( 259594 )  2025/02/03 15:41:16  
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昨年末までのデータによると、新宿・歌舞伎町の大久保公園周辺での売春防止法違反による逮捕件数が88人に上り、前年より減少している。

女性たちがクリスマス前後に客待ちをしていない理由について、支援団体の調査では、女性たちはクリスマスまでにお金を稼いで、自分の好きな場所で楽しく過ごすために活動しない傾向があるという。

一方、警察庁の検討会では、風俗業界の現状や問題について報告書が公表され、売掛金やスカウトバックなどが規制されていないことや、女性客への被害について厳格な規制が必要だと指摘している。

支援団体の代表者は、色恋営業に関する規制の進め方や実際の取り組みの不透明さに疑問を呈している。

現在サポートを行っている女性たちは、お金が必要で売春を続けている状況であり、規制が彼らにとって抑止力となるならば歓迎すると述べている。

(要約)

( 259596 )  2025/02/03 15:41:16  
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女性たちも「クリスマスには立ちたくない」と話すが… 

 

新宿・歌舞伎町の大久保公園で客待ちしている女性たちを売春防止法違反の疑いで現行犯逮捕した件数が、昨年11月末までに88人に上った。前年1年間の140人に比べ減少傾向にある。 

 

客待ちをしていた動機については「ホストやメンズ地下アイドルに使うため」が31%だったが、これも前年の43%より減少した。「旅行やブランド品購入などの趣味に使うため」が19%、「生活困窮」が13%だった。逮捕時の居住地別では、住居不定が36%に上り、首都圏以外は8%。平均年齢は25歳で、最年少は16歳の少女だった。 

 

警視庁は昨年10月から集中的に取り締まりを行い、1か月で50人を逮捕するなど対策を強化していたが、対策後の大久保公園付近はどんな状況だったのだろうか。(渋井哲也) 

 

性風俗従事者や売春をする女性の支援を行うNPO法人「レスキューハブ」の代表、坂本新さんは昨年末の状況についてこう話す。 

 

「僕らが積極的に(歌舞伎町を)回るようになったのは2020年からなんですが、もともとクリスマス前後は女性は公園周りに立っていませんでした。僕らも支援当初は、クリスマスだから豪華にGODIVAのチョコレートを配ろうと用意してたんですけど、そういう時期には女性たちはいないとわかりました。 

 

さすがにクリスマスにまで立ちたくないという気持ちがあるのと、クリスマスまでにお金を稼いで、クリスマスはもう担当(好きなホストやコンカフェのキャスト等)の店に行って楽しく過ごすみたいです」 

 

ところが、2024年は様相が違ったという。 

 

「(公園周辺に)女性が普通にいたんですよ。12月24、25日に1時間~1時間半くらい回ったんですが、その間だけでも、40〜50人に声をかけている感じでした…」 

 

集中的な取り締まりを受けて、クリスマス前の貯金ができなかったのか。はたまた物価上昇の余波が歌舞伎町にも届いていたのか…その原因については坂本さんも首をかしげる。 

 

「これまで支援してきた子たちにも理由に心当たりがないか聞いてみたんですが、『クリスマスだから立ちたくないよね。なんでだろう? わかんない』と言っていました」 

 

 

大久保公園周辺で異変が起きていた12月、警察庁の有識者検討会は「悪質ホストクラブ対策に関する報告書」を公表した。 

 

その中で、現在の風俗営業適正化法(風適法)では、ホストクラブ特有の「売掛金」「スカウトバック」(※)等の問題が規制できていないと指摘。 

 

※高額な請求を「売掛金(後払い・ツケ払い)」にする仕組み。その支払いで多額の借金を抱える女性に風俗店を紹介し、ホストが風俗店から「スカウトバック」と言われる紹介料を受け取るケースが後を絶たない。 

 

歌舞伎町をはじめ全国の一部店舗では「売掛金」の禁止を宣言したホストクラブもあるが、内実は「立替金」(※店へのツケではなく、ホストが女性の飲食費を立て替える仕組み)に変更したにすぎないことから、実質的な改善がみられていない。 

 

検討会は「女性客に対して経済的な損害にとどまらず、精神的、身体的にも継続的に深刻な被害を及ぼすことから、厳格な規制を行う必要がある」とし、今後は①料金に関する虚偽説明、②恋愛感情等につけ込んで客を依存させて高額な飲食等をさせる行為、③客が正常な判断ができない状態で高額な飲食等をさせる行為の3つを規制すべきとした。 

 

さらに、「売掛金」や「立替金」等を取り立てる行為についても、①「支払わなければ実家に行く」等と威迫する行為、②客を困惑させたり、畏怖(いふ)させたりするなどして、売春等の違法行為や性風俗店での稼働等を求める行為については規制すべきと踏み込んだ。 

 

警察庁の提案するこうした規制について、坂本さんは「『報告書』の内容は、想定していたよりかなり踏み込んだ内容になっていて良かったとは思う」と一定の評価をする。 

 

しかし、肝心の「色恋営業」の規制をどう進めていくのか、進められるのかは不透明だという。 

 

「『恋愛感情等につけ込んで客を依存させて高額な飲食等をさせる行為』、いわゆる色恋営業の禁止というのを、どういう風に法律に落とし込んでいくつもりなんでしょうか。実際に何か事件が起きた時、誰がそこ(色恋営業か)を判断するのか、難しいところですよね。女性側も洗脳状態でホストに入れ込んでいれば『色恋営業じゃないよ』って言うでしょうし」 

 

実際、坂本さんのもとに「色恋営業」に関する相談はきているのだろうか。 

 

「相談はありましたが、やはり女性の“洗脳”が解けた後のことですね。相手に対する思いが冷めた時とか、関係性が悪くなった時。たとえば、『結婚しよう』と言われて2年間通い続けて200万とか300万近いお金をホストに落としてきた、それを回収したいと。 

 

あとは、外から見れば当たり前のことですけど、ホスト側も同時進行で、複数の女性と色恋の関係を持っていたりします。女性たちは恋に溺れる自分自身を客観視できていない状態なので、『他の女性といるところを見かけたから訴えたい』という相談を受けたこともありますね。弁護士に相談したいと。 

 

でも、そういうときに証拠がどこまであるのかというと…。ホストの口座にお金を振り込んだ履歴はあるか。結婚しようというLINEなどの文面があるか。証拠があればまだ戦える余地はありますが、ホストもその点では手だれですからね。回収は難しいです。僕らが説明しても納得してもらえなかった時には、法律事務所に連れていって、弁護士から話をしてもらったこともありますよ」 

 

どこからを『色恋営業』として規制するのか、たとえ摘発しても、事実をどう立証するのか。支援者らの心配は尽きない。 

 

「ただ、今僕たちがサポートしている子たちは、生活するのにお金が必要で、公園に立って売春を続けてることが多いです。また、自分の収入の中で、遊ぶためのお金を捻出するのが難しい状態にある子もいます。規制が、その子たちにとっても抑止力になるのであれば歓迎なんですけどね」(坂本さん) 

 

■渋井哲也 

栃木県生まれ。長野日報の記者を経て、フリーに。主な取材分野は、子ども・若者の生きづらさ。自殺、自傷行為、依存症、少年事件。教育問題など。 

 

渋井哲也 

 

 

 
 

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