( 264731 ) 2025/02/13 16:22:12 0 00 セブン-イレブンは1月27日から順次、おにぎりや弁当の一部を値上げした。“コンビニめし”の中でも最も安いはずの「塩むすび」も、116円から138円になったが、
「このままでは、塩だけのおにぎりがいずれ180円になってもおかしくない」
そう嘆くのは、セブン加盟店の元店長Aさんだ。
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セブン&アイHDの専務でもある永松氏
2年前まで長く店長を務めてきたAさん。“コンビニの父”鈴木敏文氏(92)が2016年にセブン&アイHDの会長を退任した時が転機だったと振り返る。
「鈴木さんが退任する前と後とで、現場レベルでも『何これ』と思うほど商品が変わった。“上げ底”が始まったんです」(同前)
セブンの弁当が上げ底で、実際よりも中身を多く見せることで実質的な値上げをしているのではという指摘は、ここ数年SNSを中心に多くみられる。
「 文春から上げ底疑惑を問われ、永松文彦社長(68)は『そんなアコギなことはできない』と答えていました が、実際は様々なアコギな問題があります。新製品として納品されたものがパッケージや宣伝用写真と異なり、上げ底のようになっていることは度々あった。他にもおでんのちくわぶが年々小さくなったり、弁当の米も薄〜く敷かれていたり……」(同前)
Aさんは、弁当が写る2枚の写真を取り出した。
「いずれも、21年1月に販売していた『たっぷりマヨのピリ辛チキン&鶏そぼろ』弁当です(現在は販売終了)。1枚は、納品前に確認できる宣伝用写真。もう1枚は、実際に店頭に並んでいたものです。現物は、宣伝用写真では緑の“バラン”で隠れていた部分に鶏と卵のそぼろが敷かれておらず、美味しそうにも見えませんでした」(同前)
確かに彩りが悪く、「これじゃ肉を節約しすぎじゃないか」とツッコミたくなる。
「こういう商品を並べておくこと自体がお客様の不信を招くと担当の社員に相談しましたが、『じゃあそれ返品して下さい』で終わってしまう。で、また同じような商品が定期的に“リニューアル”と称して出てくる。もう新商品は発注しないようにしていたんですが、すると本部から目をつけられるそうです」(同前)
Aさんによれば、新規店舗開店や契約更新を狙うオーナーは新商品を多く発注すれば本部からの評価が高くなると考え、本部イチオシの商品を大量に発注する傾向にあるのだという。
「例えば、話題の『お店で揚げたドーナツ』。揚げるまでは要冷凍ですが、あるオーナーは『本部が力を入れている商品だから』と冷凍庫に入りきらないほど発注し、冷蔵庫に保管していました。しかも、あのドーナツは、他の『揚げ鶏』や『ななチキ』と同じフライヤーで揚げている。本来油を替えるべきですが、最近はコンビニ店員の仕事が増えすぎて清掃の手が回らず、店舗によってはフライヤーを掃除していないところもあると聞きます。チキンの匂いがするドーナツもありましたね」(同前)
なぜ、こうした状況が放置されているのか。
「諸悪の根源は、加盟店側に著しく不利な“コンビニ会計”にあります」(同前)
単純化すると、セブンの場合、加盟店の総売上利益の56〜76%が本部に吸い上げられるシステムだ。全く同じ条件とは限らないが、小誌の取材では、ローソン(45〜70%)やファミリーマート(49〜69%)と比べてもセブンはこの割合が大きい。他方でセブンの場合、廃棄ロスは逆に本部が15%、加盟店側が85%負担する。
「つまり、利益が出ても大半を本部が搾取する一方で、売れ残りが出ると加盟店が余計に負担しないといけない仕組みです。1個でも沢山売りたい本部側はより多くの発注を求める。契約を解除されたくない加盟店側はこれに従うほかないのです」(コンビニ業界に詳しい愛知大の木村義和教授)
トップはどう受け止めるのか。値上げ前日の1月26日、ゴルフ練習場で小一時間ほどの打ちっ放しを終えた永松氏を直撃した。
――明日からまた値上げに。
「ああ、ああ」
――ドーナツは、揚げ鶏などと一緒のフライヤーを?
「いや、会社に来た時にきっちりお話ししますから」
――コンビニ会計に問題が。
「別に、昨日今日システム変えたわけじゃない。また……、会社に来たらきっちり説明しますから」
セブン広報に見解を尋ねたところ、上げ底弁当やたっぷりマヨ弁当については「今後も皆さまからの様々なご意見、ご指摘を、さらなる改善に活かしてまいります」、ドーナツについては「加盟店に向けてマニュアルを配布し、調理における注意点(油槽を分ける、冷凍保存の徹底等)などをご案内しております」、コンビニ会計については「時代の変化や加盟店の置かれている経営環境の変化に併せて、これまでもインセンティブチャージの変更など制度変更は行っております」「新商品の導入状況によって、契約更新の有無および複数店出店が決定されることはありません」などとした。
業績悪化で1人負けと称されるセブン。上げ底しても、凋落は底なし――か。
「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年2月6日号
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