( 258906 ) 2025/02/02 05:32:29 0 00 Z世代のタイパ重視の価値観に驚きの声も(イメージ)
世代が違えば、価値観も異なる。体験取材を得意とする女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんは、効率を求めるZ世代に驚くことも多いという。60代のオバ記者が、Z世代について思うところを綴る。
片手にドリンク、もう片方の手に鶏の唐揚げ。それぞれを交互に口に運びながら、昼下がりのビジネス街を足早に歩くサラリーマン。最近、東京駅周辺を散策することが多い私は、そうした光景を目にするたび、すごく違和感があるの。
くたびれた中高年が缶ビール片手に夜の街を千鳥足で歩いているのとは違う。何しろサラリーマンの身なりがいい。年の頃は20代半ばで、羽織っているコートも安くないとみた。背負っているリュックだって量販店のものじゃなくて、革製のいかにも高給取りのビシネスマンって感じ。
「高給サラリーマンは座って食事をする時間もないってこと? せめてベンチに座って食べられない!?」
あるイベントで知り合って仲よしになったT子(33才)にその話をしてみた。T子もIT業界でバリバリ仕事をしているイマドキのできる女だ。すると、「その人、“タイパ”を考えてるんだと思うよ」と耳なじみのない言葉が返ってきた。
「タイパ??」と聞き返すと、「タイムパフォーマンスのことよ。一時期よく耳にした“コスパ”はコストパフォーマンスの略語で、“コスパ重視”といえば、支払ったお金に見合う価値がどれだけ高いかを重視する考え方のことだけど、“タイパ”はタイムパフォーマンスのこと。“タイパ重視”は時間をできるだけ効率よく使おうとする考え方よ。
その人はきっと、食事を済ませてから移動するより、食事と移動を同時にした方が効率がいいと思って、歩き食べをしていたんだと思うよ」と、したり顔だ。
そして、「まぁ、そうはいっても、30代の私から見たらZ世代はマジ無理。考えられないことをしてるもんね」と言うの。
「えっ? あんたもZ世代じゃないの?」と顔を見ると、「違う違う。Z世代から見たら、私は旧世代だよ。だってZ世代は1990年代半ばから2010年代前半の生まれで、物心ついたときからインターネットやSNSが身近にあった12~28才くらいの世代のことをいうんだもん」
なるほど、なるほど。それで思い出したことがある。
つい最近、30代前半の既婚女性の離婚相談にのったことがあるのよ。けんかの原因の1つが、5才年下の夫が2才の息子にタブレットを預けて、ゲームを好き放題させていること。「2才の子にタブレットなんて!」と私も母親に同調したけど、そのパパは「いまどきは0才児向けのゲームもあるし、早い時期からタブレットを持たせた方がいいよ」と平然としているんだって。
そのときは、「タブレットは視力低下につながる」とか「脳に刺激がありすぎる」という言葉が喉元まで込み上げたわよ。それをギリギリ言わなかったのは、振り返れば私たちも「テレビを見ると目が悪くなる」とか「漫画を見るとバカになる」と言われて育ったから。時代が変わっても、若い連中に物申したくなるのは一緒なのかも、と思ったからよ。
で、結局、離婚寸前までいった若夫婦は元のさやに収まって、いまは息子のお受験のために共同戦線を張っていて、私の出る幕はなくなった。それはともかく、T子が「マジ無理」というさっきのタイパの話の続きだ。
「なにせ、私の会社の後輩は、『お風呂でご飯食べながらゲームしてる』って言うんだよね。浴槽に設置するトレーまで市販されているらしいから、風呂・食事・ゲームをまとめてこなすことはZ世代では珍しくないのかもよ」と笑う。
まぁ、聞くだに呆れるしかないけど、思えばZ世代とやらが世に出だした数年前からだよね、それまで当たり前と思っていた習慣やルールが崩れ始めたのは。
電車の中で、明らかに若い人が妊婦や体の不自由な人、年配者に席を譲る気配がまったくなくなったんだわ。前からそうだと言われるかもしれないけど、譲ろうとする人をまったく見かけないというのは異常だよ。
変化はそれだけじゃない。私は自分より座席が必要と思われる人が前に立つと席を譲るけど、「あんたに譲られるいわれはない」と言わんばかりの後期高齢者が増えている気がする。
そうか。「どうぞ」「ありがとう」なんて会話を望んだ私が悪いのかもと、それからは黙って席を立って、次の駅で降りて別の車両に移っている。そして、横に立っていた若いお兄さんにぶん取られていないか隣の車両からそっと見ると、座ってほしい人がちゃんと座っていたんだよね。自分のことしか考えない効率第一主義のZ世代のように思うけど、年寄りを押し退けて座席を占領するほど悪たれじゃないんだなと、このときばかりはちょっとホッとしちゃった。
【プロフィール】 「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2025年2月6日号
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