( 258049 )  2025/01/31 15:43:19  
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フジテレビ前社長の港浩一氏が辞任したことに関連して、フジテレビ労組の組合員数が急増し、問題の解決や経営刷新が求められている。

日本民間放送労働組合連合会(民放労連)も放送局全体にガバナンスの強化を求め、女性従業員の扱いやジェンダーバランスにも配慮を促している。

フジテレビ労組がストライキも選択肢として検討しており、会社側が適切な対応をとらない場合には社会的理解を得られるとの見解が示されている。

(要約)

( 258051 )  2025/01/31 15:43:19  
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辞任した港浩一フジテレビ前社長/フジテレビ本社での1月27日「10時間会見」/弁護士ドットコム 

 

タレントの中居正広さんのトラブルをめぐり、フジテレビの対応が問題視される中で、フジテレビ労組の組合員数が急増しているという。 

 

上部団体の日本民間放送労働組合連合会(民放労連)は、フジテレビだけでなく放送局全体にガバナンスの強化を求め、1月8日には岸田花子中央執行委員長の談話を出した。 

 

後手にまわる経営側の対応のまずさに、フジテレビ社内外で問題の解決とともに経営刷新を求める声が高まっている。 

 

民放労連書記次長は取材に、フジテレビ労組はストライキも選択肢として検討しているはずだと指摘。ストを実施するのであれば、社会的理解は得られるのではないかとの見解を示した。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎) 

 

——民放労連は1月8日の委員長談話「安心して働ける環境の実現をすべての放送局に求めます」で、民放各局に飲み会や会食への参加を強制されるような状況の排除などを求めた 

 

事実関係やフジテレビ社員の関与はまだ調査をまたなければいけませんが、トラブルに関して社内で相談を受けていたことはフジテレビも認めているところです。その後、もっと適切な対応があったと思います。 

 

放送局に限らず、日本では伝統的に接待の文化がありますが、女性従業員をコンパニオンのように席につけるのは問題です。 

 

民放労連ではこれまで放送各局の役員の女性比率を調べてきました。フジサンケイグループでも社長、取締役の数は多くありません。27日の会見に登壇した5人全員が男性だけでした。経営刷新がなされた際にはジェンダーバランスにも配慮が求められます。 

 

今回の談話は、フジテレビだけではなく、どこの局で起きてもおかしくない問題と捉えて、全ての放送局に対して、人権に関する問題の振り返りを促すものです。 

 

——放送局では女性アナウンサーにどのような役割を求めてきたのか 

 

歴史的には、女性アナウンサーを「女子アナ」として売り出す先鞭をつけたのはフジテレビだと思います。それに日本テレビやテレビ朝日が追随し、女性アナが歌ってCDを出すなどしてきました。 

 

外部のタレントを使うより制作費がかからないという側面も考えられますが、女性アナは「キャンペーンガール」のような役割を求められてきました。 

 

かつて、地上放送のデジタル化に向けて、NHKと民放各局のアナウンサーからなる「地デジ推進大使」が多くの女性によって結成されましたが、キャンペーンガールのような感覚で自局の女性アナを使うことに誰も疑問も持っていませんでした。その一方で役員は男性が多い状況が続きます。 

 

——フジテレビ労組によれば、今年1月13日時点まで80人規模だった組合員の人数は、同23日時点で500人以上まで増えた 

 

フジテレビ労組はこれまで少数の組合で、強い発言力はありませんでした。キー局の中でも結成が遅く、これまで会社は組合を敵視してきました。 

 

今回の一連の記者会見に先立って、会社は社内説明会を何度か開いています。組合が要求して実現した社内説明会もあるといいます。存在感の高まりを感じています。 

 

フジテレビには問題への対応や説明責任を果たしていない側面があり、スポンサーが広告出稿を取りやめる状況を招きました。経営上の大きな問題で、従業員も安心して働けません。今後は経営側も労働組合の意見を無視できないでしょう。 

 

 

民放労連の岩崎貞明書記次長(2025年1月30日/東京都墨田区の民放労連本部で/弁護士ドットコム) 

 

——フジテレビ労組がストライキに踏み切ることも考えられるのか 

 

フジテレビ労組はストライキを選択肢の一つとして検討しているはずです。 

 

テレビ局がストをやったとして、放送が止まるわけではありません。2023年には冬のボーナス支給への回答を不満としたテレビ山口の労働組合が48時間のストライキに入りました。この際は夕方の番組の一部を系列のキー局の放送に差し替えています。 

 

スポンサーや株主から納得のできる対応を求められた経営陣がどこまで答えられているでしょうか。フジテレビで働いている人たちがストをすることは社会的理解は得られると思います。 

 

仮に全面ストをしたとして、フジテレビの番組にどこまでの影響があるかはわかりません。ただ、系列のローカル局にまで影響が出ることは経営としても労組としても考えなければいけません。 

 

フジテレビ系列の地方局の労働組合からは、フジテレビの問題をめぐって地元のスポンサーから地方局に注文がついていると聞きます。系列局も無関係でいられません。 

 

3月末にも第三者委員会の調査報告があるとみられます。その結果をうけた経営側の対応をみて、労組は本格的なストの検討に入る可能性があるのではないでしょうか。 

 

——フジテレビの番組制作に関わる多くの人が心配している 

 

ストをしても番組が止まらないのは、局員よりも制作会社の人たちの数が圧倒的だからです。 

 

番組制作の実態はほとんど外部プロダクションの力によるものです。1つの番組がなくなるだけでも、何百人という規模の人の仕事がなくなります。 

 

フジテレビの経営に先行き不安が発生すると、社員より関連の制作会社で働いている人たち、フリーランスの人たちみんなが不安になります。 

 

こうしたこともあって、フジテレビで働いている人たちがストをすることに社会的理解が得られると考える理由です。 

 

1つのメディアの判断が多くの人の生活に影響します。組合の姿勢に会社は真剣に向き合うべきです。 

 

広告を引き上げたスポンサーもフジテレビが潰れてよいと思っているスポンサーはいないはず。正常なCM取引の回復を願っていると思います。 

 

弁護士ドットコムニュースが、ストライキの検討状況について尋ねたところ、フジテレビ労働組合は「個別の質問については、お答えしておりません」とした。 

 

同じメールの中で、労組は次のコメントを寄せた。 

 

「今回は、組合として要求していた『オープンな会見』が行われ、一定の意見が受け入れられたと感じております。ただ、それは我々の要求の一部でしかありません。 

 

一方で、叶っていない要求に対して前向きな検討状況も確認できました。会見の受け止めは様々だと思いますので、組合で意見を集約・精査した上で、会社との対話、あるいは別の手段など、迅速に検討していきたいと考えております」 

 

弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎 

 

 

 
 

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