( 262426 )  2025/02/09 03:24:09  
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写真はイメージです(写真/Shutterstock) 

 

「うちのお風呂、1年半お湯替えてません!」というフレーズが、SNSで話題となった“マコモ湯”をご存じだろうか? 話題となった動画では、植物の「マコモ」を原料とする入浴剤を使用すれば、風呂の湯を替えなくても問題ないと紹介されている。SNSでは懐疑的な声も多いが、本当に大丈夫なのだろうか。その真相について「のぞみクリニック」院長で感染症などを専門とする筋野恵介医師に聞いた。 

 

話題となったマコモ湯の動画のなかでは、植物の「マコモ」が持つ発酵作用で雑菌の繁殖が抑えられるため、湯を頻繁に交換する必要がないと紹介されている。 

 

むしろ湯を替えないほうがデトックス効果がより期待でき、アトピー性皮膚炎や肌荒れに効果的などと真偽不明の効用がうたわれている。 

 

マコモ湯についてSNSでは「雑菌増えなくても古い角質や皮脂が底に溜まってそう」や「すごく臭そう(汗)」、「本当に大丈夫なの……?」など、その効能を疑問視する声であふれていた。 

 

「マコモ自体は悪いものではありません。マコモ菌の中にはビタミンや亜鉛、アミノ酸などの体にとって重要な栄養素、そして抗炎症作用があり、肌荒れなどに効果があるとされるアルンドインなどが含まれています。 

 

ただこうした効能は、例えば『ビタミンを摂取すると日焼けしにくくなる』といったような、あくまで“健康食品レベル”のものであるということは知っておくべきです」(「のぞみクリニック」院長・筋野恵介医師、以下同) 

 

またネットでは、アトピー性皮膚炎や高血圧以外にも、肝臓病や糖尿病などにも効果があるとの情報があるが、実際のところどうなのだろうか。 

 

「マコモ湯は直接肌に触れる部位に影響を及ぼすので、肝臓病や糖尿病といった内臓系の疾患にまで効果が期待できるかというと、その可能性は低いと思います。 

 

ただマコモは飲んでも問題ないとされていますので、内臓系の疾患をお持ちであれば、飲料として用いるほうがよいでしょう。 

 

ただ繰り返しにはなりますが、効果の実証はないので“改善の可能性がある”という程度の認識を持つことが大事です」 

 

 

マコモ自体は悪いものではないとのことだが、今回話題となったような「長期間湯を替えない」ということにはリスクがあると筋野医師は指摘する。 

 

「マコモ菌は増殖力が高く、他の菌の繁殖を防ぐと言われていますが、これについても科学的なエビデンスはないので注意が必要です。 

 

よって、皮膚に付着しているさまざまな常在菌が、お風呂の湯の中で雑菌として繁殖してしまうリスクがあるのです。 

 

マコモ菌以外の雑菌が増殖することは、体臭や衣類の臭いの原因になりますし、アトピーなどで体に傷がある場合は、化膿して悪化してしまう可能性もあります」 

 

筋野医師は「毎日湯を替えるなら、マコモ湯は問題ない」と言う。雑菌の増殖を防ぐと言われているマコモ菌だが、その情報を鵜呑みにするのは危険だということだ。 

 

マコモ以外にも、温泉施設などには「リウマチが治る湯」や「肩こりに効く湯」など、さまざまな効能をうたった湯が存在する。このような湯に浸かる際の注意点について、筋野医師はこう述べる。 

 

「治癒機能を持っているとされる湯は、一度浸かっただけで効果を感じることは極めて難しいでしょう。皮膚表面は角質層と皮脂からなる『肌バリア』によって守られているため、皮膚から何かしらの成分を直接吸収することはめったにないんです。 

 

そうした肌バリアの奥へ浸透させるには、毎日繰り返すことが重要です。化粧水は毎日使用することで効果が実感できると思いますが、お風呂も同じで、毎日浸かることで湯の効能を徐々に実感できることがあります」 

 

マコモ湯をはじめ、その効能を最大限に実感するならば、清潔な湯に毎日浸かるということが大事なのだろう。 

 

――結論、マコモ湯自体は悪いものではないということだった。ただ、ネットの情報を鵜呑みにすることは危険で、自身で正しい入浴方法を身に付けなければ思わぬリスクに巻き込まれてしまうかもしれない。 

 

取材・文/瑠璃光丸凪(A4studio) 

 

瑠璃光丸凪/A4studio 

 

 

 
 

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