( 262696 )  2025/02/09 15:31:28  
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不登校離職とは 

 

 不登校の児童数は年々増加。令和5年度は小学校で47人に1人、中学校で15人に1人が不登校という状況だ。 

 

不登校児童生徒数の推移 

 

 学年別の不登校児童の生徒数を見ると、学年が上がるごとに不登校の児童が増えて、中学3年生は8万人を超えている。 

 

学年別不登校児童生徒数 

 

 さらに、不登校の子どもが増えるとともに、その親たちが仕事を辞める「不登校離職」の増加も問題になっている。 

 

 不登校の子どもやその家族をサポートするNPO法人キーデザイン代表理事の土橋優平氏に現状を聞いた。 

 

NPO法人キーデザイン代表理事の土橋優平氏 

 

 年々増加の一途を辿る子どもの不登校。その負担は保護者たちにも重くのしかかっている。 

 

 2024年11月にキーデザインが不登校の子どもをもつ保護者を対象に実施したアンケートによると、8割以上の保護者が仕事に影響があったと回答し、およそ4人に1人が仕事を辞めたと答えた(アンケート有効数230)。 

 

「小さい子だと家に1人で何をするのかわからないのはもちろんだが、自傷行為をしたり『消えたい』といった気持ちを発している子どもたちの場合、親がいない間にどこから何を取り出して何をするかわからないところがある」(土橋氏、以下同) 

 

 中には職場の理解が得られずに辞めたという人も… 

 

「人によっては『親の責任』とか、『子育てを間違えていたのでは』という言葉をかけられることもある。それによって親御さんも追い詰められてしまう、職場の中でも孤立してしまうこともあり、離職につながっている」 

 

 また、仕事を辞めたことで社会とのつながりが絶たれ、孤立してしまうケースがあると土橋氏は指摘する。 

 

「『離職して今しんどい』というお母さん方から聞く声として多いのは『普通に大人と会話がしたい』ということ。気持ちが不安定だったり、1日の生活リズムが崩れている子どもとずっと一緒にいて、一つの言葉かけにも子どもの言動にも気を使いながらになる。職場にいて、大人と会ってつながっている、話が出来ているだけでも大きな意味があると感じている」 

 

 家計への影響も大きな問題の一つだ。キーデザインが行った別のアンケートでは、4割近くが「収入が減った」「ゼロになった」と回答。およそ3割の家庭では収入が月8万円以上減ったと答えている。 

 

「支出も増える。例えば給食費であれば月4000~6000円だが、学校に行かなくなるので、家で用意しなきゃいけない。また、水道光熱費も家にいるようになるので、月々数千円上がることも」 

 

 こうした中、土橋氏は「時短勤務」や「休職」といった会社を辞めずにすむような職場環境の整備や、相談窓口など“第三者とのつながり”の確保など不登校の子を持つ親への社会全体の理解が必要だと訴える。 

 

「『こういう制度があるよ、使えるよ』という会社の風土があれば、仕事を継続しながら、大人とつながりながら子どものことを見守っていける環境が整えられるし、選択肢も用意できる。“選べる環境”を企業の中で整えられるといい」 

 

 

不登校の子の親が仕事を辞めた理由 

 

 NPO法人キーデザインによる「不登校の親が仕事を辞めた理由」についてのアンケート調査によると、仕事を辞めた理由は「子どものサポートに集中するため=70.1%」「子どもを1人で家にいさせることへの不安=67.2%」と続く(有効数230)。 

 

 不登校離職について、日本大学危機管理学部教授/東京科学大学特任教授の西田亮介氏は「不登校の子が数十万人単位であることに対して、(不登校の子どもをもつ保護者を対象にしたアンケートは)ややデータが小さく、不登校の程度に大きなばらつきがあることを考えてると、これだけで判断していいかやや心許ない。だが、子どもの状態と特に女性における親のキャリアにおいて、両者が深刻に関係していることは子育て全般にも言えそうだ」と指摘した。 

 

 相談できる環境については「特に地方において、乏しいこともあるかもしれない。子育て支援の社会的・政策的な介入は自治体が行うことが多いが、自治体に裁量性や余裕がある東京のような財政が豊かな大きい自治体において、独自に支援が上乗せされていたりすることがある。対して、小さな自治体ではそのようなものがなく、余計に孤立してしまったり、悩んでしまう状況はあるかもしれない」と述べた。 

 

2人の小学生の子どもを持つTAMIさん 

 

 子どもの不登校を受けて離職した家庭の実情はどのようなものなのだろうか? 

