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兵庫県知事の斎藤元彦に関する疑惑を調査する県議会特別委員会メンバーが攻撃を受けている。

特に竹内英明元県議は亡くなる前に脅迫電話を受けたり、ネットで中傷されたりしていた。

また、無所属の兵庫県議・丸尾牧も様々な攻撃を受けており、特に彼らを非難する声が強まっている。

これらの攻撃はSNSなどを通じて広まっており、選挙関連の攻撃も含まれている。

竹内氏が自死した後も攻撃は続き、丸尾氏も事務所に電話やメールが押し寄せた。

警察が捜査に乗り出し、攻撃は少なくなったが、丸尾氏は引き続き名誉毀損での刑事告訴を進めている。

全国に広まる前に、人を追い詰めるネットリンチを止めるための対策が必要だと訴えている。

(要約)

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斎藤知事(左)と丸尾県議(右) 

 

斎藤元彦・兵庫県知事のパワハラや公金支出などの疑惑を調べる県議会特別委員会(百条委)メンバーへの攻撃は今も続いている。1月に委員会元メンバーだった竹内英明元県議が亡くなった後も、同僚だった議員には脅迫電話が…。ネットで拡散された誹謗中傷は、議員活動どころか生活まで脅かす暴力となっている。 

 

「お前も死んでしまえ。ボケ、あほ」 

 

「おらんようなるのがみんなの幸せや。もうどっか行った方がええな。地獄はいけるやろうな」 

 

「お前、無責任すぎるやろ! そんな人間、死ねや。オゥゥ!」 

 

無所属の兵庫県議・丸尾牧さんの事務所の留守電には、ドスを利かせた罵詈雑言の声が残されていた。昨年夏に始まった電凸(電話突撃)は出直し知事選があった11月から昨年末にかけて連日30件ほど続いたという。 

 

「もう聞きたくないのでずっと留守電状態にして、音も消しているんです。警察に届けてかなり消したので、残っている音声はわずかです」と丸尾県議は疲れた表情で話す。 

 

丸尾氏が狙われたのは兵庫県政をめぐる疑惑解明の先頭に立ったためだ。一連の問題は昨年3月、当時の西播磨県民局長・Aさん(60)が知事の疑惑を書いた匿名の告発文書を外部に送ったことで始まった。 

 

斎藤知事の指示による、公益通報者保護法違反の疑いがある「告発者探し」でAさんは発信者と特定され、懲戒処分を受けた。斎藤知事はAさんを「嘘八百」「公務員失格」と記者会見で非難し、疑惑を抑え込んだかに見えた。 

 

「しかし告発文書に登場する県産業労働部長が企業からコーヒーメーカーを受け取っていたことを読売新聞が昨年4月にスクープしました。さらに、丸尾県議が独自のアンケートを県庁前で県職員300人に配り、これに回答した延べ13人が、知事や側近のパワハラや物品受領に関する情報を寄せたのです。 

 

この二つによって告発文書には信ぴょう性があるとの見方が広がり、(疑惑を調査する)百条委が設置されました。知事側は、片山安孝副知事(昨年7月に辞職)が議会側に、『自分が辞職する代わりに百条委設置はやめてくれ』と言って設置阻止を働きかけましたが失敗しました」(地元記者) 

 

Aさんは百条委での証言前の昨年7月に急死。それでも百条委の調査には告発を裏付ける証言が多く寄せられた。 

 

だが県議会は斎藤知事が告発を適切に扱わず県政を混乱させたという別の理由で、百条委調査が終わっていない9月に不信任決議を採択。これを受け失職を選んだ斎藤知事は、11月の出直し知事選に出馬、当選し、返り咲いた。 

 

「この選挙で『疑惑は全部ウソで斎藤知事はハメられた』という事実と異なることがSNSで広められました。丸尾県議と、独自に調べた情報を次々と明らかにした竹内英明県議、そして百条委委員長の奥谷謙一県議の3人を筆頭に、疑惑調査に関わる人を非難する声が強まったのです。疑惑には根拠があるのにもかかわず、丸尾さんと竹内さんはその根拠をでっち上げた、として特に攻撃されたんです」(県議会関係者) 

 

電話やメールによる攻撃はSNSを見た人物らが行なったとみられている。 

 

 

「知事選に『斎藤さんを応援する』と言って出馬した立花孝志NHK党党首がAさんや丸尾さん、竹内さんを街頭演説で非難し、その動画が拡散されました。 

 

