( 254291 ) 2025/01/24 04:19:24 0 00 ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/time99lek
■コーヒーを何杯頼んでいても、90分以上は難しい
カフェで時々見かける「混雑時90分まで」など滞在時間を制限する貼り紙。それよりも長居することは法的にいけないことなのでしょうか。
結論から言うと、「混雑時90分まで」と店側が明示していれば、客は従わなくてはいけません。
民法には「契約自由の原則」が定められており、民間事業者の場合、ある程度のルールは事業者と利用者の間で取り決めることができます。どのような内容の契約がされるかは当事者間の意思に委ねられています。カフェチェーンなど前払いの店は、商品を買うときに契約が成立、レストランなど後払いの店は、注文をした時点で契約が成立します。契約の時点で「混雑時90分まで」に同意したものと見なされます。ここでは貼り紙で明示されていることや、店員から口頭での説明があるなど、客観的に立証できることがポイントです。
お店のスペースの使い方を決めるのは、お店に権限があります(管理者権限)。どのように営業しようと、お店の自由です。権限は店にあるのですから、「混雑時90分まで」というルールを設けても問題ありません。同様に、いわゆる「出禁」や「一見さんお断り」も基本的には問題はありません。
店が「混雑時90分まで」というルールを決めたなら、コーヒーを何杯頼むかは関係ありません。また「コーヒー1杯で何分間滞在できる」といった法的基準もありません。法律に何分間という記載をしてしまうと、すべての店が一律にその法律によって縛られてしまい、むしろお店の営業の自由を制限してしまいます。たくさんドリンクを頼んだとしても、「混雑時90分まで」という店のルールは守りましょう。
店側は、明示したことを客観的に立証するために、客が注文する前に制限時間の存在を知ることができる状態にしておく必要があります。入り口の扉やメニュー表などに記載したり、店頭に案内係がいる場合は、制限時間についてあらかじめ説明したりするなどです。テーブルに説明書きが貼ってあるなど、着席後に初めて気付く告知の仕方では、店側の落ち度と見なされる可能性が高まります。
■ラーメン店に3時間居座って逮捕
とはいえ「滞在は90分までなんですか? 知りませんでした!」と言って、むやみに店に居座るのはやめましょう。店のスペースは店が管理していますので、どう活用するかの権限は店にあります。店のお願いに従わない客が退店を求められても、まったく違法ではありません。
では、「滞在は90分まで」とハッキリした明示がない場合、どれくらいの時間いられるのでしょうか。この場合、法的に時間の制限はありませんので、いつまででもいられると解釈できます。しかし、もちろん店側から退店を求められたら、従わないといけません。
むやみに居座ると、反対に店側から、不退去や業務妨害の罪で訴えられる可能性もあります。
過去に、ラーメン店に3時間以上滞在して迷惑をかけた客が逮捕された事例がありました。報道によれば、男性が来店し、餃子とラーメンを注文。餃子を先に出すように頼みましたが、店長が先にラーメンを出したところ、男は激怒し「順番が違う」などと言いがかりをつけはじめました。店側は警察に通報し、すぐに署員が駆けつけましたが、店長が自分で対処する旨を伝え、一度警察を帰しました。2時間ほど経っても、客が帰らないので、もう一度通報。すぐに警察が来て、男の説得を試みるも応じず、結局その男は不退去で逮捕されました。
何時間滞在すれば警察が来る、という決まりはなく、警察は「緊急性が高い」と判断すれば、すぐに出動します。よっぽど店に迷惑をかける悪質な客だったのでしょうね。その後、起訴されたかは不明ですが、事件の内容からして、店側との示談で不起訴か、罰金刑で終わったか、どちらかだと思います。
飲食店の滞在時間にまつわる法律はないので、何時間以上がアウトかははっきり言えません。しかし、例えば閉店後も店にいたり、滞在中に騒いだりするなど、明らかに店や他の客に迷惑をかけていれば、刑法の不退去罪や業務妨害罪にあたります。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年11月29日号)の一部を再編集したものです。
---------- 松井 浩一郎(まつい・こういちろう) 弁護士 アトム法律事務所所属。ニューヨーク大学卒業、東京大学法科大学院修了。弁護士としての活動のほか、事務所の“広報”として、TVやWebなどのメディアに出演し、さまざまな事件・事故について解説を行なっている。 ----------
弁護士 松井 浩一郎
|
![]() |