( 264816 )  2025/02/13 17:56:29  
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日本は“AI覇権”握れる?進むべき道は? 

 

 彗星のごとく現れた、中国発の生成AI「DeepSeek」。高性能、かつ低コストで開発され、ChatGPTの強力なライバルとしてAI業界で大きな注目を浴びている。ただ、個人情報の流出や、オープンAIから大量のデータを不正入手した可能性などの疑惑が浮上。イタリアやオーストラリアなど、規制に動く国が出てきていて、日本でも各省庁での使用を控えるよう注意喚起を行った。 

 

 デジタル、サイバー分野の趨勢が、国の安全・覇権を左右する時代。SNSでは、「先進国の日本がAI分野では後進国」「政府はもっと本気で取り組むべき」との声があがるが、AI分野で日本はどう勝負するのか。『ABEMA Prime』で、デジタル政策の司令塔・平将明デジタル大臣に聞いた。 

 

デジタル赤字は過去最大 

 

 共同通信によると、日本の“デジタル赤字”は過去最大で、2014年の2兆225億円から、2024年(速報値)は6兆4622億円に拡大している。 

 

 平氏は「このデジタル赤字は本当に重要なのか」との考えを述べる。「GAFAMといったプラットフォーマーと同じ企業を日本が作れるかというと、現実的ではない。であれば、それを活用してもっと付加価値を生み出せばいい。例えば、アプリケーションレイヤーやコンテンツで日本は強いので、そこで稼ぐのがひとつ。もうひとつはWEB2.0の世界ではあるが、ブロックチェーンはコンテンツレイヤーの価値を最大化できるので、そちらに振っていくこと」。 

 

 また、「大量のデータを読ませ、巨大なデータセンターを作るには桁が違うと思うが、日本は良質なデータを持っている」との見方も示す。「アメリカの巨大なAIと、日本のコンパクトながらも良質なデータを組み合わせて成果を出すというのは、すごく可能性があると思う。さらにAIは、文章や画像、動画を作ってくれる世界から、手足やボディを持つ世界にいくだろう。メカトロニクスやロボット、ヒューマノイドは日本が得意な分野なので、一定の役割を果たすのではないか」とした。 

 

 

中国初「DeepSeek」 

 

 ソフトバンクグループ代表取締役の孫正義氏は、2024年12月、就任前のトランプ氏と会談し、アメリカでの15兆円規模の投資計画を発表。1月21日には、ソフトバンクグループやOpenAIなど4社でAIのインフラ構築会社「スターゲート」を設立し、4年で約78兆円の投資を行う計画だと発表している。 

 

 AIの舞台はやはりアメリカなのか。平氏は「例えば、NTTやソフトバンクは独自でやっていて、日本にもいくつか方法はあると思う。そして、半導体をどこに頼るのか、データセンターをどこに置くのか。実は、日本に対してAI向けのデータセンターの投資が集まってきていて、私が知るところですでに3兆円だ。確かに、一番の拠点が米国であることは間違いないが、アジアの拠点が日本になる可能性は高い。レギュレーションの問題で、ヨーロッパは厳しい。日本も基本的に既存の法律に沿わないものは駄目だが、AIについてはEUみたいな法律にしなかった。巨大なAIがシンギュラリティ(技術的特異点)でどう発展するかわからない中で、情報共有し、ガイドラインでアジャイル(素早く)にやろうという方針だ。アメリカ、EUを離脱したイギリス、日本、あとはオーストラリアというイメージ」と語る。 

 

 そうした中、コラムニストの小原ブラス氏は「中国のDeepSeekは、アメリカしか持っていなかった核兵器をソ連が持ったぐらいの印象がある。“お前の国はアメリカのAIと中国のAI、どっちにするんだ?”と、政治に使われていくことを考えた。その中で、日本は独自のAIを作ることに投資するよりも、それを活用したり、教育したり、 知識を増やしていくことに力を入れたほうがいいのではないか」と投げかける。 

 

 これに平氏は、「“我々と価値観の違う中国製のAIが世界へ広がった時、何が起きるのか?”というイマジネーションは働かせないといけない。それはまさに経済安全保障の問題になる。EUはまだAIが怖いという意識がけっこう強いが、日本はドラえもんの世界を通ってきていて、AIフレンドリーだ。“人間中心のAI”をずっと掲げているし、我々はしっかり言っていくべき。日本は圧倒的な労働者不足、さらに悪化していくだろう中で、AI実装の成功例をいっぱい作り、社会の課題を解決していくというのが役割だと思う」と述べた。 

 

 

「地方創生2.0」×デジタル 

 

 政府『地方創生2.0』の5本柱の1つに、「デジタル・新技術の徹底活用」がある。ブロックチェーン、DX・GXの面的展開などによる地方経済の活性化、オンライン診療やオンデマンド交通、ドローン配送などの推進、デジタル公共財の普及やスタートアップ企業との連携などが示されている。 

 

 平氏は「10年前は難しかったが、今になってできることはけっこうある。地方はお祭りや食、イベントにしても、グローバル価格で提供していない。特にお祭りは、外国の人たちも価値を見出しているのに、みんなヒイヒイ言いながらタダで提供しているわけだ。日本はアナログの価値大国で、それをグローバル価格に引き直すように使えるのがブロックチェーンやNFT。お金持ちがいっぱい来ているニセコで、リフトに15分早く乗れる券をNFTで、5000円で発売した。NFTはいろいろな仕組みができるので、転売された時に事業者に還元するようにもできる。ニセコのパウダースノーもすばらしいが、日本全国にそういう体験価値はいくらでもある」と期待を寄せる。 

 

 ニセコでは、デジタル庁のデジタル認証アプリを活用した、デジタル町民証明サービス「Kutchan ID+」がスタートした。マイナンバーカードを活用、スマホで本人確認を行い、町内の店舗で割引や優待を提供している。 

 

 平氏は「あとはUX(ユーザー体験)で、別にブロックチェーンやNFTを感じる必要はない。インバウンド向けに価格を高くしましょうと言うと、“生活者はどうするんだ”となるが、バスの料金は基本的にインバウンドに合わせて、マイナンバーカードをかざせば住民価格で乗れる、などできる。僕が言いたいのは、“タダで売るのはやめましょう”と。僕らの世代は“良いものを安く”と教わり過ぎたが、“良いものは高く売りましょう”だ。生活者もいる中での設計は、デジタルじゃないとできない」とした。 

 

 その上で、デジタル庁の今後の見通しについて、「人材不足の中で行政を回していくには、デジタル化とAIしかない。デジタルガバメントとガバメントクラウドまで去年やったので、あとは政府AI。それを横から入れてセキュリティを高める、という段階までようやくきた。一気に加速する基盤が整ってきている」と述べた。(『ABEMA Prime』より) 

 

ABEMA TIMES編集部 

 

 

 
 

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