( 255276 ) 2025/01/25 19:08:32 0 00 中居正広
1月23日、タレントの中居正広(52)がこの日をもって芸能界から引退すると発表した。昨年末に女性トラブルが報じられ、9日に「示談が成立したことにより、今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました」と発表してからわずか2週間後のことだった。
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中居の6本のレギュラー番組は引退宣言前に全て終了か降板が発表された。
●中居正広の金曜日のスマイルたちへ(TBS)→終了 ●中居正広の土曜日な会(テレビ朝日)→終了 ●だれかtoなかい(フジテレビ)→終了 ●中居正広 ON&ON AIR(ニッポン放送)→終了 ●ザ! 世界仰天ニュース(日本テレビ)→降板 ●THE MC3(TBS)→降板
引退発表はこれを受けてのものだったようだ。彼は自身の事務所のホームページに掲載した文書で、こう記している。
《私、中居正広は本日をもって芸能活動を引退いたします。なお、会社であります【(株)のんびりなかい】につきましては、残りの様々な手続き、業務が終わり次第、廃業することと致します。/ご報告にあたりましては、私がこれまでに携わらせて頂きましたテレビ各局、ラジオの皆さまとの打ち切り、降板、中止、契約解除等に関する会談はすべて終了し、スポンサーの皆さまとも順次協議中であることから、本日となった次第でございます》
そしてこう結んだ。
《これで、あらゆる責任を果たしたとは全く思っておりません。今後も、様々な問題、調査に対して真摯に向き合い、誠意をもって対応して参ります。全責任は私個人にあります。これだけたくさんの方々にご迷惑をおかけし、損失を被らせてしまったことに申し訳ない思いでなりません。/そして、改めて、相手さまに対しても心より謝罪申し上げます。関係者各位の皆さま、ご迷惑をおかけしました。重ねて、お詫び申し上げます。大変、大変申し訳ございませんでした。/37年間、ありがとうございました。/さようなら…》
SNS上には中居の引退に同情の声が少なくない。9日の釈明文に対しては、彼を責める声が多かったにもかかわらずだ。この差は何なのか、株式会社リスク・ヘッジの取締役・田中辰巳氏に危機管理の観点から語ってもらった。
「かつて私はTBSの『ピンポン!』で中居さんとご一緒したことがあるので、引退は残念です。とはいえ、このタイミングでの発表は良い判断だったと思います。何よりも芸能界から引退すること、さらに自分の会社を廃業することが、危機管理における『感知』『解析』『解毒』『再生』という4つのプロセスの中の『解毒』にあたるからです。解毒を行うには、『反省』『後悔』『懺悔』『贖罪』のステップを踏むと上手くいきます」
中居はその手順を踏んだというのだろうか。
「彼はおそらく今になって過去を振り返って反省し、本当に後悔した。懺悔に関しては示談の際に結んだ守秘義務条項があるので洗いざらい語ることはできませんが、芸能界から引退するというのは彼ができ得る究極の贖罪なわけです。ですから、前回とはまったく違う受け止められ方をしているのだと思います。もちろん、記者会見を開けばより効果的だったとは思いますが」
芸能界引退後は何をするのだろう。
「中居さんは言葉遣いと表情づくりが非常に上手い人です。そこが何十年も人気を保ってきた理由だと思いますし、元SMAPの他のメンバーにもなかった才能だと思います。その能力を活かして、“表現アドバイザー”の分野なら活路を見いだせるかもしれません。ご本人が今どういう気持ちでいるのか存じませんが、もし再起する気持ちがあるならお勧めしたいですね」
それにしても、引退しかなかったのだろうか。
「まず、女性トラブルを起こした際の情報開示が遅かったこと。それが週刊誌によって暴露され、記者会見を開くなどの説明責任を果たすことがなかったこと。さらに、前回の文書では自ら“出直し”を口にしてしまいました」(田中氏)
9日発表の「支障なく続けられる」という一文だ。
「出直しの扉は自分では開けることができません。それができるのは被害者と国民なのです。それを自分でやろうとするのは、かさぶたを自分で剥がすようなもの。かさぶたは時が経って自然と剥がれていくように、被害者の処罰感情が薄れ、国民もそうなると、出直しの扉が開くのです。自分でかさぶたを剥がしては血が流れて傷口を悪化させるだけですから。さらに、その後のフジテレビの記者会見が危機管理とは言えないレベルのものでしたから、中居さんのイメージもさらに悪化したのです」(田中氏)
