( 255931 )  2025/01/27 05:48:49  
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撮影:堀内彩香 

 

2024年、5年ぶりにテレビ埼玉で地上波番組に復帰した宮迫博之(54)。2019年に“闇営業”問題で吉本興業を退社し、蛍原徹とのコンビ「雨上がり決死隊」も解散することになったが、主戦場をYouTubeに移し2022年には焼き肉店をオープンさせた。来月にはアマチュアのキックボクシング大会に出場するなど新たなフィールドで前へ、前へと歩みを進めている。渇望していた地上波番組への復帰や、そこまでの過程で感じたSNSの本質。そして、自らの変化。今の思いを吐露した。(取材・文:中西正男/撮影:堀内彩香/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部) 

 

昨年の10月ごろからトレーニングを始めて、来月キックボクシングの試合に出ることになりました。 

 

元放送作家の鈴木おさむくんと、僕のYouTubeをどうしていくかという話をしていて、その中で「とにかく泥臭くやっている姿を見せるのがいいんじゃないか」というアドバイスをもらったんです。 

 

もともと格闘技は好きですし、あこがれはあったんですけど、もうこの年ですし今さらということも考えたものの、だからこそ今の自分がやる意味があるんじゃないか。そう思ったんです。 

 

キックボクシングに挑戦することで即、再生数が伸びるだとか、すぐに何かが変わるだとか、そういうものではないとは思っているんですけど、とにかく愚直に挑戦する。それが大切なんだろうなと思い、始めました。 

 

撮影:堀内彩香 

 

週4回、トレーナーさんと一緒にやっているんですけど、50代半ばですからね。技術うんぬんより、シンプルに体力が伴わない。突き指とか小さな肉離れとか細かいケガをしても、それが治らない。「これはもう、一生治らないんじゃないか……」と思うぐらい、治らないんです(笑)。 

 

一方で、キックボクシングもそうですけど、あのままテレビの世界にいたら確実にやっていないであろうことを、結果的にたくさんやっているな。それも感じます。焼き肉屋さんもそうですし、そもそもYouTubeがそうですし。 

 

 

今となってはそれも「新しいこと」になるんですかね。何十年もやらせてもらってきたテレビのお仕事を昨年また、させてもらうことになりました。 

 

もちろんうれしかったし、何より楽しかったです。YouTubeとやっている中身はそんなに変わらないのかもしれないですけど、ありがたかったですね。 

 

撮影:堀内彩香 

 

素晴らしい方々にゲストで出ていただいたこともありますし、懐かしくもあったし、自分を「求めていただける」、この感覚が心の奥にまで響きました。やっぱり、育ててもらった場所だからですかね、感じることが多々ありました。 

 

それが本当に正直な思いではあるんですけど、もう一つの面というか、テレビへの怖さもあるんです。 

 

撮影:堀内彩香 

 

例えば「アメトーーク!」(テレビ朝日)とか、以前自分が出ていた番組を見ることもあるんですけど、今、ここに自分が戻ったとしてついていけるのか。不協和音を奏でることになるんじゃないか。それもシミュレーションします。誰かがいなくなっても穴は埋まるし、新しいリズムも生まれてそれが“完成品”になるんだし。 

 

でもというか、また逆の話になってしまいますけど、前より振り切って全力でふざけられるのかなとも思うんです。 

 

今、テレビの世界で大活躍している「千鳥」や「かまいたち」と絡んだらどんな感じになるんだろう。どうやってイジってくれるんだろう。 

 

吉本興業を出て今のフィールドに来た。確実に言えるのは“イジられシロ”が広がりました。いろいろなことがあってイジられる出来事がたくさんあったというのもありますし、僕の内面も変わったと思います。 

 

本当に正直な話、テレビで司会なんかをやらせていただいている時は、両手を広げて「さぁ、イジってください!」みたいな感じではなかったと思います。もちろんイジリは愛ですし、イジられたらうれしいんですよ。ただ、今から考えるとプライドも高かっただろうし、わずかでもどこか抵抗があった気がします。 

 

 

撮影:堀内彩香 

 

今はそれが本当になくなりました。年を取って丸くなったというよりも、環境ですかね。YouTubeの世界にいると「名前が出ない」ということのマイナスを痛感します。どんなことであっても、ネットニュースに名前が載ると「出てない感」はなくなる。きれいごとでもなく、カッコつけるわけでもなく、リアルな結果として意識が変わったと思います。 

