( 262316 ) 2025/02/08 17:58:10 0 00 トランプ大統領の就任式で顔をそろえた、テスラのイーロン・マスクCEO(右)ほか、ビッグテックの面々(写真:ブルームバーグ)
バブルが崩壊する。資本主義が終わる。そう来れば、その次はこの世が終わる。
滅亡論を唱えて、不安を煽るのは新興宗教の専売特許のように思われているが、現在、伝統的宗教と思われている多くの宗教でも、そのように主張されてきた。仏教の多くは、末法思想を持ち、それは源氏物語の中にも自然に出てくる。
ビットコインもアメリカ株もその他の株も、もちろん日本株も、今月あるいは来月に暴落するのではないか。資本主義は2030年から徐々に終わりを見せ始め、2050年には、現在の社会主義のように、過去のものであることが認識されているだろう。そして、人間社会の破綻は2050年までには明確になり、22世紀には、まったく別の形の世の中になっているだろう。
■日産自動車は生き残り策を失った
この世が終わるという現実感がないならば、実感のあるものから挙げていこう。
まず、日産自動車は生き残り策を失った。以前も書いたとおり、2050年には、ほとんどの自動車メーカーはなくなるだろうから、それが早まったにすぎないが、予想どおり、プライド優先で自滅の道を選んだ。
一方、ホンダはこれで少し寿命が延びたが、結局、トヨタ自動車の軍門に下る以外はないだろう。三菱自動車は、日産抜きでホンダと統合したいところだが、日産が許さないだろうから、これも寿命が早まってしまった。
ただし、もともと2050年には独立の会社ではいられないはずだから、終焉が早まった、加速しただけであり、むしろ早いうちに次の形に移るほうが、余力が残っている分、運がよかったともいえる。
ここで問題なのは、日産だけでなく、社会全体に危機感がないことだ。 日産にも足りないが、私が見たテレビ番組で、自動車業界のベテランアナリストが、この統合破談にとても驚いた、まるで予想できなかった、とコメントした。
ありえない。日産を抱え込んでしまえばホンダも自滅だから、機会があれば破談を期待していたに違いない。そもそも自動車業界は中国の新興勢がいる以上、既存のメーカーはほとんど生き残れないはずで、トヨタが依然伸びるとすれば、ほかのほとんどの日本メーカーの居場所はないことはだれの目にも明白なのに、その現実に向き合おうとしない。
自動車業界の衰退に鈍感ならば、金融市場のバブル崩壊目前の状況に鈍感なのもやむを得ないかもしれない。
■「暴落しない」と考えるほうがむしろ不思議
いつも「バブルだ」、と言っている私であるが、昨年末には「2025年は株もビットコインも経済も大暴落する」(2024年12月14日配信)で、「正確なタイミングはわからないが、バブルであることは100%確実、それも終盤であることも90%自信があるが、崩壊のタイミングだけは何とも言えない」という趣旨の記事を書いている。
今回はさらに踏み込んだわけだが、「2月または3月に暴落」と宣言してしまっては、外れることを承知のうえで書いているようなものだが、確率は50%以上あると思うし、もし今回しのいだとしても、2025年中、いや、2025年夏までには必ず暴落するだろう。
なぜ、そこまで自信があるか。私に言わせれば、これだけ世界は混乱しているのに、暴落しないと思えるほうが不思議である。理由は、前回書いた通りだが、まさに、トランプ就任で、やりたい放題、あまりに乱暴で、これが持続することはあり得ないし、いったん流れが変われば、大反動がくることは必至である。
整理しよう。世界の地政学リスクは低下しない。イスラエルやロシアに寄りすぎたアメリカのドナルド・トランプ大統領の今のスタンスでは、解決はむしろ遠のく。しかも、「反イスラエル」という怒りの爆発は、あらゆる合理性を超えて起こりうる。
乱発している「トランプ関税」についても、「これらはあくまで手段であり、ディール(取引)によって、不法移民対策など、あらゆるアメリカの自己都合を実現するためにしているのであり、経済への悪影響も限定的だ」と考えるのは、間違っている。
そもそも、こうした政策はプラスでなく、相手には恨みしか残らない。アラブ世界も、ウクライナも、他の欧州も、同じ感情を持つだろう。隣国のカナダ、メキシコに恨まれては、もう終わりだ。
もともと中南米の反米感情、勢力は強まっている。このままだと、アメリカは本質的に孤立し、トランプ大統領が退任した後の世界にも、永久的な溝として残るだろう。つまり、世界の分断、分裂は回復不可能どころか、加速し、「トランプ後」もそのモメンタム(勢い)は止まらない。これでは、投資は長期的に停滞するし、世界経済は確実に停滞する。
■巨大企業の傲慢さが世界を破綻に追い込む
