( 257986 ) 2025/01/31 14:29:46 0 00 受験の“超直前期”に流れるACジャパンのCMには戸惑いの声も。画像はイメージ(GettyImages)
元タレントの中居正広さん(52)と女性とのトラブルを巡り、フジテレビのCMがACジャパンの公共広告に続々と切り替わっているが、そのうちの1本のCMが「受験界隈」で物議を醸している。
野球場のそばを小学生くらいの少年が歩くシーンで、そのCMは始まる。立ち止まって、練習する子供たちをまぶしそうに見つめる少年。だが、指導者の男性が少年に気付き、「野球やってくか」と声をかけると走って逃げ出してしまう。
続いて映像は少年の自宅のシーンに切り替わる。90点を取った算数のテストの答案用紙が机に置かれている。少年の隣には母親の姿がある。
母親は「私たち頑張ったよね。今は勉強だけしていればいいの」と語りかける。少年の両肩に手を置き「全部あなたのためだからね」と言い聞かせる。少年に笑顔はなく、「これはぼくのためなんだ」と心の中でつぶやく……。
その後、画面は暗転し、次のようなテロップが表れる。
《子どもの精神的幸福度37位(先進国38か国中)》
2020年のユニセフの調査による、日本の実際の順位だ。
後日、再び少年がグラウンドのそばを歩いていると、ボールが転がってきた。
「思いっきり投げてこい」
先日の指導者の男性は少年にそう言って、こう続ける。
「野球やりたいんだろう。おいで」
少年は満面の笑みでグラウンドに走っていく……そして最後に、こんな問いかけが映し出される。
《子どもの心を尊重していますか?》
いわゆる「教育虐待」をテーマとしたCMである。このCMについて、ACはホームページでこう意図を説明している。
「子どもの心や身体が耐えられる限度を超えて教育を強制することを『教育虐待』といいます。教育なのか虐待なのか? その線引きは非常に難しいですが、子どもは親に『褒めてもらいたい』『認めてもらいたい』と、自分の本当の思いを抑えてしまうこともあります。だからこそ、子どもとコミュニケーションをよくとり、‟心の行間”を読み取ることが大切です」
■「受験生がんばれ!」とは逆行
もちろん、教育虐待は解決すべき社会問題であることは間違いない。ただ、今の時期は小学生が挑む中学受験も含めて入試の“超直前期”である。親子ともにセンシティブになっている時期に、このCMが頻繁に流れる現状に対して、SNSでは特にCMの少年くらいの子どもを持つ親から、疑問や嘆きの声が噴出している。
《受験まで追い込みのこの時期にわざわざ流す必要がある?》 《やる気なくしたらどう責任を取ってくれるんだ》 《勉強しない子どもに勉強しなさいって言っちゃいけないの?》 《胸が痛い。ちゃんと合格できるのか、親だってすごく苦しいんだよ》
特に中学受験界隈では“炎上”気味になっているのだ。
CM差し替えはスポンサーの意向とみられ、フジテレビ側に落ち度があるわけではないが、思わぬ余波が広がった形だ。
大手広告会社で企業の広告戦略立案などを経験し、企業の危機管理にも詳しい桜美林大の西山守准教授は、今回のケースについて、
▽CMの中での表現 ▽CMを流すタイミング ▽CMが流される量(ボリューム)
の3つの側面から考える必要があると前置きして、こう指摘する。
「表現自体については、なんら問題はないと思います。ただ、タイミングが受験シーズンであったことと、流される量が多かったことから炎上気味になってしまったのでしょう。企業のCMやメディアなどが『受験生がんばれ!』というトーンになっている時期ですから、逆行するような形になってしまった。急な対応ですから、そこまで計算して差し替えはできなかったのだと思います」
ただ、反響があるということは、それだけメッセージにインパクトがあったということでもある。
西山准教授は言う。
「東日本大震災以降、ACジャパンの広告は、社会的に問題になっているテーマをしっかり扱うようになっています。洗練された、視聴者に響くものを作っているがゆえに、炎上気味になっているのかもしれません」
中居さんとフジテレビの問題は、今後も想像できない“余波”を生むかもしれない。
(國府田英之)
國府田英之
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