( 265821 )  2025/02/15 18:22:21  
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追手風部屋 

 

【全2回(前編/後編)の前編】 

 

 角界を代表する“イケメン”として高い人気を誇る、東前頭二枚目の翔猿(とびざる・32)。麗しくもりりしい顔立ちとは裏腹に凄絶なパワハラ気質の持ち主で、付け人が次々に辞めていくというから聞き捨てならない。かくて相撲協会に告発があり、彼は聴取を受けるに至った。 

 

 *** 

 

 東京・両国国技館で1月26日に千秋楽を迎えた大相撲初場所。大関豊昇龍(25)が2度目の優勝を遂げて綱取りを達成し、一方で横綱照ノ富士(33)が現役を引退した。 

 

 横綱の世代交代という鮮やかなドラマが展開された傍ら、両国界隈では、ある力士の異様な風体が人目を引いていた。 

 

「追手風(おいてかぜ)部屋の薩摩翔(さつましょう・25)、序二段の力士です」 

 

 とは、大相撲ファン。 

 

「初場所での彼は、側頭部と襟足の毛髪がごっそり抜け落ちており、ファンの間で“何事か”と騒ぎになりました。頭頂部の毛は残っていて、どうにかまげは結えていますが、頭囲が変に刈り上げたようになってしまっている。その姿にSNSでも〈薩摩翔、大丈夫なんか〉などと心配する声が上がっています」(同) 

 

 脱毛症の原因はさまざまだが、彼の場合はまず「心の不調」の可能性が高いという。日本相撲協会関係者が明かす。 

 

「薩摩翔は、兄弟子である翔猿の付け人を務めています。その翔猿からイジメを受けて心をやられ、髪が抜けたのだろうといわれているのです」 

 

 翔猿は角界きっての人気力士だ。 

 

 強豪として有名な埼玉栄高校と日本大学で相撲部に所属し、大学卒業後は追手風部屋に入門。2015年1月場所で初土俵を踏んだ。新入幕は20年9月場所で、小結昇進は22年11月場所。以降、小結と平幕を行き来して、現在は東前頭二枚目である。 

 

 相撲記者によると、 

 

「身長173センチの小兵ですが、機敏に相手を翻弄する面白い相撲を取ります。格上を倒す“ジャイアントキリング”が持ち味で、先の初場所でも大の里(24)と琴櫻(27)の両大関から銀星を、横綱照ノ富士からは3度目の金星を挙げました」 

 

 タレント性も評価されている。 

 

「美形かつ精悍な顔立ちのイケメン力士としてバラエティー番組にたびたび出演しています。メディア露出も多く、作業靴メーカー『ミドリ安全』のCMにも起用された。安全靴を履き、滑りやすい床に挑んで性能をアピールする愛嬌たっぷりな姿が話題です」(同) 

 

 

 しかし、追手風部屋関係者は、 

 

「じつはこれまでも、翔猿にはパワハラ疑惑が取り沙汰されてきました」 

 

 と、言うのである。 

 

「大翔浜(だいしょうはま・29)、日翔志(ひとし・27)、大翔(だいしょう・24)、大雄翔(だいゆうしょう・22)と、付け人が過去4人も辞めています。このうち引退した大翔浜以外は追手風部屋でいまも現役力士を続けている。つまり、翔猿がイヤで付け人だけ辞めたということ。そして目下、薩摩翔もまた翔猿の下を離れたがっているとみられている。異例の事態です」(同) 

 

 付け人が4人も去った翔猿。そのイジメは、相当に苛烈なものらしい。 

 

「例えば土俵の上で、辞めた自分の元付け人を追い込むのです。ケガから復帰したばかりの元付け人に30分近くもぶつかり稽古を食らわしたこともあったとか。片方が攻め続けるぶつかり稽古は5分間でもきつく、命さえ落としかねない危険なものです。翔猿のやったことは常軌を逸し、ほとんど暴力といえるほど。ぶつかり稽古を終えて倒れた元付け人の顔面を蹴り上げたこともあったようです」(同) 

 

 イジメは、肉体的なものにとどまらない。 

 

「翔猿は金銭面も意地汚いのです。関取は、場所や巡業のたびに“骨折り”と呼ばれる3万円ほどの謝礼金を付け人に支払うのが慣例です。しかし、彼はこれを出し渋るといいます。薩摩翔など出張中、翔猿のちょっとした荷物を失くしたことで言いがかりをつけられ、昨年11月場所から計9万円の骨折りをもらえていないそうです」(前出の追手風部屋関係者) 

 

 精神をくじかれ、果ては容貌まで変わった薩摩翔。どうやら翔猿からイチャモンを日夜つけられていたようだ。 

 

「沸かした風呂が熱かった時、翔猿はわざわざ彼を呼び出し“おまえが湯船に漬かれ”と、入浴を強要したと聞きます。そもそも薩摩翔が風呂を入れたわけではないのに、難癖をつけたということです。翔猿は一事が万事この調子で、イジメを受け続けた薩摩翔はメンタルが追い詰められていったそうです」(同) 

 

 

 さかのぼれば、翔猿は他の若い衆に対するパワハラも再三だったという。 

 

「薩摩翔だけでなく、これまでの付け人たちに対する振る舞いも傲岸不遜。少しのミスでも見とがめて暴言を浴びせたり、何日間も無視をしたりと、陰湿なイジメを繰り返していたといいます。また、翔猿はなるべく外食でカネを使いたくないせいか、自宅に女性を招くことが多い。その際、付け人でない若い衆にまで鍋などの料理を作らせ、出来上がったらすぐさま、その若い衆を帰らせるそう。唐突に“ナプキンと女物のパンツを買ってこい”などと、相撲とは無関係の雑用を強いることも多々あったと聞いています」(前出の追手風部屋関係者) 

 

 後編【イケメン力士・翔猿からパワハラを受け、脱毛症に… 「命を落としかねない稽古」の実態】では、翔猿、追手風親方ら当事者に取材し、パワハラ騒動について聞いた。 

 

「週刊新潮」2025年2月13日号 掲載 

 

新潮社 

 

 

 
 

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