 

まぁ、かなりハードなイジリもあるのかもしれませんけど(笑)、もうね、全てありがたいばかりです。名前が出るありがたさ。それをこの5年で噛みしめましたし、さらにもう一つ奥のリアルな話で言うと、そこに一喜一憂していたら自分がもたない。それもあったと思います。 

 

愛のかたまりである芸人さんからのイジリはありがたいばかりなんですけど、それ以外に、SNSでのコメントもあります。見ることはありますけど、これはね、受け止めないです。流すというか。「死ね」と言われても「いや、死なへんし」とサラッと進む。そんな感じです。 

 

前までは、受け止めていたところもあったと思います。……強がりを言ってるだけで、今もやられている瞬間ももしかしたらあるのかもしれません。 

 

でも、進まないと自分のところに集まってくれているスタッフを食べさせることができない。自業自得なんでしょうけど「しんどさ」と「やるしかない」がグルグル回って、いつの間にか、強くなりましたね。 

 

撮影:堀内彩香 

 

あとはSNSの構造みたいなことも見えた気がしました。本当に僕のことが嫌いで、何かを言ってくる正式なというか、本気のアンチの人は、ちゃんと嫌いだからちゃんと調べてこっちにコメントを送ってくるんです。 

 

でもそこに乗っかってくるセカンドアンチ、サードアンチが一番問題です。中身もあまり分かっていないのに誹謗中傷する。精査せずあやふやなまま矢だけは飛ばす。そこの層が量的にもすごく多いと思いますし、SNSをダメにしている部分だと僕は思っています。 

 

ただね、一つSNSについて体感したこともあって。Xで言うと、一応フォロワーさんが200万人ほどいてくださるのかな。 

 

 

撮影:堀内彩香 

 

以前まだ思いっきりテレビに出ている頃です。後輩のインタビューマン山下がやっているうどん屋さんに食べに行ったんです。ちょうど山下もお店にいたので、山下の仕事が終わったら一緒に飲みに行こうとなって、仕事終わりまでお店でチビチビ飲みながら待つことにしたんです。 

 

一人で飲んでるのも味気ないし、あ、そうか、SNSがあると。近所に後輩もいっぱい住んでるし、フォロワーさんも200万人以上いてくれるし、「今、山下の店で飲んでるから、近所のひまな後輩おいで」と投稿したんですけど、閉店まで誰も来ませんでした(笑)。 

 

後輩もですけど、一般のフォロワーさんでも少しくらいは店の前まで来てこちらを探してキョロキョロするとか、そんなことがあるかなとも思っていたんですけど、それもありませんでした。結局、SNSとは何なのか。実際の世界に何を及ぼすのか。そんなことを考えるきっかけになったことではありました。 

 

この一年、松本(人志)さんも休まれていました。でも、また今年から活動を再開される。僕が何を言うのもおこがましいですけど、「ダウンタウンチャンネル(仮)」みたいに松本さんを見たい人だけがお金払って見る。大正解なんじゃないでしょうか。 

 

これをやるのが一番いいんでしょうし、それでスタッフにしっかりとした給料が払えたら本当に理想です。誰からも文句を言われる筋合いもないですし。 

 

松本さんほどの影響力があれば成立するんでしょうけど、おそらく僕がやったとて、そうはならない。僕に対して、そういう期待をしている人も少ないでしょうし。向いてる、向いていないがあるし、僕は泥臭くやるしかない。 

 

撮影:堀内彩香 

 

今まで芸人をやっている時は自分のために稼いでいた。でも、今はお給料払わないといけない立場になった。お金がこんなにかかるんだ。事務所をやるのはこんなに大変なんだ。改めて思いました。ずっと吉本興業にいたらよかった。これもストレートに思いました。なんやかんや言うて、吉本興業はよくしてくれていたんだなとも思いました。でも、この道を選んだのは自分だし、今さら投げ出すわけにはいかない。それが今です。進むしかない。 

 

この先、何をやっていくのか。どう進むのか。芸人という仕事への思いももちろんあります。ネタを書いたりですか? そこは必要に応じてというところだと思います。例えば、イベントを開催するからコントやってくださいみたいな申し出があったら考えるでしょうしね。 

 

……でも、たまにアテがなくても、考えているか。メモを取ったり。してますね。やっぱりその思いはあるんでしょうね。 

 

 

 
 

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