( 257661 ) 2025/01/30 17:40:38 0 00 ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide
資産を増やすにはどうすればいいのか。個人投資家のろくすけさんは「私は個別株投資を行っている。インデックスファンドのつみたて投資では、幸福になれる機会をみすみす逃してしまうからだ」という――。(第2回)
※本稿は、ろくすけ『大暴落の夜に長期投資家が考えていること』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
■なぜ私は「インデックス→個別株」に変えたのか
新NISAで投資元年となった2024年、大きな支持を集めているオルカン、S&P500のインデックスファンド。二十数年前に私が株式投資を始めた際に大いにお世話になったのもインデックスファンドでした。
現在、私のポートフォリオではインデックスファンドの保有はゼロとなっていますが、インデックスから個別株に転身した私がインデックスファンドをどう見ているかを述べたいと思います。
既にご説明のとおり、私の投資のスタートはインデックスファンドのつみたて投資であり、毎月コツコツと給料の中から定額を買い増しするスタイルでした。このスタイルを淡々と続けることで、私は数千万円まで資産を増やすことに成功したわけですが、その最も大きな要因は、株価を意識しなかったからだと今は考えております。つまり、ミスター・マーケットとの関わりを持とうとしなかったからだということですね。
株価の変動に合わせていちいち行動をコロコロと変えていたら、私のインデックスファンドのつみたて投資での成功はなかったことでしょう。私も株価に一切注意を向けず機械的に買い続ける仕組みとしてのこの手法の素晴らしさはよく認識しているつもりです。
しかし、そんな認識を持ってはいるものの、インデックスファンドのつみたて投資に関しては、あえて強めの表現を使うとすればある種の「降伏」であると今は考えています。それは二つの意味での「降伏」です。
■インデックス積み立て投資のデメリット
一つ目の「降伏」とは、インデックスファンドのつみたて投資を行うのは、そのことを意識してはいなかったとしても、心理のコントロールが自分主体では不可能と認めることに実質的に等しいという意味です。
心理のコントロールをあきらめてしまえば、株価の変動がもたらす欲や恐怖、不安に囚われることなく資産を積み上げることができるメリットが得られます。このメリットを得るには、かなりの長期間の「降伏」が必要となります。なぜなら、インデックスファンドのつみたて投資には、「高値づかみ」が避けられないというデメリットがあるからです。
タイミング次第ですが、つみたて初期の段階で割高な株価でたくさんの「高値づかみ」をする可能性もあります。割高な資産をたくさん積み上げてしまうと株価急落、暴落で評価損が大きくなったり、評価損を抱える時間が長期化したりもします。
つみたて投資の場合、評価損をいくら抱えようとも株価急落しようとも淡々と追加投資を続けなければなりません。そこで株価に反応して方針転換してしまうと、心理のコントロールを自分からあきらめた代わりに得た「株価を見ないメリット」を失うことになります。
■これはもはや降伏である
二つ目の「降伏」とは、企業が将来にわたって稼ぐ力にまったく関心を寄せることなく、その価値判断を自分から放棄しているという意味です。
「これだけ将来性のある良い企業なのに、どうしてこんなに株価が安いのか」などと、今の株価に対して時には疑問を持ち、実力に見合った値付けをしていくことこそが、投資家として社会の中で担うべき本来の役割ではないでしょうか。
自分が投資している企業の事業に興味を持っても意味がない、その時間がもったいないなどと考えることは、言い過ぎかもしれませんが、独善的でいささか社会に対して無責任であり、上記の役割とは対極にある姿勢のように思えます。
インデックスファンドを保有するということは、ファンドの資産にふくまれる数百、数千の企業の株式を保有するということです。たとえば、S&P500インデックスファンドを保有していれば、米国企業500社の株式を保有しているのと同じです。
全世界株式(オルカン)インデックスファンドであれば全世界の企業2700社以上の株式を保有しているのと同じです。これだけの多くの企業数ですから、インデックスファンド内の個々の企業の事業やその実力をつかむことはまず不可能です。不可能だから知ろうとしない、そもそも興味を持たない――これはもはや「降伏」と呼んでも良いのではないかと考えます。
■単純にもったいない
インデックスファンドでつみたて投資を継続すると、そのファンド――つまりはその中にふくまれている株式を長期で保有することになります。短期的な売買ではなく、株式の長期保有から得られるリターンの源泉は、その投資先企業の事業が生む利益です。
その利益がどんな事業からどのように生まれているかにまったく関心を持たないのは、利益さえ出るのであれば事業の内容は問わない、とにかく稼いでくれればそれでいいという安易な姿勢でいることを疑われてもしかたがありません。インデックスファンドのつみたて投資は、こうした姿勢を長期間にわたって継続することになりかねないのです。
