( 261896 )  2025/02/08 03:17:36  
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スタジオジブリのサイト 

 

 アニメ制作会社「スタジオジブリ」(東京都小金井市)の社内で、「去ってほしい社員の条件」と題した貼り紙が出されていると、X上で写真が投稿され、これはジブリの社訓なのかと関心を集めている。 

 

 貼り紙について、同社は実際、代表取締役議長の鈴木敏夫氏(76)のプロデューサー室入口に貼ってあると取材に明らかにした。もし社訓なら「ジブリっぽくない」との声もネットで上がっているが、果たしてその真相とは――。 

 

■「ジブリっぽくない」「皮肉として掲示では」と論議に 

 

 貼り紙の写真は、ジブリの社内に貼ってあるとして、2025年2月5日にXで投稿された。 

 

 写真を見ると、「去ってほしい社員の条件」として、次のような7条件が直筆らしき縦書きで清書されていた。 

 

「一、知恵のでない社員 一、言わなければできない社員 一、すぐ他人の力に頼る社員 一、すぐ責任を転嫁する社員 一、やる気旺盛でない社員 一、すぐ不平不満を云う社員 一、よく休みよく遅れる社員」 

 

 この投稿には、8000件以上の「いいね」が集まり、様々な憶測や意見が書き込まれている。 

 

 7条件について、もし社訓だった場合、「こんなものがあったら士気が下がる」「マイナスにしかならない」と否定的な声が多かった。一方、アニメ作品や鈴木プロデューサーらのイメージから、「ぜんぜんジブリっぽくない」として、「皮肉、反面教師として掲示したのだと思います」との指摘も出た。 

 

 投稿には、Xユーザーが背景情報を提供するコミュニティノートが付けられている。朝日新聞の記事を引用しており、そこでは、鈴木氏は、訪れた会社で落ちていたものを拾ったとドワンゴ会長の川上量生氏に明かしたとするドワンゴ社員の話が紹介されていた。鈴木氏は、「これを飾っていた会社は潰れたんですよ」と笑って話し、川上氏が気に入って会長室にも貼ったという。 

 

 この話題について、スタジオジブリの広報担当者は7日、現在も鈴木氏のプロデューサー室に貼ってあるとJ-CASTニュースの取材に明らかにしたうえで、その経緯について説明した。 

 

 

 その説明によると、2000年に公開された庵野秀明監督の実写映画「式日」の制作のため、鈴木氏がロケ地になった山口県宇部市内のビルを訪れたとき、鈴木氏がゴミ箱の中から今回の貼り紙を拾った。鈴木氏は、これを気に入って、20年以上前からプロデューサー室入口に貼ってあるという。 

 

 このビルに入居していた会社がなくなり、ビル内は、廃墟のようになっていたという。貼り紙がこの会社の社訓だったかは分からないとした。 

 

「7条件について何か言われたことはなく、社訓ではないですね。単純に書いてあることがよかったのだと思います。これを貼るような会社は潰れる、というようには思っていないでしょう。いい言葉だと思ったのでは」(広報担当者) 

 

 川上氏は、10年以上前にプロデューサー見習いとしてジブリに出入りしており、この貼り紙をドワンゴ社内でも貼ったとラジオ番組で話していたという。 

 

 ところで、そもそも、貼り紙の7条件は、大手電機メーカーの日本電産(現・ニデック)(京都市)の創業者として知られる永守重信氏(80)が自らの著書などで挙げていたものだった。 

 

 日経新聞の11年3月7日付記事によると、永守氏が1970年代に会社を立ち上げたころ、京都府亀岡市内の工場で壁一面に「去ってほしい社員の条件」を掲げた貼り紙を出していたと知人の経営者が語ったとあった。 

 

 宇部市内のビルに入居していた会社は、永守氏の7条件を社訓にしていたのだろうか。 

 

 実は、この会社は、宇部市の地元などで5店を展開する「太陽家具百貨店」のことだ。 

 

 今回の貼り紙について、同社の管理部は2月7日、戦後からスタートした本店が手狭になったため1994、5年にビルから移転した後、家具売り場だった場所にあったのではないかと取材に答えた。 

 

 移転後は、会社の書庫としてビルの一部を使っており、映画のロケは、売り場だった場所を貸して行われたという。店があった当時は、社訓が店に飾ってあったとしたうえで、こう話した。 

 

「今回の貼り紙が社訓だったのかについては分かりませんが、そのころはあったのかもしれません。移転後も社訓はありましたが、そのようなものはありません。現在は、社内で社訓が言われるようなこともないですね」 

 

 ジブリの鈴木氏が「これを飾っていた会社は潰れたんですよ」と話したとされることについては、どんな意図の発言だったのかは分からないが、鈴木氏が移転のことを聞いていなかった可能性はありそうだ。 

 

(J-CASTニュース編集部 野口博之) 

 

 

 
 

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