( 257326 ) 2025/01/30 04:16:53 0 00 兵庫県内で使われた全国旅行支援のクーポン。神戸・三宮の地下街でも使える店は限られた=2022年10月31日午後6時51分、神戸市中央区、井岡諒撮影
コロナ禍後の国の観光支援事業「全国旅行支援」「県民割支援」について会計検査院が調べたところ、不正受給が約3億円確認された。このうち約2.5億円は返済されていない。旅行中に使える紙クーポン3269万枚(作成費用3.8億円)が廃棄されるなどの無駄も見つかった。検査院は「再発防止策が重要だ」と指摘している。
国は観光支援策「Go To トラベル」事業の後継として、「県民割支援」を2021年4月~22年10月、「全国旅行支援」を22年10月~23年12月に実施した。観光庁から都道府県に交付金が配られ、該当する地域の旅行代金や宿泊代の割引、地域で使える限定クーポン券に充てられた。
検査院は参議院の要請を受け、都道府県の状況を調べた。その結果、国費1兆1193億円のうち1285億円は使われていなかった。
24年7月末時点で両事業で62件、計約3億円の不正請求が起きていた。大半が宿泊事業者の水増し請求で、静岡県が23件と最多。愛知県では宿泊事業者でなく、事業の委託を受けた民間事務局による人件費の水増しが2400万円あった。
約3億円のうち、これまでに4400万円が返済されたが、約2億5千万円は未返還だ。宿泊事業者の経営状況が厳しく、返済のめどがたっていないケースもあるという。
事業開始当初は東京都、大阪府などを除く大半の道県で紙のクーポンを採用していたが、国のデジタル社会推進方針を受け、観光庁は23年1月以降は電子クーポンを原則とし、既に印刷された紙クーポンが無駄になった。例えば、北海道は1340万枚の紙クーポンを印刷し、6割を旅行者に配布したが、529万枚(作成費用2329万円)が廃棄された。他に枚数が確認できる21道県を調べたところ、千葉、滋賀、沖縄など北海道を含めた全国で計3269万枚(同3.8億円分)が廃棄されていた。
観光庁は交付金の配分の根拠となる資料を保存しておらず、配分の妥当性などが検証できなかった。検査院は「予算執行に関係する重要な資料は適切に保存し、途中で制度変更をする際は、事業者の実情を考慮すべきだ」としている。観光庁は「検査院の指摘を受け、今後同種の事業を行う際は適切な予算執行に努めたい」としている。(座小田英史)
朝日新聞社
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