやっていたが、自宅に凸かけるようなやり方には問題があるのではないか。竹内さんのご家族もいつ誰が家に来るかと怯え続けていたと伝えられている。 

 

 当然、ご家族が恐怖を感じたり、嫌だと思うのはよく理解できます。ただ全く普通にやっても多くの人に響くのは難しい。デフォルメや演出は必要。相手が政治家ならばしょうがないと思ってやっていた。パフォーマーたちが過剰なことをやることは社会正義として許されていいという考えです。 

 

 私自身は誹謗中傷ではなく政治的批判をしてきたつもりです。ただこうした悲劇が生まれてしまったことで、「自分は違う」と行動を振り返らないわけではありません。もう凸するのはやめます。 

 

――今回の件を受けて路線変更を決めたのですか?  

 

 まだ公に発信していませんでしたが、もともと考えていたことです。7カ月間、拘置所の中で毎日30分から1時間くらい瞑想し、仏教関係の本を読み漁ることで気持ちが変わっていきました。「世界全体の幸せのために最善を尽くすために生きよう」と毎日唱え、出所後も継続しています。 

 

 そうするうちにもっと他者にフレンドリーに向き合っていくべきだと思い始めた。凸なんかよりももっと平和で笑いを取る手法にベクトルをずらしていった方がいいのではないかと。妻(埼玉県朝霞市議会議員の外山麻貴氏)から過激すぎることはもうやめてとも言われていましたしね。 

 

 これからも選挙に出るつもりですが、演劇みたいな形で街頭演説をやることを計画しています。妻と夫婦漫才をやってM-1グランプリにも挑戦しようとも考えている。それでも人から見れば変わった手法でしょうが、少なくとも誰かを傷つけずには済みます。 

 

 立花さんにも、もう凸して個人を追い込むような手法は止めようと呼びかけたい。自分たちが正しいと信じてやってきたけど、何が起こるかがわかったでしょと。ガーシー氏も私も逮捕されたし、今回の悲劇も起きた。人が死んでいいわけがない。 

 

 

――拘置所暮らしはつらかったか?  

 

 他の2人はしんどかったようですが、僕は全く苦ではなかった。筋トレをして、酒も強制的に絶たれるので健康的に暮らせます。絵や書道、英語の勉強もできたし、本は120冊も読んだ。娯楽的なことがなくても人間生きていけるものです。とても充実した日々で、刑務所に行くことがあってもあと5年はいけるなと思いました。 

 

――裁判では無罪を主張されているが、逮捕された容疑についてはどう考えているのか。 

 

 そういう質問に対しては、裁判の進行や保釈条項にも関わってくるので答えにくくて…。報道の通りですとしか言えません。 

 

――立花氏は何をしたがっているのか。 

 

 NHKに対する私怨を晴らしたいから始まりましたが、今はYouTuberとして注目を浴び続けることで頭がいっぱいなのでしょう。歌手が目立ち続けるために新曲を出し続けるように、彼は炎上を続けていかねばならない状況に陥っている。 

 

 こう批判的なことを述べてはいますが、彼と対立したいとも思っていません。友人代表としてわかって欲しいという思いで話しています。元々私はN党の幹事長で彼は党首。私にとって彼はブラザーだった。勢いがあり、かっこよかったあの頃の彼に戻って欲しい。一般の人たちから見れば旧N党は変な組織だったかもしれなませんが、日本人が忘れていたり、足りていない爆発力、狂気を持っていた。実際、参院選では2パーセントを獲得して選挙に勝利しました。ガーシーさんも当選した。 

 

――だがあの選挙ではガーシー氏が当選し、それからネット上での誹謗中傷がより激しくなっていった。 

 

 それは事実だと思う。注目を浴びたことで味をしめてしまったのでしょう。けれど、もう見直さなければならない時期が来ている。立花さんは天才的な企画力を持っていることは間違いありません。どうかそういう能力を、人を傷つけない方向でもっと活用していってほしいと願っています。 

 

 関連記事【「子供もいますが全く恥じていません」党首と候補者は「阪大卒&東大大学院中退」活動資金はどこから?】では、黒川被告の華麗なる経歴について詳報している。 

 

デイリー新潮編集部 

 

新潮社 

 

 

 
 

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