( 261526 )  2025/02/07 06:15:01  
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両社とも世界トップレベルのスポーツカーを開発する実力を有しているのだが……(写真上:ホンダNSX、写真下:NISSAN GT-R)。 

 

日産とホンダの経営統合協議が、打ち切りになる見通しという。はたして、両者の未来はいかに。小川フミオが考える。 

 

日産よ、どこへ行く……ファンをやきもきさせているのが、ホンダとの経営統合のゆくえ。 

 

2025年2月4日にテレビ報道があった。経営統合に向けた基本合意について、この先進めていくかを決定する期限として設定されていたのが1月30日。ところがその時点で、日産による意思決定がなされなかったというのだ。 

 

だとすると、両社の経営統合は白紙になってしまう。日産はどうなる。 

 

今回、日産では公式なコメントを出していないものの、協議を打ち切ると考えられる理由として、ホンダが出した子会社化への反発が報道されている。 

 

ホンダが、日産を子会社化することへと方針を変更したのは、今回の経営統合の前提条件とした、日産の組織リストラクチャリング案に不満を抱いたからだとされる。 

 

日産の提案では「全世界で9000人の従業員削減」と「生産能力2割減」を提案したものの、そこに「工場閉鎖」が入っていなかった。ホンダは「踏み込み不足」と、捉え、いっそ子会社化を提案したという。 

 

「どちらが上、どちらが下でなはなく、ともに未来を切り拓く仲間」として、24年12月の時点で、日産自動車の内田誠取締役兼代表執行役社長兼CEOは語っていた。 

 

どちらが正しいかの判断は難しいか、日産は“エモーション”、ホンダは“ビジネス”と、2社が重視する要素が大きく違っていたのが、日産による協議打ち切り報道へとつながっているのだ。 

 

外部の目からは、日産は今も、カルロス・ゴーン時代の強引なリストラ策「日産リバイバルプラン」の後遺症に苦しんでいるように見える。 

 

この案では、工場5個所閉鎖、人員2.1万人削減、部品調達先50%削減などが挙げられていた。 

 

工場をみても、村山工場、久里浜分工場、九州エンジン工場(部品工場)、日産車体京都工場(量産車製造ライン)など、このプランで生産インフラは大きな“打撃”を受けた。新世代のBEV(バッテリー式電気自動車)「アリア」の発売を視野に入れて作った車載電池の「オートモーティブエナジーサプライ(AESC)社」も中国企業に売却。そこからバッテリーを購入しているのが現状だ。電池の内製化をあきらめたことを批判的にとられる向きは社内にも少なくないようだ。 

 

新車の開発が著しく停滞しているのはご存知のとおり。もっとも稼ぎ頭になるはずのプレミアムSUVも、日本では出せていない。「フェアレディZ」はシャシーが古いままだし、「NISSAN GT-R」だって2007年からだいぶ時間がたってもモデルチェンジが出来ていない。クルマとしての出来はともかく、販売店には厳しい状況だろう。どれも、根っこはリバイバルプランあたりにあるはず。 

 

ホンダから、工場閉鎖を含むリストラ案を……と、催促されたとき、日産には、ゴーン時代の悪夢をふたたび経験するのはごめんだという思いがあったとしても、不思議ではない。 

 

工場閉鎖や系列整理が、雇用や経済に与えるネガティブな影響も、けっして小さくない。ホンダが、雇用確保などにどういう提案をしていたか、さだかではないけれど、クルマって、当面の利益があがればいいってものではない。 

 

眼を世界に転じると、海外資本を受け入れているメーカーは実に多い。たとえば、メルセデス・ベンツだって、クエートや中国の資本を入れている多国籍企業。スーパースポーツカーメーカーでは、さらに例が多い。 

 

今、日産は、いくつもの投資企業との打ち合わせを重ねている最中だろう。言うまでもなく、クルマ好きとしては、日産にしか手がけられない新車をどんどん出してほしいのだけれど。 

 

可変圧縮比をもつ「VCターボ」エンジンはひとつの例だ。いまの「エクストレイル」ではとてもいい印象だった。このエンジンが載せられるシャシーを使って、もっと多くのSUVを開発してもらいたい。 

 

ホンダも、もしこの協議が続くなら、ぜひ日産ファンの心情も考慮していただきたい。ホンダにスポーツカーはなくなってしまったけれど(シビック・タイプRは別として)、日産にはフェアレディZやGT-Rが残っている。次の世代を、ファンは待っている。 

 

文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ) 

 

 

 
 

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