「世界は不幸になっても、企業は成長する。格差は拡大するが資産市場は伸びる」、という考えも間違っている。
今回のトランプ政権の最大の懸念は、テスラのCEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク氏に象徴される、テックジャイアントおよび大富豪経営者の横暴である。
マスク氏のあからさまな横暴が、最後の暴落のきっかけとなる事件を起こす可能性が高いと思っているが、それ以前に、すべてテックジャイアント優先、巨大企業のビジネス優先で何が悪い、むしろそれが経済にとっていちばんよい、というこの経営者たちの傲慢さが、世界を破綻に追い込むのであり、その破綻のときの爆発力を高めるマグマが、いまや急激にたまっているところなのだ。
フランス革命と並べると疑問が増えてしまうかもしれないが、今は、社会の分断は加速し、深まり、不可逆的になっていることは間違いがない。
企業の論理が最優先で、社会で憧れられる存在が経営者、起業家であり、彼らが超大富豪になり、政治家やそのほかの人々を下に見るだけでなく、政治をも支配し、社会も政策も支配するようになる。
AIは企業の富のためであり、消費者や生活者からむしりとる道具として使われるとなると、マルクス思想的な「資本家による労働者の搾取」以上に、賃金労働者にならなくとも、生きているだけで大企業の餌食になるという社会になっているということである。さらに、政治が企業に支配される、それも喜んで支配されている現状では、この不可逆性を逆転する望みはゼロである。
実は、中国は、この政治と企業との主導権争いを一歩先に1978年以降行ってきた。
しかし、いわゆる西側では、それがもっと暗黙的に、政治が明示的に対決するチャンスがないまま、なし崩し的にすでに敗北しているのだ。
そして、中国も、その政治と企業の戦いの真っただ中だが、1978年から始まった壮大なバブルが、この数年で急激に崩壊のリスクが高まっており、いや崩壊がすでに現在進行中で、アメリカが崩れたときに、世界経済のショックアブソーバー的な役割を果たせる状況ではない。
それどころか、西側への輸出が減ってしまえば、中国経済はバブル崩壊が決定的になり、社会的な大変革がもう一度起こらざるを得ない状況になる。つまり、アメリカと中国のバブルが同時に崩壊し、さらに両方の社会構造までもが同時に窮地に陥るのだ。
■バブル、資本主義、社会の3つが同時に崩壊しつつある
これは、資本主義が減速して衰退する、資本主義の終焉プロセスにとどまらず、社会の危機になることを意味する。それは、不満と怒りのマグマがたまりすぎて、資本主義の崩壊ではすまなくなってしまっているということだ。
バブル、資本主義、社会の3つが同時に崩壊しつつある。そして、それが、今起きつつある気配は至る所にある。
まずバブルに関しては、トランプ関税で株価が右往左往する。あるいは、高々中国のDeep Seek(ディープシーク)のニュースごときで、AIや半導体関連株が暴落する。株価は乱高下を続けるが、上へ抜けることはない。些細なことで乱高下し、かつ頭を押さえられているというのはバブル崩壊寸前の典型的な兆候だ。
このなかで、静かに有力投資家たちは撤退しつつある。ビットコインですらそうだ。これだけビットコインに有利な政策の気配が打ち出され続けても、突き抜けずに、乱高下を続けている、ということは、暗号資産をこれまで推奨してきた人々が、静かにポジションを整理し続けている兆候に他ならない。リスク資産市場はすべて終わりだ。
そして、これだけトランプ大統領が横暴を働いても、それを阻止することで世界が団結するどころか、自分だけはその被害を免れたい、トランプ大統領に気に入られたいという行動を、企業だけでなく、すべての民主主義国の首脳も、そのアドバイザーたちも、メディアも、全員がとろうとしている。これは、民主主義の否定というより、良識ある人間としての行動規範をすべて失っているということだ。
現在のこのような社会を見れば、過去のすべての偉大な宗教家、教祖たちは、この世の終わりだと思うに違いない。やはり、実際に、この世の終わりが来ているのだ。
今回は、かなり情緒的な議論になったと思われるだろう。だが、目先の利害、局所的な合理性をなんとか見つけ出して、それにすがろうとしている人々、社会を見ていると、このくらい情緒的に扇動しなければ、人々は目を覚まさないのではないか、という危機感しかない(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が競馬論や週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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