( 262331 ) 2025/02/08 18:10:51 0 00 江藤拓農水大臣(C)日刊ゲンダイ
【経済ニュースの核心】
「農林中金という名前に恥ずべきようなことだと思っている。検証内容を尊重させていただき、農林中金に対してしっかり指導していきたい」
1月28日、農水省の有識者会議の報告書を受け取った江藤拓大臣はこう語気を強めた。同会議は、農林中金が証券運用で巨額な損失を発生させた問題を巡り、その原因と再発防止策について、昨年秋から検討を進めてきた。江藤農相の「農林中金という名前に恥ずべきようなこと」発言は、あまりに重い。
農林中金は米欧の金利上昇で外国債券の含み損が発生し、2025年3月期に1兆5000億円超の最終赤字になる見通しだ。会議では農林中金がメガバンクなど他の金融機関と比べ、なぜ多額の損失を計上するに至ったのか、リスク管理や意思決定のプロセスに焦点を当て、4回にわたり議論してきた。
報告書では、まず外債の評価損が膨らみ続けたことを受け、迅速な意思決定ができる組織を構築するよう提案。一般企業の取締役会に当たる理事会に外部の有識者が非常勤の外部理事として参加できるようにするため農林中金法の見直しなどを提言したほか、組織全体で専門性の高い外部の見識を導入することなどを検討するよう促している。農林中金には「兼職制限」があり、外部から非常勤理事を採用することができないため、現在7人の理事はいずれも農林中金からの内部昇格となっている。
農林中金は20兆円近く外国債券を保有しているが、会議の中で、「運用以外の収益源がない中、収益目標の未達につながる機動的な売却をためらわざるを得ず、債券の売り切りを選択できなかった」と農林中金から説明があったとされる。さらに、リスク管理と運用を担当する会議体の参加者が同一で、リスク部門によるチェックが十分に機能しなかった可能性があると指摘されている。
このため、一定以上評価損が拡大した場合には自動的に売買を行う損切りルールなど、相場急変時に機動的な対応ができる仕組みをつくることが必要と説いている。
また、債券中心の金利リスクに偏りすぎた運用ポートフォリオを改善すべきとして、農業や食品産業への投融資を増やすことも求めた。農水省は農林中金法や関連制度の見直しを行い、早ければ25年中にも法改正案を国会に上程する予定だ。
農林中金は7日に発表した24年10~12月期決算は、純損益は1兆4145億円の赤字(前年同期は970億円の黒字)だった。
(小林佳樹/金融ジャーナリスト)
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