( 265996 ) 2025/02/16 05:34:54 0 00 あなたの職場にも非合理なルールはありませんか?(イメージ)
職場には様々なルールや慣習があるものだが、なかには「なんでこんなルールが?」と首をひねりたくなるようなものも存在する。そうした職場の“バカルール”をネットニュース編集者の中川淳一郎氏がX(旧Twitter)で募ったところ、出るわ出るわ……。中川氏がその具体例を紹介するとともに、なぜそうしたルールができてしまうのかについて考察した。
* * * 私の知人に某IT企業を退職した女性がいるのですが、その理由を聞いたところ、「朝、出社すると、その日トイレへ行って良い時間が書かれた紙がデスクに置かれている」というワケのわからない職場ルールに辟易したからだと言います。つまり、それ以外の時間にトイレに行くことは許されないということですか!? 生理現象に対して実にナンセンスな話ですね。世の中にはこんなバカルールを導入する会社もあるのか、と思っていたら、他の会社も負けてはいません。
建設会社勤務のA氏も「私の会社にも同じようなバカルールがあります!」と言い、興味深く話を聞きました。まず、同社で過去に社員の飲酒運転が発覚したことを受けて、全社員にアルコールチェッカーを配布することに。出勤前と帰宅後にアルコールチェッカーの結果を会社にスマホから報告することが義務付けられました。ただし、時間を記載するなどの縛りはないため、一度チェックをした際に写真を多数撮り、その画像を使い回すことも可能だったようです……。
あと、建設現場でポケットに手を突っ込んで歩いた従業員が転倒してケガをしたことがあったと言います。そこで上層部が、いかに再発防止に取り組むかを協議した結果、作業着のポケットを廃止することに。いや、作業現場でポケットに工具やら伝票やらなんやら入れるのが便利だからポケットはあるのでしょうよ……。さらに、落下防止用の装具「ハーネス」を地上でも装着しなくてはならない決まりもあるそうです。いや、落下しません。ただ重いだけなのですが……。
このようなバカルールは他にもあるのではないかと思い、Xで募ったところ、皆さん思うところがあったのでしょう。次々と情報を提供してくれたのでその一部紹介します。様々なレベルで存在するため、「まぁ、理解できる」から「想像の範囲外」まで多岐にわたります(以下、「」内は、Xで寄せられた意見をもとに、一部文章を調整したものです)。
「『立って会議をやれば生産性があがる』と当時の社長が言い出し、5~6時間全店長レベルが立ちっぱなしで話を聞かされ、疲れてみな集中力なくなるなんてことはありました」
これなんかは、改善をしようとした取り組みです。しかし、元々「立って会議をやる」の意味は、会議の時間を短くし、生産性を上げることが目的だったわけです。長い会議になるのであれば、座ってやっても問題ないでしょう。
「居眠りをしないように、仕事の効率を上げるようにとデスクワークの椅子を全て取り払いました。それだけなら良かったのですが、立ったままでは今まで使っていたデスクが低いからと、デスクの脚を加工して高くしました」
これについては、本末転倒も甚だしいし、疲れている時も立たなくてはいけないのは苦痛です。
さて、今回多かったのが、前出・A氏の会社の「作業着からポケットをなくす」と同様、何か1件問題が起きると全体にその対策を課すというものです。たとえそれがレアケースであっても、「ゼロ」にしなくてはいけないと考え、過剰対策になってしまうのです。
「カッターナイフで怪我した奴がいるから、カッター使用禁止に。ガラスコップで怪我した奴がいるから、ガラスコップ洗う時はゴム手必須に。什器の角で怪我した奴いるから全ての什器の角に保護スポンジ貼り付け」
あと意外と多かったのが、生理現象・体調管理に関するものでした。「トイレに行く時は挙手して『大』か『小』を申告しなくてはならない」というルールにはたまげた。これも効率化の一種で、すぐに帰ってくるかどうかを同僚が把握するために作られたルールでしょうが、言うのが恥ずかしい人もいるはずです。さらには「熱中症対策で摂取した水分量を昼休憩時と退社時に申告する」というルールもありました。「生理休暇を誰かが取ろうとした場合は、(調整のために)女性従業員全員の生理の日を確認する」というのは、プライバシーの侵害です。
しかし、バカルールのバカルールたるゆえんは、どう考えても意味がないのに、皆で頑張って我慢比べをする様です。「暑くても寒くてもなぜか外で朝礼をする」、「残業をするなら上司に8時間前に申告する」、「シール式の切手は使ってはいけない」、「社外メールをするたびに報告書を提出する」……など、どう考えても生産性が上がるルールではない。
さらには、「昭和か!」と言いたくなるルールがコレ。
「バレンタインに女性社員全員からお金を徴収し、男性社員全員にチョコを贈るルールというか慣習がある。なんで好きでもない(むしろ嫌いな)男のために、お金と時間を使わなければならないのか?」
様々な職場のバカルールを見てきましたが、問題は、このルールを作る人がこのルールこそ会社をより良くすると考えていたであろう点です。あと、冒頭に登場した建設会社のA氏が言っていたことは日本企業の弱体化にも繋がりそうな話でした。何しろ自己保身と責任回避のため、非合理的なことをしているのですから。
「ルールを作る人は、何か問題が起きた時に『私はこのルールを守るよう伝えていましたよね』と言いたいんでしょうね。そうすることによって、ミスをした人にすべて責任を押し付けることができる。あと、ルールを作る総務部や管理職は、『ちゃんと仕事をしています』というアピールのためにルールを作る面もあります。全部自分のためなんです。決して従業員のことを考えているわけではありません」(A氏)
もう、こうなったらデキる管理職・総務部は従業員から「これはいらないと思うルール・風習・習慣を教えてください」と匿名で社内から募集してみてはいかがでしょうか。案外そうするとムダが見えてきて、仕事の効率が上がるかもしれません。
【プロフィール】 中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。
|
![]() |