 

「3年生のゴールデンウィーク明けぐらいからちょっと五月雨登校(学校に断続的に登校する状態)になった。夏を越えたあたりから結構休むことも増えてきて。秋になかなか(学校に)行けない状況になってしまった」 

 

 2人の小学生の子どもを持つTAMI(タミ)さん。上の子は、現在小学4年生。3年生のころから少しずつ学校に行けなくなり、不登校となった。小学1年生の下の子も行き渋りが酷くなっているという。 

 

 「学校まで歩いて10分ぐらいだが、行くのに1時間ぐらいかかるのが当たり前になってしまって。道を行ったり戻ったり、ずっと止まってみたり、『やっぱり行かない』って引き返したりとか…。理由は多分、子どもの言葉ではなかなか『これ』というものもなく、学校の先生と話す中でもわからなかった」(TAMIさん、以下同) 

 

 不登校になってしまった理由はTAMIさんにもわからなかったが、ある異変を感じていた。 

 

 「言葉数が少なくなったり、いろんなものに興味がある子だったが興味が狭まってしまった。また髪をかきむしったり、壁に頭を打ちつけたりとか、そういうことがあった」 

 

 仕事のスケジュールを調整し「付き添い登校」をするなど、なんとか学校へ行かせようと手を尽くすTAMIさんだったが… 

 

 「子どもがこんなにつらい思いをしている中で、無理やりではないが(学校へ)連れて行っていいんだろうかと自問自答する毎日が続いた。今こんなに苦しんでいる子どもを『このままなんとかなるか』と思ったら、ちょっと無理だと思った。(子どもの)側にいられるのは親しかないという思いがあって『これは子どもには時間をかける時だな』と」 

 

 わが子の“不登校”を受け入れ、少しでも寄り添うため「離職」を決断する。しかし… 

 

 「収入がなくなることがやっぱり頭にもあって。『この先どうなっていくんだろう』と不安しかなかった。子どものせいにはもちろんしたくないし、そうあるべきではないという気持ちはもちろんあるが、自分が積み上げてきたこととか、やりたかったことも関しては諦めなければいけなかった」 

 

 仕事を辞めるということはTAMIさんにとって大きな決断だったが、気持ちにゆとりができ、子どもと向き合う時間も増えていった。 

 

 「子どもに対して少し余裕をもって対応できるようになった。日中ちょっと外に出るようにするなどの“ゆとり”みたいなものは、もしかしたら子どもに伝わったのかな。向き合う時間が増えて、余裕がある対応ができたので、ちょっとずつ子どもも落ち着いたのか、周りの環境も落ち着いて(学校に)行くことができている」 

 

 そして、TAMIさん自身が持つ「不登校」に対する考え方にも変化が… 

 

 「親の私の世代からすると、学校に行けないってすごい大きなことで、『学校行ってないの大変だね』というネガティブなイメージが強い。自分が子どもを見ていて、すごく大変な思いをさせてしまったという思いもあって、『無理させないと気付けなかった』というのがどうなのかというのがある。『(不登校は)あることだよね』と少し浸透してくると少し楽になるんじゃないか」 

 

 

日本大学危機管理学部教授/東京科学大学特任教授の西田亮介氏 

 

 不登校の形も千差万別であり、対処も難しい。社会はどのように対応すべきなのだろうか? 

 

 西田氏は「ばらつきが大きな問題に対して、政策は一般的に『月あたりいくらまで補助します』といったかたちや、所得制限を課して支援をする際にも『0か1か』という紋切り型の基準が用いられがちだ。だが、グラジュアル(段階的)であればあるほど、作り込みが難しくなる。それから、公平性の観点もかかってくる。『どこまで手厚くするべきか』などとても難しい問題だ。そんな中でも、実際に支援がメニューとして選び、組み合わせたりして、支援を受けられるようにすることが求められている時代だろう」と述べた。 

 

 不登校などで困っている方は児童相談所や児童相談センター、児童家庭支援センターなどで18歳未満の子どもやそのご家族を対象として、子育て、しつけの悩み、発達障害、子どもの行動上の問題などについても相談をすることができる。 

(『ABEMAヒルズ』より) 

 

 

 
 

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