( 255149 )  2025/01/25 16:50:04  
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米国マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏は、仕事を楽しむことと合理的な理由に基づく哲学を持っています。

ゲイツ氏は、楽しみながら働くことが成功への第一歩であると考えており、無駄遣いを避ける合理性も重要視しています。

また、ゲイツ氏はルールに固執するだけでなく、新しい発想や柔軟性も持ち合わせており、ピックルボールというスポーツにも投資し、楽しんでいます。

ゲイツの哲学は、ビジネスにおいても新しい発想や楽しみを持つことが重要であることを示しています。

(要約)

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Photo:Michael Cohen/gettyimages 

 

 米マイクロソフトを世界的企業に押し上げた創業者のビル・ゲイツ氏。惰性に従うのではなく、「なぜそうするのか」「合理的な理由があるのか」を突き詰めるゲイツ氏ならではの仕事哲学とは?(構成/梶原麻衣子) 

 

● ビジネスの天才は 仕事を楽しんでいる 

 

 ビジネスの世界で「天才」と呼ばれる人間は、誰しも仕事を楽しんでいる。「嫌々取り組んで」「やらされ仕事で」目を見張るような業績を残せた人はおそらくいないのではないだろうか。つまり、受動的でなく、能動的に仕事に取り組むことこそが、成功への第一歩といえる。 

 

 米マイクロソフトを世界的企業に押し上げた創業者のビル・ゲイツもその一人だ。「仕事を楽しく」は氏の哲学の一つであったようで、日本法人のマイクロソフト(現日本マイクロソフト)初代代表取締役社長を務めた古川享氏によれば、こんなエピソードがあるという。 

 

 あるとき、部下の一部が冗談半分ながら「自分たちは悪事を働いてもうけている」と認識していることを知ったゲイツは、ワンワンと泣き、「仕事は楽しいものである」というモットーを社員に徹底したというのだ(参考)。 

 

 筆者も、仕事が「生活のための労働(ワーク)」ではなく「人生をよりよく生きるための趣味(ホビー)」と化した人物と長く仕事をした経験がある。こうした天才型の人物と同じペースで一緒に働くのは凡人にとっては過酷極まりないが、「仕事を心から楽しんでいる姿」から学んだことは少なくない。 

 

 「天才」は、仕事を楽しむことに加え、自分なりの強固な哲学を持つ。もう一つ、古川氏の話から引かせてもらうと、ゲイツとの間でこんなエピソードがあったという(参考)。 

 

● ファーストクラスのチケットを 手渡されて大激怒! 

 

 日本国内でいくつかの仕事をこなしたゲイツは、伊丹空港から韓国・ソウルへと移動することになった。その際、手渡されたチケットが「ファーストクラス」だったことに激怒したのだ。世界的企業のトップが、ファーストクラスの席を用意されて激怒するとは驚きだが、その理由にはもっと驚かされる。なんと、「価格が高すぎる」「会社のカネを無駄なことに使うな」というものだったというのだ。 

 

 実際には、自動的にアップグレードされてしまったチケットだったようで、ゲイツの流儀をよく知る古川氏は極めて穏やかに事情を説明。ゲイツは自分が早合点で怒鳴ったことを理解し、古川氏に謝罪。もらったチケットで無事機上の人となった。 

 

 ここにゲイツの哲学を垣間見ることができる。一つは会社の資金に対するゲイツの考え方だ。何にせよ、無駄遣いはしない。プライベートジェットを使わざるを得ない立場になってからも、ゲイツは自腹を切っていたのだというから筋金入りだ。 

 

 もう一つは、「世界的企業のトップなら、当然ファーストクラスに乗るだろう」という思い込みを許さないことだ。慣習や惰性に唯々諾々と従うのではなく、極めて合理的に考えた結果、「体がそれほど大きくない自分には、ファーストクラスの席は必要ない。どの席に乗ったとしても、到着時間は同じ」との結論に至ったからこそ、無駄遣いにもなる座席の種類にこだわったのであろう。 

 

 常識で考えれば、「企業のトップはファーストクラスに乗るべきだ」と、実際に飛行機に乗る企業幹部も、チケットを用意する社員側も思ってしまいがちだ。だが大事なことは惰性に従うのではなく、「なぜそうするのか」「合理的な理由があるのか」「単なる慣習にすぎないのならば、ルールの方を変えるべきではないか」と考えることだ。 

