( 264801 )  2025/02/13 17:40:04  
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 最近やたらと耳にする「残価設定ローン」。通常ローンに比べ、どっちがいいのか?また、「あんなに若いのに、どうしてこんな高いクルマを買えるのか?」とビックリすることも多い。そこで、残価設定ローンを徹底研究! 

 

文:渡辺陽一郎/写真:ベストカーWeb、Adobe Stock 

 

 現在、残価設定ローンの利用率が高くなっているという。販売店では「新車を購入するお客様の約半数が残価設定ローンを利用する。価格の高い車種では、7割前後に達することもある」という。 

 

 残価設定ローンとは、購入時に数年後の残価(残存価値)を設定して、残価を除いた金額を分割返済するローンだ。例えば3年後の残価が新車価格の45%であれば、残りの55%を3年間で返済する。 

 

 返済期間を終えても、車両は自分の所有にならないが、月々の返済額は安く抑えられる。そして返済期間満了時には、車両を返却する、残価を支払って買い取る、改めてローンを組んで返済を続けるという選択の可能なタイプが多い。 

 

 日本の平均所得は、過去30年ほどの間にわたり伸び悩むが、クルマの価格は15年前の1.2〜1.4倍に高まった。その代わり衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備、運転支援機能、燃費、走行安定性などが大幅に向上したが、値上げによって新車の購入が困難になってきた。残価設定ローンは、月々の返済額が少なく、クルマの購入を容易にするために高い人気を得た。 

 

 残価設定ローンは、メーカーや販売会社にとって都合が良い。契約から3〜5年を経て返済期間が満了した時、ユーザーに対して車両の返却と残価設定ローンを使った新車の購入を改めて提案できるからだ。そうなれば新車の売れ行きが増えて、返済期間を終えた上質な車両も入手できるため、中古車販売部門も活性化する。 

 

 そこでホンダは、2025年2月上旬現在、一部の車種の残価設定ローンに低金利を適用している。通常の金利は年率4.3%だが、WR-VとZR-Vは年率0.9%、フィットとヴェゼルは年率1.9%だ。これらの低金利が適用されると、月々の返済額は一層安くなる。 

 

 例えば3年間の残価設定ローンを低金利で組み、返済期間満了時に再びローンを組んで全額を返済しようとすると、再ローンでは通常金利が適用されて返済額が増えることもある。 

 

 多くのユーザーは、今までのクルマに乗り続けて返済額が増えるなら、低金利の残価設定ローンで新車を契約したいと考えるだろう。残価設定ローンでは、金利も乗り替えを促す仕組みになっている。 

 

 月々の返済額を抑えられる残価設定ローンに低金利まで組み合わせると、中級グレードでも上級でも、返済額にはあまり差が生じない。「返済額の違いがこの程度なら、上級グレードにしようか」と思わせる。残価設定ローンを使うと上級グレードに誘いやすいため、メーカーや販売会社はますます力を入れるのだ。 

 

 このようなメーカーや販売会社の狙いがわかると、残価設定ローンのトクする攻め方も見えてくる。まずは残価の高い車種を選ぶことだ。残価設定ローンは、残価を除いた金額を分割返済するから、残価が高ければ月々の返済額を安く抑えられる。 

 

 例えばヤリスクロスハイブリッドZ(280万9000円)の価格は、ヤリスハイブリッドZ(249万6000円)よりも31万3000円高い。ところが5年間の残価設定ローンを均等払いで利用すると、月々の返済額はヤリスが4万600円でヤリスクロスは4万1300円だ。 

 

 車両価格はヤリスクロスが31万3000円高いのに、月々の返済額はほぼ同額になる。ヤリスの5年後の残価は新車価格の26%だが、ヤリスクロスは37%と高いために返済額を抑えられた。 

 

 

 高価格車では、この傾向が顕著になる。例えばスカイラインGTタイプSP(514万9100円)は、5年間の均等払いで、月々の返済額が7万5800円だ。 

 

 それがアルファードハイブリッドX(510万円)は、価格は同程度なのに、月々の返済額は5万6600円まで下がる。トライトンGSR(540万1000円)は、価格がスカイラインに比べて約25万円高いのに、月々の返済額は5万3200円に収まる。 

 

 このような差が生じる理由は、5年後の残価の違いだ。スカイラインの残価は新車価格の33%だが、アルファードは53%、トライトンは57%に達する。そのためにトライトンの新車価格はスカイラインより約25万円高いのに、月々の返済額は2万円以上安くなる。返済額を比率に換算すると、トライトンはスカイラインの70%で済むのだ。 

 

 そして契約期間が満了したら、残価を支払って買い取らずに車両を返却する。高い残価を支払うと、月々の返済額を抑えたメリットが帳消しになるからだ。 

 

 残価の高いクルマは、メーカーのホームページに設定された「見積りシミュレーション」や「オンライン見積り」を使うと見つけやすい。ホームページにアクセスしたら、残価設定ローンを選び、車種、グレード、支払い回数などを打ち込むと支払いパターンが表で示される。この中に「最終回支払い額」として表記される金額が残価だ。 

 

 最終回支払い額(残価)÷車両本体価格」で示される残価率は、一般的には3年契約が40〜45%、5年契約は25〜35%になる。それが残価率の高い車種では、3年後が50〜55%、5年後が35〜45%くらいに高まる。その分だけ月々の返済額は安くなる。 

 

 トップ水準の車種は、3年後の残価率が60〜70%、5年後が55〜60%といった数値だ。トップ水準の車種は一部の高価格車に限られるが、3年後が50〜55%、5年後が35〜45%の車種は相応に見られる。 

 

 先に挙げたヤリスクロスなどだ。従って残価設定ローンを利用するなら、残価率が3年後で50%以上、5年後でも35%以上の車種を選ぶと良い。 

 

 残価設定ローンで注意すべきは、残価率の高い車種になると、高価なクルマに乗りながら返済がなかなか進まないことだ。言い換えれば車両を返却するまで、常に高い債務を負っている。 

 

 追突事故の被害を受けて車両に甚大な損傷が生じると、事故歴になり、車両を返却する時に精算が生じることもある。加害車両の対物賠償保険を使っても、事故歴に基づく精算まではカバーされない。 

 

 走行距離が過剰に増えた場合なども同様だ。残価設定ローンにはリスクも伴うため、クルマを借りている感覚で大切に使うことが求められる。 

 

 

 
 

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