( 264656 ) 2025/02/13 14:52:59 0 00 問われる情報管理体制
斎藤元彦・兵庫県知事が再選された昨年11月の知事選では、立花孝志NHK党党首が街頭演説やSNSで、ある「文書」の内容を拡散し、これが斎藤氏の大きな力になったとみられている。この文書は、斎藤氏の一連の疑惑を追及していた県会議員らを「知事追い落とし工作の黒幕」と非難した内容のもので、これを立花氏が受け取った場に、知事の疑惑を調べる百条委の副委員長である維新・岸口実県議が同席していたことがわかった。いったい選挙の裏で何が行なわれていたのか。
この文書のなかで名指しで非難された竹内英明元県議は、県議会特別調査委員会(百条委)で疑惑解明の先頭に立っていたが、選挙中に激化したSNSでの誹謗中傷や電話、メールによる非難に耐えられず、「家族を守る」として選挙翌日の昨年11月18日に県議を辞職した。
竹内氏に対してはその後も自宅前にゴミがばらまかれるなどの攻撃が続き、竹内氏は今年1月に急死した。
同僚県議は「竹内さんへのデマ交じりの誹謗中傷は知事選に立花氏が立候補した後、激化した」と証言しており、文書の内容を立花氏が拡散したことが影響した可能性がある。
問題の文書は、立花氏が昨年11月5日にYouTubeで一部を黒塗りにして公開した。当時立花氏は「斎藤さんを応援する」と言って知事選に出馬していた立候補者の状態にあった。
文書の内容は、斎藤知事のパワハラや公金不正支出疑惑を告発した元西播磨県民局長・Aさん(60)が昨年7月に自死したことを挙げ、”百条委メンバーの県議がマスコミへのリークなどでAさんの自死を斎藤知事の責任に見えるように印象操作している”とするものだ。
その「黒幕」として竹内氏を筆頭に4人の県議の名を挙げ、「知事失職が彼らの最終的な狙い」と強調している。
さらに「元県民局長(Aさん)は過去10年以上にわたって複数の職員と不倫」「証拠はすべて公用パソコンにあり」などと書かれている。
公用パソコンとは、匿名の告発者を特定せよとの斎藤知事の指示を受けた当時の片山安孝副知事(昨年7月に辞職)がAさんから取り上げた、県公用パソコンを指すとみられる。
「立花氏が選挙中に街頭演説で話し、YouTube動画で拡散させた話は文書の記述に沿ったもので、これをさらにふくらませた内容のものもありました」(地元記者)
立花氏は昨年11月5日のYouTubeで、「11月1日に神戸のホテルオークラに片山副知事が待っているということで行ったんですが、ここにいた人が副知事じゃなかったんですよ。県議会議員だったと。この県議会議員に、これ(文書)をもらって来ました。この人が『片山さんの手紙を渡してきてくれと言われた』ということで」と説明。その後、文書を受け取った相手は岸口氏であることを何度か示唆していた。
そして2月7日の記者会見で、この問題を取材してきたTBS「報道特集」から寄せられた質問状を読み上げ、それに対する回答として、
「これを私に渡してくれたのは、兵庫県の百条委員会の副委員長の岸口さんという方です。これについては特段秘匿する必要性がないので。岸口議員から頂きました。 きょう、仲介の人経由で(岸口氏から)電話をもらいましたけど、岸口さんに『嘘をついてくれ』と言われました」
と述べたのだ。
これについて当の岸口氏は10日になって記者団の質問に答え、立花氏と会ったことを認めながら「(文書は)私がお渡ししたものではないです」と主張した。
ところが岸口氏は「立花さんが誤解をしている。“捉え方”だと思う」とも言い始めた。捉え方、という言い回しに違和感を持った報道陣から、「その場で誰かが渡したのか?」との質問が出され、それに岸口氏は「そこは民間の方に迷惑がかかる」とだけ述べた。
「立花氏と岸口氏のどちらが本当のことを言っているのか、もしくは、どちらも少しずつ事実でないことを言っているのか、現状ではわかりません。
それでも、岸口氏が同行者とともに立花氏と会い、その場で問題の文書が立花氏に渡ったという点では、双方の説明は食い違っていません。渡した当人が岸口氏であれ同行者であれ、その面談の場で立花氏に文書が渡ったことを岸口氏は否定しなかったのです」(地元メディア関係者)
斎藤知事の疑惑には根拠があることが百条委の調査で選挙前には判明しており、Aさんの人間性を攻撃した記述も事実と違うため、文書の内容の流布は百条委内部情報の“情報漏洩”とは言えない。しかし、岸口氏が事実上認めている内容だけでも重大な問題をはらんでいると県関係者は指摘する。
「Aさんの尊厳を貶め、告発内容を調べる百条委メンバーへの攻撃をそそのかした文書が立花氏に渡されたことは、拡散を図る以外の目的はありません。その過程に当の百条委副委員長が関与していたとなれば、委員会だけでなく、県議会の信用もなくなります」(同関係者)
立花氏は昨年11月のYouTubeで、
「もう情報いらないんです。十分でしょ。もうここからは法律の解釈とか、あとは拡散していくことになっていきますので、どんどん拡散していく」
と発言。
選挙でその言葉を実行する中で、候補者ポスターを新たな内容のものに作り替えたりもしている。
その2枚目のポスターでは、
「実は、自殺した元県民局長(Aさん)は10年間で10名以上もの女性県職員と不適切な関係を結んでおり、不同意性交等罪が発覚することを恐れての自殺だと思われる」
などと根拠のない主張もしたが、これを立花氏は「岸口さんからの情報を基にこれは確信したので、ポスターを別バージョン作ったり」と発言している。
「岸口氏は維新県議団の団長も務めていましたが、昨年12月13日付で辞任しています。維新が知事選で斎藤氏以外の候補者に出馬を求め、その候補者が大敗したことなどの責任を取った、と維新関係者はメディアに説明していました。
しかし斎藤さんを応援していた立花さんに材料を提供したか、少なくともその場に居合わせた岸口氏の行動は、斎藤さんの支援を意味します。維新が事実上の自前候補を擁立した裏で、県議団のトップが斎藤さんを支援していたとそれば、それはどういった思惑だったのでしょうか」(地元メディア関係者)
斎藤知事の疑惑に絡んでは、秘密会で行なわれた昨年10月25日の百条委で片山元副知事が話した音声を録音したものが漏洩し、これも立花氏が入手し公開。立花氏は、この音声も岸口氏とは別の現職県議から入手したと説明してきた。
さらに立花氏はAさんの県公用パソコンに入っていた個人的なデータだとするファイルの一覧も選挙後に公開し、自身の情報収集力を誇示している。
個人情報はダダ洩れになり、根拠不明な怪文書がやり取りされる場には県議会調査委員会の副委員長が立ち会った――。情報の扱いでも、兵庫県と県議会への信頼は失われている。
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取材・文 集英社オンライン編集部ニュース班
集英社オンライン編集部ニュース班
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