( 264981 )  2025/02/14 04:25:19  
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情報漏えい問題について記者の質問に答える兵庫県の斎藤元彦知事=神戸市中央区で2025年2月13日午後3時5分、中尾卓英撮影 

 

 兵庫県の斎藤元彦知事のパワーハラスメントなどの疑惑が文書で告発された問題で、告発者の私的情報が漏えいした可能性があるとして県が設置した二つの「第三者委員会」の透明性に疑問符が付いている。一部県議が「日本弁護士連合会(日弁連)のガイドラインに基づく第三者委でなく、議会への報告義務もない」と指摘。斎藤氏は13日の記者会見で、調査組織の構成などは明かさず「調査結果が出た段階で、出せるものを出したい」と述べた。 

 

 文書告発問題を巡って県は現在、三つの「第三者委」を設けている。一つは2024年9月に設置され、告発文が指摘したパワハラなど七つの疑惑と公益通報者保護の妥当性を調査している。弁護士3人で構成し3月末が報告の期限だ。設置に際し、県議も入った準備委の了承を得て外部委託した。初会合後、委員長の藤本久俊弁護士は「報告書を提出すれば記者会見で説明したい」と明言した。 

 

 対照的に、告発者である元県西播磨県民局長の私的情報が漏えいした疑惑に関する二つの調査組織について、県は設置要綱や委員数すら明らかにしていない。 

 

 うち一つは、元総務部長が元局長の私的情報を複数の県議らに漏らしたとされる疑惑が調査対象。斎藤氏が24年8月に外部の弁護士による調査を進めていることを明らかにした。県議会調査特別委員会(百条委)で、元総務部長は「守秘義務違反の嫌疑を受ける可能性がある」として証言を拒否。一方、県議2人は元総務部長から聞いたり、見せられたりしたと証言した。担当する県人事課は「漏えいが事実なら懲戒処分の対象。客観性と中立性を担保するため外部に委託した」と説明する。 

 

 もう一つは、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が24年11月、元局長の私的情報のデータだとして、動画サイトやX(ツイッター)で画像などを公開したケースを調査。県弁護士会に人選を依頼して1月に設置したとされるが、詳細は明らかにされていない。担当の県法務文書課は「調査内容を公表すれば(漏えいした人物の)懲戒処分の調査に支障が出る」としている。 

 

 情報漏えいに関する二つの調査について、斎藤氏は13日の会見で年度内に結論を得る見通しを示した。一方、「委員会ということは(委員は)複数いるのか」との問いに対して「会だと複数いるんじゃないですか」などとあいまいな答えに終始した。 

 

 自民党のある県議は「この異常事態に『調査を待つ』とリーダーシップを発揮しなくていいのか」と知事の姿勢に疑問を呈し、議会として元総務部長らを地方公務員法(守秘義務)違反容疑で刑事告発すべきだと主張する。 

 

 ◇「ガイドラインに沿う形での公表前提に」 

 

 同志社大の真山達志教授(行政学)は「『結果が出た段階で出せるものを出す』ということでは信頼を失う。少なくとも日弁連のガイドラインに沿う形での公表を前提とすべきだ」と指摘。その上で「公表範囲を県が決めるなら、内部調査と変わらない。ガイドラインに『ステークホルダー(利害関係者)に対する説明責任を果たす目的で設置する』とあり、県にとってそれは県民だろう。個人情報保護などは必要だが、詳細を明かさない理由にはならない」と話している。【中尾卓英、山田麻未、栗田亨】 

 

 

 
 

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