( 257031 )  2025/01/29 14:58:08  
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斎藤知事追及の急先鋒だった竹内さん 

 

 パワハラ疑惑に端を発する犠牲者は、これで3人目となった。兵庫県の斎藤元彦知事(47)を巡る告発文書問題。その調査を担う県議会の百条委員会委員だった竹内英明さん(50)が、今月18日に自殺したのだ。その彼が生前、知人に漏らした最もショックを受けたこととは。 

 

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「昨年11月の知事選前、立花が“おい、竹内! お前のところ行くぞ”などと言ったあたりから、あまりにSNSの誹謗中傷がひどくなった」 

 

 と振り返るのは、竹内さんが県議として所属した会派「ひょうご県民連合」の幹事長・上野英一氏だ。 

 

「亡くなる1週間前に同僚議員が電話をした時も、竹内は“立花が怖い”と言っていたそうです。竹内と私は兄弟以上の付き合いをしてきたと思っていますけど、普段はバンカラでズバズバ物を言う男だけに信じられない。それだけ追い詰められていたのでしょう」 

 

 ここで名指しされた立花とは、N国党の党首・立花孝志氏(57)である。竹内さんが亡くなった翌19日にも、立花氏はSNSで“兵庫県警に逮捕されるのを苦に自殺した”などのデマをネット上に拡散。県警本部長が“全くの事実無根であり、明白な虚偽”と全否定したことで、立花氏は謝罪に追い込まれている。 

 

 そもそも立花氏は、知事選に自ら立候補しながら斎藤知事への応援を明言。竹内さんら知事の疑惑を追及する県議を、SNSなどでののしってきた。それが呼び水となり、竹内さんは“斎藤擁護派”のネット民の標的となって、自宅住所が書き込まれるに至ったのだ。 

 

 竹内さんと20年来の親交を持つ友人が明かすには、 

 

「高校の同級生が個人情報をさらしたことで、竹内君は身近な人からも憎まれたと大変ショックを受けて、気に病んだというのです。自宅へのピンポンダッシュや嫌がらせ電話がひどく、子供たちが“お父さんは悪い人なのか”と精神に不調をきたし、学校へも行けなくなってしまった。折しも闘病中の母親が亡くなり、竹内君は自分への誹謗中傷が死期を早めたのではと、自責の念に駆られていました」 

 

 

 竹内さんは、地元・姫路の進学高から早大政経学部を経て、セブン-イレブン・ジャパンに就職。スカウトを受け旧民主党本部の職員として政界に入る。2003年に故郷へ戻り姫路市議、兵庫県議と当選を重ねていったが、斎藤知事の再選直後に辞職願を提出した。 

 

 先の友人によると、 

 

「竹内君は“立花が家に押しかけるなどと言ったので、家族が恐怖を感じている。妻と子供たちから辞めてほしいと言われた。苦渋の決断だった”と話していました。正義感が強く、永田町時代は政策通でもあった彼は、早大の鵬志会という政治サークルで出会った後輩と結婚しています。政治の世界に理解があった奥さんでも、子供らの様子を見て、これ以上は続けてほしくないと思ったのでは」 

 

 前出の上野氏に聞くと、 

 

「“家族を守るため辞任した”と竹内は言っていたけど、議員の仕事は彼にとって人生の柱だった。政治家になるべくして生まれてきたような男だったから、ネットが原因で大事なポリシーや周囲の人たちからの信頼を失い、不安に苛まれていたと思う。彼にはSNSなんて見るな、気にするなと忠告しましたが、どうしても知人や支援者から“ネットに流れている話は本当か”と聞かれたら、対応しないといけませんから」 

 

 県議を辞職後、竹内さんとやり取りをした知人は、 

 

「快活な関西のオッサンを絵に描いたような人だったのに、数カ月前から“私の人間性とかあなたなら分かってくれるかも……”“生きていたら絶対に会いましょう”など弱気な発言が多く、心配していました」 

 

 竹内さんの死後、斎藤知事は会見で、記者から“立花氏ら誹謗中傷を行う者に自制を求めないのか”と問われたが、明言を避けた。新たな犠牲者が出る前に、知事として早急にすべきことがあるのではないか。 

 

「週刊新潮」2025年1月30日号 掲載 

 

新潮社 

 

 

 
 

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