 

 こうした発想力が、ゲイツ流の哲学を生んだのだろう。そうであるからこそ、チケットがファーストクラスになった理由の説明を受けて合理性があると納得し、機上の人となったに違いない。 

 

● 合理的理由があるなら 受け入れて従う柔軟性もある 

 

 また、単に「ファーストクラスには乗らないと決めている」というルールに固執していたわけではないことも、このエピソードからは読み取れる。仮にファーストクラスには乗らない、というマイルールに固執するだけであれば、無理にでも古川氏に座席の種類を変えさせていただろう。 

 

 ところが実際には、自身の哲学と同時に、ファーストクラスになった合理的理由があるならば、それを受け入れて従う柔軟性も、ゲイツは持ち合わせていたのである。 

 

 裏を返せば、ビル・ゲイツにとって単にルールに従うだけの人間は認めない、いい仕事ができない人物である、ということではないだろうか。さらに言い換えれば、仕事を楽しむという前向きな創造的発想、そして思い込みやルールそのものから捉え直すルールメイキングの発想に基づいてこそ、真に良い仕事ができるのだ、と。 

 

 ゲイツのそうした姿勢が垣間見えるエピソードがもう一つある。 

 

 

● 子供から老人までが 一緒に楽しめるスポーツ 

 

 それはゲイツがハマり、複数の関連ベンチャーに投資したというピックルボールというスポーツである。 

 

 ピックルボールとは、近年米国で爆発的に愛好者が増えているスポーツで、〈テニスコートの約3分の1、バドミントンコートと同じ広さのコート内で、パドルというラケットでプラスチック製の穴開きボールを打ち合うスポーツ〉(一般社団法人ピックルボール協会)。 

 

 その発祥は1965年にさかのぼる。ある日、暇つぶしに何か遊ぶものはないか、面白い遊びをしたい、と考えたジョエル・プリチャード、バーニー・マッカラム、ビル・ベルの3人が、あり合わせの道具だったネット、ウィッフルボール、卓球のラケットを組み合わせ、家族全員で一緒に遊べるゲームを考案したことに始まる。 

 

 面白いことに、ゲイツの父が考案者の3人と友人だったことで、ゲイツも自宅に作られたピックルボールコートで遊ぶようになり、以来、半世紀以上もプレーし続けているというのだ。 

 

 卓球、テニス、バドミントンのいいとこ取りをしたようなピックルボールは、ゲイツが半世紀以上プレーし続けられていることからも分かるように、運動量が多すぎないため、シニア層にも好まれているという。もちろん、ゲイツ家がそうであったように、子供から老人までが一緒に楽しめるスポーツでもあるというのだ。 

 

● 米国では国民的スポーツに バフェット氏も愛好者 

 

 日本ではまだまだ知名度の低いピックルボールだが、2023年APP(Association of Pickleball Players)によると、同年3月時点で、約5000万人近くの米国人がピックルボールをプレーしたと公表(同協会)、というのだから、米国ではまさに国民的スポーツといえよう。 

 

 事実、「投資の神様」として知られるウォーレン・バフェットもピックルボール愛好者で、関連ビジネスに投資し、ゲイツともプレーすることで知られている。 

 

 発祥をたどれば分かる通り、ピックルボールは既存のスポーツをプレーすることにこだわらず、手元にある限られた資源(道具)から、自分なりのアイデアで新しいルールを作り出したことで爆発的なヒット、普及につながった。 

 

 ゲイツがピックルボールを好むのも、そのプレーが老若男女で楽しめるという許容度の高いスポーツというだけではなく、自身の創業や哲学と同様、「仲間との新しい発想」「楽しもうとすること」から生まれたものであるが故、なのかもしれない。 

 

 ではこれを私たちはどうビジネスに生かすべきか。いきなり「既存のルールにこだわらない発想を持て」と言われても急にはできない。まずは頭を柔らかくして、ピックルボールのような新しいスポーツに触れてみるところから始めてみてはどうか。 

 

梶原麻衣子 

 

 

 
 

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