( 263834 )  2025/02/11 18:21:58  
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日本の財政は深刻な状況にあり、巨額の国債残高と人口減少による国力低下が懸念されています。

『持続不可能な財政』では、専門家がこの問題を解決するための提案を明らかにしています。

一方、少子化問題も深刻で、政府は子育て支援法を策定し、多額の予算を投じて対策に取り組んでいますが、財源の確保や歳出改革の課題も浮き彫りになっています。

次回では、高齢者よりも現役世代への負担が重い側面について検証される予定です。

(要約)

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photo by Getty Images 

 

我が国の財政運営は、このままではこの先、何かのきっかけで、いつ何どき、行き詰まってもおかしくない状態にすでに陥っている。しかも、1,104兆円(2024年度末の普通国債残高の見込み)という天文学的ともいえる借金の大きさと、歴史上かつて体験したことのない厳しい人口減少がもたらす国力の低下を鑑みれば、ついに「行き詰まった」ときに起こる事態は、我が国自身が第二次世界大戦の敗戦直後に経験した苛烈な国内債務調整に匹敵するものにならざるを得ない。 

 

静かに迫り来る財政危機を何とかして未然に回避し乗り切るために、私たちはいま何ができるのか。財政政策と中央銀行の金融政策に精通した日本総合研究所主席研究員の河村小百合氏と前参議院予算員会調査室長の藤井亮二氏が協力して取り組んだ『持続不可能な財政』では、危機的な状況にある日本の財政の現状と再建のための解決策を真っ正面から論じている。 

 

(*本記事は河村小百合+藤井亮二『持続不可能な財政』から抜粋・再編集したものです) 

 

少子化の流れに歯止めがかかりません。少子化対策は1990年の「1.57ショック」をきっかけに政策課題に浮上しました。政府による1994年12月のエンゼルプランの策定や2003年の少子化社会対策基本法の施行にもかかわらず子どもの数は減少を続けています。2023年の合計特殊出生率は1.20で過去最低を更新し、東京都では史上初めて1.0を切る0.99まで低下しました。団塊の世代が生まれた頃は年間270万人近い出生数でしたが、2023年はその4分の1の73万人しか子どもが生まれていません。国立社会保障・人口問題研究所は現在1億2500万人の人口が、2070年には8024万人になると推計しています。 

 

政府は2012年に「子ども・子育て支援法」などを成立させました。これにより子ども・子育て支援新制度を動かし、幼児教育や保育、地域の子育て支援に本格的に乗り出しています。2024年度予算では3.7兆円の事業を実施しています。 

 

岸田前総理は2023年1月4日の記者会見で「異次元の少子化対策」への取り組みを表明しました。その年の12月22日にはこども未来戦略を閣議決定し、追加の事業規模3.6兆円の「こども・子育て支援加速化プラン」をまとめて今後3年間に少子化対策に集中的に取り組む方針を示しています。 

 

加速化プランは児童手当を拡充して、支給期間を中学生から高校生にまで広げるほか所得制限を撤廃するなどの経済的支援を強化するとしています。また両親の育児休業の取得や時短勤務を支援し、自営業やフリーランスの育児期間中の保険料の免除を創設すること、「こども誰でも通園制度」の創設などを盛り込んだ子ども・子育て支援法の改正が行われました。 

 

 

2024年度予算の子ども・子育て支援新制度の事業に相当する資金が、今後3年間で追加されます。その財源はどうなっているのでしょう。実は明確な財源は示されていません。 

 

3.6兆円は既定予算を活用することで1.5兆円、社会保障の歳出改革によって1.1兆円、子ども・子育て支援金を創設することによって1兆円を確保するとされています。 

 

まず既定予算の活用ではインボイス制度の導入による増収や高等教育の修学支援の余った予算や子ども・子育て拠出金を財源に回します。進学率が低迷して利用が伸びなかったり、企業だけに負担を求める拠出金を持ってくることは、安定した財源の確保や公平性の点から問題があります。 

 

社会保障の歳出改革で1.1兆円と言いますが、これまでも厳しい財政状況の中で多くの歳出改革を行ってきたはずです。新たな歳出改革をすると言うものの具体的な内容は示されていません。本当に実現できるのでしょうか。もし歳出改革ができるのなら、どうしてこれまで取り組んでこなかったのでしょう。 

 

次回〈なぜ高齢者より現役世代の負担が重いのか? 「異次元の少子化対策」が抱える矛盾〉では、現役世代の負担を軽減するはずの「少子化対策」でも、高齢者層が負担が少ないという「不都合な真実」について解説します。 

 

河村 小百合、藤井亮二 

 

 

 
 

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