( 255696 )  2025/01/26 18:07:50  
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写真はイメージです(gettyimages) 

 

 日本の政策金利は約17年ぶりの水準へ――。 

 

 1月24日、日本銀行は金融政策決定会合で、昨年7月以来となる追加利上げを決定した。政策金利は、それまでの0.25%から0.5%程度へと引き上げられた。 

 

 市場予想どおりの利上げとあって、利上げ発表直後の金融市場に大きな波乱はなかった。 

 

 兜町関係者が話す。 

 

「前回の昨年7月の利上げ後の会見では、記者が『過去30年、日本の政策金利は0.5%を超えたことがない』と発言したことに対して、植田和男総裁が『0.5%は壁として意識していない』と口を滑らせたことがさらなる利上げを想起させるサプライズとなり、米国経済の先行き不安も重なって、“植田ショック”などと呼ばれる株安・円高が進みました。その反省を生かして、今回はショックを与えないよう、慎重に言葉を選んでいた印象です。市場のコンセンサスどおり、今後1年かけて政策金利は1%に引き上げられるでしょう」 

 

 さらなる利上げは株価にマイナスの影響をおよぼす可能性はあるが、すでに織り込み済みというのが市場関係者らの見方だ。 

 

■政策金利は1%に 

 

 山和証券の志田憲太郎情報部部長が解説する。 

 

「各国の中央銀行を見てもわかるように、利上げや利下げは連続して行うのが一般的ですが、今回の会見では積極的に利上げを行う姿勢は見られませんでした。仮に次回3月会合でも利上げが実施される可能性が示唆されていたら、大幅な株安・円高が進むリスクがありましたが、『今回の利上げの影響も見ながら考える』という姿勢だったので、春闘で賃上げが着実に進み、それが物価にもたらす影響を見極めたうえで7月に次の利上げを行う、というのが最もありえるシナリオでしょう。そのうえで12月、ないしは来年1月会合でさらに0.25%引き上げて、政策金利を1%にする。日本経済を刺激も抑制もしない中立金利は1~1.25%と考えられているので、そこまでは市場も織り込みつつあります」 

 

 

 実際、日本の10年債利回りは昨年7月以降、上昇を続けており、直近で1.2%を超えている。年内、政策金利1%乗せは、もはや想定内にも見える。それだけに、着実に金利が上昇しても、株式市場への影響は軽微で済む可能性が高いという。 

 

「植田総裁も言及していたように、トランプ大統領の政策には不確実性があるものの、米国経済は堅調で日本の基調も上向きです。現状、日本の上場企業の2026年3月期の予想EPS(一株益)は2650円程度と予想されているので、直近のPER(株価収益率)16倍をかけて、4万2000円超えを試すというのが、大方の予想。EPSが上振れるようなら、高値更新もありえる。トランプ政権が大幅な関税引き上げに舵を切るなどの波乱要因がなければ……という条件つきですが」(前出の兜町関係者) 

 

 だが、金利上昇局面では、相場の“主役”は変わる可能性がある点には注意が必要だ。 

 

■繊維株が高いパフォーマンス  

 

 前出の志田氏が話す。 

 

「政策金利が0.75%になると、約30年ぶりの高い水準になります。過去30年、政策金利が0.5%を超えて上昇したことがないので、日本株のなかで何が買われるのか探すのは正直、難しい。ただ、米国の例に当てはめると、米10年債利回りが現状の4.5%程度の高水準で推移すると、グロース株(成長性の高い銘柄)は買われにくくなる傾向にあります。いつ利益を生み出すかわからないグロース株を持つよりも、10年国債を3年持って高いリターンを得るほうが確実だからです。これに照らせば、日本では金利上昇に伴い、バリュー株(企業価値よりも株価が割安な銘柄)や高配当銘柄が買われやすくなると予想しています」 

 

 金利上昇の恩恵を受けやすい銀行株はすでに高値圏で推移しているが、直近3か月の業種別騰落率を見ると、繊維株が高いパフォーマンス上げている。 

 

 志田氏は、ここに投資妙味のある銘柄のヒントがあると話す。 

 

「値上がりが顕著な東レ、TSI(東京スタイルとサンエー・インターナショナルが経営統合)などは、業績が絶好調の企業ではなく、ROE(自己資本利益率)は1~4%台という低い水準です。しかし、積極的な自社株買いを発表したことで、高値を更新している。同様に、ほかの低ROE銘柄はガバナンス強化の一環で、今後、自社株買いを進める可能性がある。なぜなら、製造業を中心に資本が大きすぎるばかりにROEが低水準になっている銘柄が少なくないからです。自己資本比率が高水準の銘柄は、アクティビストの圧力も加わりやすい。こうした低ROEのバリュー株は高配当を維持している銘柄も多いので、自社株買いによる値上がり余地と配当効果から今後、人気になりやすいと見ています」 

 

 約30年ぶりの金利水準の世界へ。あなたはどうする? 

 

(ジャーナリスト・田茂井治) 

 

田茂井治 

 

 

 
 

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