( 264711 )  2025/02/13 15:58:05  
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報道陣にこたえる斎藤元彦知事 

 

 昨年11月の兵庫県知事選で再当選した斎藤元彦知事の選挙戦をめぐる疑惑への捜査が、急展開で動き始めた。神戸地検と兵庫県警は2月7日、PR会社「merchu(メルチュ)」(兵庫県西宮市)の事務所などを公職選挙法違反容疑で捜索した。 

 

 この日、「merchuにガサが入る」という情報がメディアに広がったのは午前10時過ぎ。昼前にはmerchuがあるビルや、近くにある同社の折田楓社長の自宅前に報道陣が集まった。だが、捜査員や捜査車両の姿はなく、すでに強制捜査は終わっていたようだ。 

 

 疑惑の発端は、県議会の不信任決議を受けて失職した斎藤知事が11月17日の知事選で再選を果たした3日後、折田社長がブログサイトnoteに、斎藤陣営の「SNS運用や広報全般を手掛けた」などという内容を記したことだった。斎藤陣営からmerchu側には71万5000円が支払われたが、公選法で認められていないSNS展開など選挙運動の対価として支払われたのではないかという疑いが指摘された。 

 

 疑惑に対して斎藤知事側はmerchuへの支払いはポスター制作など公選法で認められた成果物の対価であり、SNS運用など広報戦略は折田社長個人のボランティアのため無償で、「法に抵触するような行為はしていない」と説明していた。 

 

 しかし、元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士と、神戸学院大学の上脇博之教授は広報やSNS戦略などの業務の対価として支払われた疑いが強いとして、12月に公選法違反(買収、被買収)の疑いで斎藤知事と折田社長に対する告発状を神戸地検と兵庫県警に送付。告発状は受理され、捜査が進められていた。 

 

「折田氏側にはすでに、任意の事情聴取は始まっており、応じている。以前からパソコン、スマートフォンなどSNS展開に関連した資料の提出も合わせて求めていた。しかし、一部についてこちらの要求に応じないので、証拠隠滅の恐れもあって、強制捜査となった」(捜査関係者) 

 

 

■斎藤陣営の広報担当者が「SNSはメルチュさんに」 

 

 斎藤知事陣営の広報担当者から、「merchuにSNS監修を依頼した」と聞いていた、と明かしたのは神戸市の上原みなみ市議。自身のYouTubeに動画を投稿し、選挙前に知人のAさんの紹介で斎藤知事に直接会った際、こんなやりとりがあったと話した。 

 

「動画の撮影や編集をお手伝いできると伝えました。すると『動画編集できるスタッフがいないので助かります』といわれ、試しに撮影してほしいと一本の動画を作りました」 

 

 だが、結局、手伝わなくていいことになったという。 

 

「斎藤知事の広報担当者のK氏から、『SNS監修はメルチュさんにお願いする形となりました』というLINEが届きました」 

 

 AERA dot.編集部が入手したLINEの文面にも、同様の文言が並んでいる。 

 

■スマートフォンの提出を拒んだため強制捜査? 

 

 上原市議を紹介したAさんは兵庫県に出入りする業者で、6年前から斎藤知事を知っているという。今回の知事選で斎藤知事に、「公職選挙法とか、詳しい人を入れたほうがいい」とアドバイスして、上原市議を紹介したという。 

 

 Aさんはこう話す。 

 

「私の聞いている範囲ですが、折田氏は斎藤知事の広報責任者のK氏が紹介したそうです。私も別の選挙を手伝ったことがありますが、折田氏がnoteで書いたような舞台裏を明かすことはまずありません。折田氏が修正、削除する前のnoteの内容は、真実に近いと思っています」 

 

 通常、公選法違反事件は警察が捜査することが一般的だ。だが、今回は、兵庫県警の「上司」ともいえる斎藤知事が被告発人となっているため、神戸地検にも告発状が送られた。 

 

 告発をした上脇教授はこう話す。 

 

「兵庫県警だけでなく神戸地検まで一緒にガサに及んだということは、立件に向かって捜査が進んでいると考えています。スマートフォンの任意提出を折田氏が拒んだので強制捜査になったという報道がありました。事実であれば、他の証拠は提出しているのでしょうから、よほど知られたくないことがあったように思えます。斎藤知事は折田さんの会社に自ら出向いて、SNS展開を依頼している。まわりが勝手にやったという理屈は通らない。私や郷原弁護士は折田氏に厳罰を問うているのではない。斎藤知事をしっかり捜査してほしいと告発した。折田氏には全面的な捜査協力を望みます」 

 

 

■優勝パレード疑惑捜査も神戸地検で 

 

 斎藤知事は、折田氏の会社の強制捜査後、報道陣の取材に応じ、 

「公職選挙法違反のようなことはない」 

 と繰り返し語っている。 

 

 斎藤知事は、昨年3月に元県民局長が「内部告発」した内容の一つである「阪神とオリックスの優勝パレード開催時の寄付を集めるため金融機関の補助金を増額させた」という疑惑についても昨年10月に刑事告発されている。 

 

 告発した東京都の男性によれば、 

 

「告発状は大阪地検特捜部に提出した。1月末に告発状が回付されて神戸地検に担当が代わったと通知があった」 

 

 といい、神戸地検で同時に捜査が進んでいる模様だ。 

 

 疑惑が解明されることを期待したい。 

 

(AERA dot.編集部・今西憲之) 

 

今西憲之 

 

 

 
 

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