このようにインデックスファンドは投資のリターンの源泉への関心を仕組みとして放棄させてしまっている、そして受益者側もそれに従っているという点で「降伏」と表現させていただきましたが、それ以上にこの「降伏」は単純にもったいない、というのが私の考えです。
なぜなら、この「降伏」のせいで、ファンドを構成している企業の事業活動やその社会的な価値に関心を抱く機会を失い、資本主義を活用して大きな資産を築く「幸福」のチャンスを逸してしまうからです。
■幸福になるチャンスを逃している
リスクを取らなかった人からリスクを取った人へと富が移転する。これが資本主義の極めて重要な原則です。投資家生活を通じて、投資している企業がどんな事業でどのように利益を生み出しているかについて興味を寄せる機会を積み重ねることで、その事業のリスクをもっと直接取ってみたい、と感じることが皆さんにもきっと増えてくるはずです。少なくとも、私の場合はそうでした。
投資信託に比べると、最低投資金額が大きくなる傾向にはありますが、魅力のある企業の中にも実は数万円から投資できる企業もたくさんありますし、単元未満株を購入するという手もあります。
インデックスファンドのつみたて投資のみを行って完全に「降伏」してしまうのではなく、個々の企業にもリスクを取って直接投資してみる、そして生きた企業に投資しているという実感を得ながらその割合を増やしていくことが、あなたにより大きな「幸福」をもたらすかもしれないのです。
個々の企業の価値、稼ぐ実力を拠りどころにして、自ら主体的に取り組む株式投資の世界の魅力に、ぜひ気づいていただきたいと心から願っています。
■こんな人は個別株長期投資に向いていない
読者の皆さんの中には、現在はインデックスファンドのつみたて投資をメインにしているものの、いずれは個別株長期投資に取り組みたいとお考えの方もいらっしゃると想像しています(ここまでお読みくださってその気持ちがいくらかでも高まっていたとしたら、とても嬉しいです)。
ここからは、そんな皆さんへのアドバイスです。
個別企業への投資を長く続けるために重要なことは、事業・ビジネスモデル、そして、経営者・人に関心を持ち続けることです。そこからその企業が社会でどんな役割を果たしていきたいのかが見えてきます。そしてたとえて言うなら、その企業が創業以来どんなリレーをこれまで走ってきたのか、その企業はなぜ走り始めたのか、そしてこれからどこに走ろうとしているのかをつかみ、その想いのこもったバトンを携えて株主として自分もリレーに参加したいと感じられるかが重要です。
事業・ビジネスモデル・経営者・人への関心が持てず、とにかくお金を増やしたいという人には個別企業への投資は不向きでしょう。なお、株価の上げ下げのみをとらえる「波乗り」のトレードならば、これらのファクターへの関心は不要ですが、それがそもそも投資ではないのは、ここまで読んでいただけたら分かるはずです。
■いつかくる株価暴落にむけての準備運動
私の場合、インデックスファンド主体の運用から個別株長期投資へと、かなり短期間に、大胆にポートフォリオを変更しましたが、皆さんには必ずしもその必要はないと思います。
個別株への投資はまずは1社、1単元からで構いません。そこから自分自身で自分が事業・ビジネスモデル、経営者・人に関心を持ち続けられるか――そしてその関心がどんどん高まっていくかどうかを確かめてみてください。
投資してみた企業への関心が少しずつ高まっている感覚、株主として企業が走っているリレーに参加している感覚を自覚できたら、あなたは個別株長期投資に向いている、と考えて良いでしょう。ただし、焦る必要はありません。ゆっくり、少しずつポートフォリオにおける個別株の比率を高めていけば良いと思います。
私が2008年に短い期間でインデックスファンドから個別株長期投資へ大きく転換したのは、あまりにも割安と感じられる個別企業がかつてないほど増えてきたという感覚が持てたからです。そして、割安な企業が多くなっているという感覚を持てるタイミングの一つが株価暴落です。
株価暴落は、ポートフォリオを大きく転換するチャンスになり得ます。私がまずは個別株長期投資をゆっくりと少しずつ始めてみるのをおすすめするのは、株価暴落に向けたウォーミングアップになるからです。このウォーミングアップができていないと、株価暴落に際して適切な行動をとることはできません。
また、ウォーミングアップのための投資先選びでアクティブファンドのポートフォリオを参考にしてみるのもあなたの選択肢の一つとなります。
---------- ろくすけ 個人投資家 投資歴約25年の個別株長期投資家。会社員として勤務しながら個別株長期投資に地道に取り組んだ結果、3億円の金融資産を確保し、2019年にアーリーリタイアを実現。かねてよりの夢であった全国各地の株主総会を巡る旅を満喫中。投資と鉄道メインの旅行をテーマとした人気ブログ『ろくすけの長期投資の旅』を運営。著書に『10倍株の思考法 「ビジネスモデル×企業価値」で考える株式投資入門』(日経BP)がある。 ----------
個人投資家 ろくすけ
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