( 255231 )  2025/01/25 18:17:43  
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(写真:© 2025 Bloomberg Finance LP) 

 

 年明け以降、テレビ各局の情報番組などがこぞって取り上げているのが、人気タレント・中居正広氏の「性的トラブル」と、それに絡むフジテレビの対応を巡る、いわゆる「中居・フジテレビ問題」だ。まさに、大手メディアの「時代遅れの構造」(有識者)も絡んでの、「社会を揺るがす重大問題」(同)ともみられているが、そのなかでなぜか、政界の“及び腰”の対応も目立つことが、関係者の間で注目されている。 

 

 渦中の中居氏は23日、代理人弁護士を通じて「芸能界引退」を宣言したと報じられている。ただ、「全責任は私個人にあります」としながら、自ら記者会見しての説明は避けたことへの批判も少なくない。その一方で、今回の中居氏のトラブルへの“関与”を指摘されたフジテレビは、23日に日弁連のガイドラインに基づく第三者委員会で調査を進める方針を表明した。 

 

■自公政権幹部や野党各党幹部から踏み込んだ言及なし 

 

 ただ、まだ「疑惑」の段階なのに、すでに大多数のスポンサー企業が「撤退」を表明、報道機関として存続すら危ぶまれる状況に陥っているのが実態。関係者の間では「こんな状況は全く前例がない。フジだけでなく、特別な地位に胡坐をかいてきた民放テレビ局全体への国民的不信、不満の表れ」(民放政治部幹部)との危機感も広がっている。 

 

 そうした中、石破茂首相をはじめとする自公政権幹部や野党各党幹部からの、今回の問題への踏み込んだ言及はほとんどなく、現状をみる限り、24日召集された通常国会で取り上げようとする動きもみられない。 

 

 野党幹部の中には「関係委員会でしっかり論議すべきだ」(立憲民主幹部)との声もあるが、「下手に手出しすると、騒ぎに巻き込まれて国民からも批判されかねない」(自民幹部)との慎重論が大勢で、「当分は静観を決め込む」(政治ジャーナリスト)との見方が多い。 

 

 騒ぎが拡大する中、所管官庁・総務省のトップの村上誠一郎総務相は21日の記者会見で、フジテレビに対し「独立性が確保された形でできる限り早期の調査を行い、その結果を踏まえ適切に判断・対応することでスポンサーや視聴者の信頼回復に努めてもらいたい」と迅速な調査と対応を求める考えを示した。 

 

 

 そもそも、石破政権幹部の間には「いたずらに放置すべき問題ではない」との声もあるが、「政界の保守派に近いフジテレビだけに、扱いが難しい」(自民幹部)との意見が多いとされる。というのも、情報番組などへの自民有力議員の出演が最も多いのがフジテレビとみられており、「政権批判が厳しい他局とのバランスが崩れることへの不安が様子見の理由」(自民幹部)とされる。 

 

■文春に報じられた元安倍内閣首相秘書官の山田氏 

 

 そうした中、今回の問題での追及報道を続ける週刊文春は、23日発売号で、総務省元幹部のフジへの天下り問題を大きく取り上げた。「中居正広9000万円トラブル=フジテレビ“ガバナンス崩壊”の裏で『総務省キャリア官僚』が続々天下り! = 」という特集だ。 

 

 それによると、フジサンケイグループの持株会社であるフジ・メディア・ホールディングスを含むグループ企業に、4人の総務省のOBが天下りしているという。「もともと総務省の天下り役人はフジが突出して多い」(官邸筋)といわれてきた経緯もあるが、文春は「天下り役人の1人は、昨年6月26日にフジ・メディア・ホールディングスの取締役に就任した山田真貴子氏」とあえて実名を挙げている。 

 

 この山田氏は1984年に旧郵政省に入省し、2013年に当時の第2次安倍内閣で女性初の首相秘書官に抜擢され、安倍政権を支えた人物。その後も出世街道を歩み、2017年には同省放送担当トップの情報流通行政局長に就任。さらに、女性初の総務審議官を経て、2020年7月に退官している。 

 

 さらに、退官直後の2020年9月には、当時の菅義偉内閣のもとで女性初の内閣広報官に就任。しかし、総務審議官時代に菅氏の長男が勤めていた放送事業会社『東北新社』から、一晩に7万4203円という高額接待を受けていたことが、これも『週刊文春』の報道により発覚して大きな批判を浴び2021年3月に内閣広報官を辞任している。 

 

 そんな経歴を持つ山田氏のフジへの「天下り」については、「放送を巡って問題が起こった際、テレビ局は総務省から追及される立場なので、放送行政トップの情報流通行政局長経験者は調整役として貴重な存在」(フジ関係者)との位置づけで、「山田氏はフジ・メディア・ホールディングス取締役とフジテレビ社外取締役も兼務している」(同)のが現状だ。 

 

 

 これに関連して、元内閣官房参与で中央省庁の情報に詳しい高橋洋一氏=「政策工房」会長=は23日にJ-CASTニュースで、フジ社長の会見について「なぜこんな無様な社長会見になったのか。いずれにしても、フジグループ自体がグダグダだ。本体が酷ければ、周りでサポートしなければいけない」と厳しく指摘。 

 

 その上で「監督官庁の総務省はどうなっているのか。村上総務相はやや距離を置いているようだが、それもそのはずで、総務省からは、フジグループに対し複数の天下りがあり、筆頭格は山田真貴子氏だが、今回の事件では全く機能していない」と苦言を呈した。 

 

■「必要あれば適切に対応」と林官房長官 

 

 そうした中、林芳正官房長官は24日午前の記者会見で、「内閣広報室がフジテレビ関係の広報啓発事業の有無を各省に問い合わせている」と明らかにした上で、「今後、フジテレビにおける調査の状況等を踏まえつつ、必要があれば適切に対応する」と語った。 

 

 この政府のフジテレビとのタイアップ事業をについては、総務省消防庁が20日、フジテレビのドラマ「119エマージェンシーコール」とタイアップしたPRポスターの配布を延期すると発表しているが、そのほかの目立った動きはないとみられている。 

 

 こうした状況を踏まえ、政界関係者の間では「石破首相や林官房長官は、自民党内も保守派と一線を画する“ハト派”とみられている。だからこそ、メディアの中での保守派代表とされるフジテレビの問題には必要以上の踏み込んだ対応を避けることで、政局的優位を保ちたいのでは」(政治ジャーナリスト)とのうがった見方も出始めている。 

 

泉 宏 :政治ジャーナリスト 

 

 

 
 

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