立花氏は奥谷県議の自宅前で街頭演説を行ない、『これ以上脅して奥谷が自死しても困るのでこれくらいにしておく』と言い、次は竹内、丸尾両県議のところにも行くとも宣言しました。名前が挙げられた人は恐怖を感じるしかありません。 

 

それだけではありません。斎藤知事の支持者を名乗る『チームさいとう』というグループがLINEアカウントの中に設けたオープンチャットでは、立花氏の奥谷県議宅前での演説が事前に告知され、奥谷氏の住所がさらされました。 

 

さらに竹内、丸尾両氏らを“主犯”とする動画の拡散も呼びかけられていました。組織的な誹謗中傷が行なわれた疑いがあり、県警はこの書き込み内容や投稿者の分析を進めています」(地元メディア関係者) 

 

丸尾氏と同様に、事務所に電話やメールが押し寄せた竹内氏は、家族を守りたいとして選挙翌日の11月18日に県議を辞職した。ところがその後も攻撃は続いた。 

 

「竹内さんは、家の前に見慣れない車が停まっていたり、ゴミがまかれたりして生活が脅かされ、ずっと怯えて一人で外出もできないほどに追い詰められたんです」(県議会関係者) 

 

その末に竹内氏は今年1月18日に亡くなる。自死とみられる急死について、知人は「ネットリンチによる殺人じゃないですか」と憤る。 

 

丸尾氏も「私たちを攻撃せよとの“犬笛”が吹かれたのだと思っています」と話し、攻撃による痛みを振り返る。 

 

「実は竹内さんが辞職する前の選挙中に、書き込みがあまりにもひどいので、裁判所に投稿主の情報開示や削除の請求を一緒にしませんか、って提案したんです。しかし竹内さんは『でももう僕、しんどいんですよ。もう見ないようにしてるんです。いいですわ』と言って…。その時には闘う気力ももう残ってなかったんですよね…。 

 

私の事務所の前にも、県外ナンバーの車が停まり、スマホで事務所を探しているような人が目につきました。 

 

さらに、選挙が終わってもその後の一か月ほどがむちゃくちゃしんどかったんです。斎藤知事の対立候補を応援した人たちが選挙に負けて意気消沈し、動きが鈍くなる中で、僕らはずっと叩かれ続けたんです。 

 

竹内さんは『一人ぼっちだ』って言ってました。僕もその感覚でした。でも、百条委を最後までやってくれと遺書で言い残したAさんの思いがあり、百条委はやり遂げなければと、踏ん張りながらやってきました」(丸尾氏) 

 

 

選挙後の12月からは頼んでもいない商品が届くようになった。 

 

「お茶、健康食品、コーヒー。市民共済の特約の申し込みも勝手にされました。全部で10件ほどですが、被害を受けた業者さんに頼んで取り寄せた8件の申し込み書類に書かれた筆跡はみな同じでした。これは警察が私文書偽造で捜査しますと言ってます」(丸尾氏) 

 

警察が捜査に乗り出したと報じられると、電話による攻撃は途端に少なくなったという。Xでは丸尾氏の議員辞職を求める署名も行われたが、このアカウントは1月に凍結された。反対に1月初旬から始まった丸尾氏を応援するXの署名は1万筆を越えている。 

 

「丸尾頑張れっていうメッセージがたくさん出されるようになってずいぶん救われました。もう少し頑張ってみようって。力になりました」(丸尾氏) 

 

しかし1月19日に竹内氏の悲報が報じられると、また「竹内さん亡くなったんだけどぉ、アンタはどうなの。逃げんじゃねえよ、てめえ」と、人の死まであざける電話がかかってくるようになった。 

 

丸尾氏はSNSで拡散された動画のうち、事実と違う誹謗中傷が特にひどい25件についてYouTubeに削除を求めたが、削除されたのは5件だけ。丸尾氏は名誉棄損による刑事告訴も念頭に投稿者の開示請求訴訟を順次進めている。 

 

「虚偽動画は削除されるまでに再生が繰り返され、投稿主は収益を得る一方で、こちらの名誉は回復されません。“やったもん勝ち”です。ファクトチェックを経て警察が速やかに捜査し、開示・削除請求を公的機関が支援する被害者救済の枠組みが必要だと思います」(丸尾氏) 

 

同じことが全国に飛び火する前に、兵庫県で起きたことをよく考えてほしいと訴える丸尾氏。人を死に追い込むネットリンチを止めるため、早急な対策が求められている。 

 

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 

 

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