( 257671 ) 2025/01/30 17:49:50 0 00 森永卓郎氏はホンダと日産のこれからをどう見るか(写真はホンダの三部敏宏社長/EPA=時事)
1月28日に亡くなった経済アナリスト・森永卓郎さん(享年67)の週刊ポスト誌上の連載「読んではいけない」。1月27日発売号では、EV(電気自動車)の未来とホンダと日産の経営統合について考察してくれていた。日産凋落の原因はEV(電気自動車)への集中投資にあると看破した森永さんは、今回の経営統合に期待している点もあると明かしてくれていた。
* * * ホンダと日産が経営統合に向けた協議に入った。背景には日産の業績低迷があり、図式としてはホンダによる日産救済のための経営統合と言っていいだろう。
日産凋落の原因がEV(電気自動車)への集中投資にあることは自明だ。これからはEVの時代だという認識は日産だけではなく、欧米の自動車メーカーも同様だった。トヨタのHV(ハイブリッド車)に関する精緻な技術に、他国メーカーはとても追随できないという事情もあった。
ところが、である。EVが普及し始めると、化けの皮が剥がれた。意外にもポンコツだったのだ。そもそも補助金なしでは買えないほど価格が高い。長距離走行に難がある。環境に優しいと謳っていたが、廃棄処理を含めると環境対策にならない。電気を石油で作ると、そこから二酸化炭素が出る。そのほか冬場に充電しにくい、充電スポットが少ないなど、数多の問題が噴出し、需要の鈍化が顕著になった。
EVシフトを進めてきた海外メーカーも戦略の見直しを余儀なくされ、たとえばドイツのメルセデス・ベンツは「すべての新車を2030年までにEVにする」との方針を撤回。同様の目標を掲げたスウェーデンのボルボもこの方針を撤回した。私は遠からずEVは廃れると見ており、米国のテスラや中国のBYDにも未来はないと考えている。
日本政府はEV向け蓄電池の製造に3500億円の助成を発表するなどEVシフトを後押しするが、金の出し所を間違えているのではないか。
一方で、個人的にはホンダと日産の経営統合には期待している。今後は両社を傘下に置く持ち株会社が発足し、ホンダと日産という会社とブランド名は今後も残る。日産でいえばGT-RやフェアレディZなどカーマニアに人気の高い車種が消えるわけではない。また、日産と企業連合を組む三菱自動車もこの統合に合流すると報じられた。3社連合が実現すれば、販売台数で世界3位に浮上する。
私自身、10年ほど前からホンダのN-ONEという軽自動車に乗り続けている。ホンダ車は高速走行時に「ブイーン」という心地良いエンジン音で加速するので、運転が実に楽しい。エンジン音が静かでファミリー向けの車が多いトヨタに対して、ホンダと日産はマニアに好まれる尖った車作りが得意という共通点を持つ。経営統合について両社の社風の違いを危惧する声も多いが、社風の違いで揉めることは少ないのではないか。
持ち株会社の社名について、私はラジオ番組で両社の頭文字を取って『ホンジツ』、そこに三菱が加わったら『ホンジツ三菱』がいいと言った。ところが、共演者の共感を得られるどころか、「お前はバカか」と一笑に付されてしまった。ホンジツに代わる妙案はいまのところ浮かんでいない。
* * * 現在、マネーポストWEBでは、別記事《【独占手記・全文公開】森永卓郎氏、がんステージIV「余命4か月」宣告でも精力的に生きられる秘訣 お金、健康、人間関係の整理…常識に囚われない心得を明かす》にて、週刊ポスト1月27日発売号に掲載された森永さんの手記を全文公開している。資産整理、治療の様子、気の持ちよう、そして最愛の家族も含めた人間関係についてまで、がん宣告されてから亡くなる直前まで、森永さんがたどりついた考え方を詳細にレポートしている。
【プロフィール】 森永卓郎(もりなが・たくろう)/1957年7月12日生まれ。東京都出身。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。近著に『身辺整理』(興陽館)『投資依存症』『書いてはいけない』(ともに三五館シンシャ)など。テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中。
※週刊ポスト2025年2月7日号
|
![]() |