デイリー新潮は1月18日配信の「『フジテレビはさらに危機に陥った』…『中居トラブル会見』で港社長が犯した『致命的な過ち』を専門家が指摘」で、フジの会見のお粗末さについて田中氏に解説してもらっている。
「フジが危機管理に失敗していなかったら、中居さんが引退に追い込まれることはなかったのではないかと思います」(田中氏)
今回のような謝罪文を前回の9日に発表していたらどうなっただろう。
「今とは展開が変わったと思います。例えば、『このような問題を起こして本当に申し訳ありません。私は被害者の方のお許しが出るまで芸能活動は休止いたします。その間、私などのような者でもお呼びいただけるようであれば、ボランティアで伺って罪滅ぼしにさせていただきたいと思います』といった発表をし、宣伝を伴わずに被災地や老人ホームなどに行って活動していれば、ここまでのことにはなっていなかったでしょう。もちろん、文書よりも記者会見で自ら話すことが重要ですが」(田中氏)
やはり会見が重要なのか。
「会見の場というのは針のむしろです。針のむしろに座って、記者から厳しい質問を浴びせかけられ、立ち往生する。その姿こそが『解毒』に繋がり、自分が発生させた毒を薄めることに繋がります。ですから、トラブル発生の当初に自ら申し出て、 休業等の自分に罪を与えるべきでした。それもなかったために、解毒の効果がなかったばかりか自ら出直しの扉を開こうとしたため、むしろ毒が増えてしまったのです」(田中氏)
22日に行われた元フジテレビ専務でカンテレ社長の大多亮氏の会見も、フジと同様だったという。
「『中居氏を守ろうという意識はない』とか『被害女性が公にならないことや心身のケアを最優先した』とも語っていましたが、これは全く意味のない発言です。仮に被害者が情報の開示や中居さんの降板等を求めていないということであれば、そう話すこともできるでしょう。そうでないなら、フジテレビにとって都合のいい言葉でしかありません。心身のケアと言われても、人によって異なるものですからね。私はこういった事案にも関わってきましたがが、今の被害者は昔の人と違って、刑事告訴をして刑事罰を与えたいと考る人も少なくありません」(田中氏)
今や泣き寝入りという時代ではないのだ。
「今回のようなトラブルを把握した会社の対応としては、被害者にはまず『刑事告訴をしませんか?』と勧めるべきなのです。それが一番、再発防止に繋がりますから。もちろん刑事告訴をすれば取り調べで二次被害の可能性もありますから、『それらに対して最大限の支援をします。心療内科の医師や強い弁護士などもサポートにつけますから刑事告訴をしませんか?』と、ここから入るべきなのです。刑事告訴が嫌という場合は『民事裁判に訴えるという方法もあります』と。民事でも裁判の過程で二次被害の可能性があります。それも望みませんということであれば、『内密に示談を行われますか?』という順番になるべきなのです。それと同時に『あなたの痛みが癒えるまで、できる限りの支援をさせていただきます』とするのが今の会社の責任です」(田中氏)
フジの港浩一社長は被害者に対して「ご活躍を祈ります」と語っていたが……。
「他人事みたいなことを言っているからいけないのです。それが多くの企業の反発を買った。フジテレビの言っていることが理解できないし、承服もできない。今の企業はそんなレベルの仕事をしていません。ですから多くの企業がスポンサーを降りたのです」(田中氏)
企業イメージのためだけではなかったのか。
「2006年に起こった北米トヨタのセクハラ訴訟事件を覚えていますか。社長にセクハラを受けた女性が、上司に訴えたにもかかわらずちゃんと対応してくれなかったことから、総額1億9000万ドル(約215億円)の損害賠償を求める訴訟を起こしました。最終的には和解となりましたが、この裁判では会社がやるべきことをやらなかった不作為が厳しく問われました。この事案から企業の対応はガラッと変わったのです。北米の現地法人のみならずアメリカと取引する日本の企業も、不作為をなくすことを重要視して対応するようになったのです」(田中氏)
フジは変われなかったということか。
「なぜクライアントが離れていったのかわかっていないのかもしれません。スポンサー企業のコンプライアンス意識とかけ離れているのです。そういう対応をしてしまったので、中居さんのイメージも地に落ちた。中居さんもフジテレビも、弱い立場の人の気持ちを理解する“共感力”に乏しいと言わざるを得ません。被害者に寄り添うには“共感力”が最も重要なのです。それが乏しいことで危機管理に失敗したのです」(田中氏)
デイリー新潮編集部
新潮社
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