( 255626 )  2025/01/26 16:55:57  
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〔PHOTO〕iStock 

 

人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 

 

100万部突破『未来の年表』シリーズのベストセラー『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか?人口減少が10〜20年後の日本のどの地域をどのような形で襲っていくのか?についての明らかにした必読書だ。 

 

※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。 

 

「少子高齢化」と言われて、すでに長い年月が経っています。この言葉は日本人の「常識」でもあります。しかし、自分が住んでいる地域の変貌や、それに対する弊害を真剣に考えている日本人は何人いるでしょうか? 

 

人口が増えていた時代も、地方では過疎地というものがありました。一方、人口が減っていくこれからの未来も、人口が増えていくだろうと推測される都市はあります。 

 

今までもそんな地域差はあったのですが、ここ数年、かなり地区の濃淡が明確になり始めたと思っています。 

 

具体的に減ったところで言えば、政令指定都市である静岡市の人口が70万人を切りました。同じように高知県の人口も70万人を切っています。また秋田県も、2年前に100万人を切ったことが話題となりました。 

 

この原因のひとつには、子ども産む女性の減少があります。また、地域を活性化する産業の不足で仕事がなく、東京などの大都市へ人口が流出する。つまり引っ越していく人が多いという原因もあります。 

 

では、将来に向けて何か対策を講じているのかといえば、千葉県流山市、兵庫県明石市、愛知県長久手市など、大都市のベッドタウンと言われている自治体では、子育て支援を手厚くするなどの対策をして、若い世代に住んでもらおうと努力しています。 

 

しかしながら、そのような自治体は少なく、もっと広域に県などの単位で行っているところは皆無といっていい。たとえば人口減少の止まらない「ある県」では、行政を司っている職員たちの危機感がないに等しい。それはなぜか? 

 

 

県庁所在地は、人口が減っているとはいえ、県内の他市町村からすれば、まだ減り方のスピードがそれほどでもない。しかし県庁所在地から一歩離れると、閑散としている町が目立ちます。役所の人たちは自分たちの足元しか見ていないから、「まだましだ」と話す。だから、黙って見ているだけというのが現状なのです。 

 

また、人口の減り方の年齢構成が変化することにもピンときていません。人口が流出するのは、働き盛りといわれている年代、子どもを産み育てる世代など、未来を支えるべき人たちがいなくなる。残るのは高齢者のみなのです。 

 

そうなれば地域のコミュニティも崩壊するし、生活必需品を売る商店も経営できないから減っていく。クリーニング店がなくなる。スーパーがなくなる。医者もいないということすら当たり前になる。 

 

すると、生活自体ができない。まさに都市としての機能がなくなってしまうのです。これはその「ある県」だけの問題ではなく、日本全体の将来の姿といっても過言ではないのです。 

 

現状すら把握できないわけですから、将来に向けて何をしていいのか、わからない。何から手をつけていいのかわからない。これが今の地方行政を司っている人たちなのです。 

 

ここまで地方の話を述べましたが、東京や大阪といった大都市圏はどうなっていくのでしょうか? 

 

日本はすでに人口減少時代に入りましたが、2020年時点で人口が増えている都県もあります。東京都、神奈川県、埼玉県、愛知県、沖縄県です。ただし、増加率は1%台と、増え方としてもほぼ横ばい状態です。 

 

そのうえで、これらの都県でも人口構成比は他の道府県と同じで、高齢者の割合が高く、高齢化が進んでいます。それが2025年になると、もっと顕著になります。 

 

東京23区の中でも、練馬、足立、葛飾、杉並、北の各区では、4人に1人が65歳以上の高齢者で構成され、特に練馬区、足立区では、75歳以上の割合が15.4%となります。実に5区に1区は住民の4人に1人が高齢者という、オールド都市・東京となるのです。 

 

練馬区の場合ですが、三十数年前に光が丘団地ができ、区の人口が3万人増え、団地内には、保育園、幼稚園、小中学校、高校まででき、大きなスーパーもあり、ひとつの町として形成されました。 

 

しかし月日は流れ、その団地の住む人たちの高齢化、子どもの減少で、小中学校の統合などが進み、スーパーでも高齢者の買い物客が目立つようになってきました。光が丘だけでなく、多摩地区の多摩ニュータウン、高島平団地でも同じことが起こっています。 

 

 

では、具体的にどんなことが起こるのか? 

 

東京では、介護施設の整備が遅れており、高齢者向けの入院ベッド数も少ない。このままでは大規模な介護難民が出るでしょう。 

 

また、都心部はビジネスの中心として、働く若い世代を対象に都市計画が進められてきたため、駅や公共施設のエレベーターの数やバリアフリー化も十分ではありません。 

 

このままの都市計画を進めていけば、「買い物や通院をしたいけれど、移動ができない……」ということも当たり前のようになっていきます。 

 

とてもお元気な方が増えているとはいえ、80代以上の高齢者が外出すれば、バスや電車などの乗降時間もかかり、道路の渋滞や鉄道ダイヤの遅れなどが日常茶飯事になります。今のような過密ダイヤでは混乱は避けられないでしょう。 

 

生活には便利といわれる東京も、とても住みにくい町に変化していくのです。 

 

つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、多くの人がまだまだ知らない「人口減少」がもたらす大きな影響を掘り下げる。 

 

河合 雅司(作家・ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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