( 260521 ) 2025/02/05 05:51:36 0 00 これまでは国民的知名度のある人気コンテンツが多く採用されてきたが、今後はどうなるか
近年のパチンコ・パチスロでは、アニメやゲームなどを題材とした機種が圧倒的に多い。人気コンテンツを採用することが、より多くのユーザー獲得につながるという思惑があってのことだろうが、採用されるコンテンツの傾向も変化しているという。
「かつては既存ユーザー層に人気があるコンテンツが多かったが、最近は新規ユーザーを意識したコンテンツが増えている」と話すのは、パチンコ・パチスロ事情に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏だ。
「パチンコ、パチスロでアニメなどの版権が使われる機種が増えてきたのは、1990年代後半くらいからで、2000年代前半には定着しました。当時は『ルパン三世』や『北斗の拳』といった世間一般でも広く人気を獲得しているコンテンツを採用することで、既存のパチンコ・パチスロユーザーの興味を引くという感覚でした。
その後、2004年にパチンコ『CR新世紀エヴァンゲリオン』が登場してからは、往年の人気作品だけでなく、コアな層に人気があるアニメ作品などが登場することが増えていきます。
最近では、かなりマニアックな作品がパチンコ化・パチスロ化することも多く、世間的には『見たことも聞いたこともない』というものもあるでしょう。既存のユーザーへのアピールというよりも、そのコンテンツのファンをパチンコホールに呼び込みたいという思惑が見え隠れします。背景には、版権使用機種が増えすぎた結果、採用できる有名コンテンツが減っていることもありますし、若年層のユーザーを増やしたいという狙いもあるでしょう」
とはいえ、パチンコ・パチスロに興味がない人々を呼び込むのは、そう簡単なことではない。都内に住む20代のアニメファンAさんはこう話す。
「自分の好きなアニメがパチンコになったので、初めて打ちに行ったんです。でも、パチンコの液晶画面を見ていても、何が行われているのかイマイチわからないし、どう楽しんでいいのかもわからない。それに、どんどんお金が減っていくのも怖い。これならグッズを買ったり、映画を何回も観に行ったりしたほうがいいなと思って、それっきり打ってないです」
アニメやゲーム、あるいはタレントを起用した機種のなかで、ヒットするかどうかは“スペック”による部分が大きいと藤井氏は話す。
「ちょっと古い話ですが、2014年に導入された『CRぱちんこAKB48』は販売台数20万台を超える大ヒットとなりました。当時のAKB48は社会現象的なブームだったので、グループのファンがホールに押し寄せたかと思いきや、意外と中高年以上の既存のパチンコファンが楽しんでいたんです。というのも、この機種は大当たりの初当たり確率が1/199と比較的高いわりに、確変に入ったらそこそこ連チャンするという、バランスがいいスペックだったんです。つまりAKB48の映像を楽しむファンよりも、一般のパチンコユーザーに刺さったということですね。
アニメやゲーム、タレントなどのコンテンツは確かに入口としての話題性はありますが、そこから新規ユーザーを獲得できるかどうかはまた別の話。既存のユーザーに支持されることと新規ユーザーを獲得することを両立するのは、簡単ではないと思います」(藤井氏)
一方で、既存のパチンコ・パチンコユーザーではなく、完全にコンテンツのファンに向けた機種も存在する。兵庫県を中心にパチンコチェーンを展開するタツミコーポレーションのプライベートブランド機『推しスロアイドルVer.』は、機種に登場するアイドルグループのファンを対象とした機種だ。
現在、全国で2店舗にのみ導入されている『推しスロ』には、関西地方を中心に活動する複数のアイドルグループが登場。導入店では、景品として登場するアイドルグループのグッズが用意されている。
もっとも大きな特徴は、基本的に“ほぼ勝ちもしなければ負けもしない”という点だ。
「6段階の設定があり、それぞれスペックに違いはありますが、設定1以外はほぼ出玉率が100%です。基本的に入れた出玉がまるまる返ってくるという仕様ですね。通常のパチスロのような射幸性はほぼ皆無で、ユーザーとしては出玉をグッズに交換するのが目的という形になるでしょう。ホール側としては、射幸性が著しく低い機種を打って“推し活”をしてもらいながら、パチスロの楽しみ方を体験してほしいという狙いだと思います」(藤井氏)
エンタメウォッチャーの大塚ナギサ氏は、勝ちも負けもしないパチスロはファン心理としてはうれしいものだと分析する。
「好きなコンテンツのパチンコ・パチスロを打つことも確かに推し活ではありますが、大きく負けたら喪失感があまりにも大きい。その分のお金で、ライブに行ったりグッズを買ったりできるわけですからね。そういう意味では、パチスロに使ったお金がほぼそのまま返ってきてグッズと交換できるというのは、安心できる推し活とも言える。感覚的にはギャンブルということではなく、カプセルトイなんかに近いのかもしれません。ここでしか手に入れられないグッズがあるなら、ファンとしては是が非でも行ってみたいと思うでしょう」
『推しスロ』に登場するアイドルグループは、ライブハウスを中心に活動するアイドルやローカルアイドルたちであり、必ずしも日本全国に多くのファンがいるというわけではない。
「現状の『推しスロ』のターゲットは、かなり限定的であることは間違いないと思います。登場するアイドルグループを知らない人にまで広がっていくとは、なかなか考えにくい。しかし今後もっと人気があるコンテンツを使った同様のパチスロ機・パチスロ機が登場したならば、飛躍的なユーザー拡大につながっていく可能性もあると思います。そこから通常のパチンコ・パチスロに誘導するとなると、ハードルが高いのも事実ですが、“新たな推し活のスタイル”であることは間違いないでしょうね」(大塚氏)
ユーザー離れが加速するパチンコ・パチスロ業界。“推し活に特化した機種”のように、これまでのパチンコ・パチスロとは異なる楽しみ方を積極的にアピールすることが、人気回復への地道な一歩となっていくのかもしれない。
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