( 266406 ) 2025/02/17 03:45:35 0 00 筆者の竹垣悟氏。彼が見た「スゴい更生者」とは?(写真:筆者提供)
〈「阪神・淡路大震災のときは山口組のテキヤに長蛇の列ができた」元ヤクザ組長が指摘→現代ヤクザと昔のヤクザの“致命的な違い”「弱い者を助ける侠客になれ」〉 から続く
「殺人と性犯罪以外はだいたいやった」――人生の半分をムショで過ごしたという異国の男は、なぜ更生できたのか? 山口組系組長から更生を果たし、現在は暴力団員の更生支援のために活動するNPO法人五仁會(ごじんかい)代表・の新刊『 極道ぶっちゃけ話「山口組四代目のボディガード」の半生記 』(清談社Publico)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 最初 から読む) ◆◆◆
54歳でやくざから足を洗ってカタギになった私は、普通免許などの資格を取ったりしながら、「これからどうしようか」と考えていた。元やくざの私が憚りながら、後世に何を残せるか、自分自身に問うていたのである。
やくざからすっぱり足を洗って映画産業に進出した安藤昇さんとは違い、すぐに結論は出なかった。
そんなある日、自宅の応接間に飾ってあった肖像画の大前田栄五郎と目が合った。たしかに合ったと感じたのである。
栄五郎は現在の群馬県前橋市にあたる上州・大前田村に生まれた幕末の侠客で、気風のよさとケンカの強さから「関東一の大親分」と評された男のなかの男である。栄五郎を主人公にした映画や小説もたくさんある。
肖像画はこの栄五郎の流れを汲む稲川会の二次団体・上州大前田一家八代目だった小田建夫総長から賜ったものである。現在、大前田一家は解散して存在していない。
「五仁を為すべし」
栄五郎は私にそう言った。
なるほど、そうか……。
五仁とは、仁愛、仁義、仁情、仁誠、仁徳の5つの仁を持った侠たちの精神である。
弱きを助け、強きをくじくとは日本古来の男の道である。栄五郎のように本来の任侠道を、あらためて目指そうと思った。
もちろん歴史に名を残す清々しい男たちは栄五郎のほかにもたくさんいる。鬼平こと長谷川平蔵とその一派、あるいは赤穂浪士や幕末新撰組のような侠気あふれる集団を育成していこうと思ったのだ。
そう決意すると、いろいろなご縁が自然に生まれていった。
そして、やくざと受刑者の更生については、数は少なくとも、こうした者たちの支援を続けている事例があることも知ることができた。
法務省の公式サイトによると、日本国内の刑事施設(未決拘禁者を収容する拘置所、刑が確定した者を収容する刑務所、少年刑務所)は2022年4月現在で刑務所59、少年刑務所6、拘置所8、刑務支所8、拘置支所97の合計178で、このほかに矯正教育のための少年院など、少年のための施設がある。
これほどたくさんの施設があるのだから、出所者の数も相当なものである。それを支援しようというのは、並大抵のことではできない。
たとえば大阪に本社のあるお好み焼き店・千房では日本財団の「職親プロジェクト」に賛同し、社長みずから山口・美祢社会復帰促進センターの出所者の更生に力を入れており、テレビや新聞などで紹介されている。
この職親プロジェクトとは「職を通じて親代わりになろう」というコンセプトで、日本財団と関西の企業7社が連携して2013年に発足した。企業の担当者が刑務所で受刑者と面接し、採用者には出所後に住まいを提供し、最長で半年間の就労体験を経て、正社員としての定着を目指すものだ。
2017年に参加企業は東京や福岡にも広がり、90社と10倍以上に増えているが、やはり定着率は低いようだ。継続した見守りや叱咤激励が必要である。
この活動を知ったとき、「俺もこういう活動をしたい」と思ったことも五仁會発足のきっかけのひとつなのだ。
また、地元紙の神戸新聞が紹介していたスウェーデンの更生支援組織の記事にも感銘を受けた。首都ストックホルムで犯罪者の更生を支援するNGO(非政府組織)KRIS代表のクリステル・カールソン氏がとても興味深い人物だったのだ。
「殺人と性犯罪以外はだいたいやった」というカールソン氏は人生の半分の約30年を少年院や刑務所で過ごしてきた。身長190センチ・体重120キロ、元薬物依存者で前科53犯、両腕にはタトゥーを入れている。
氏はみずからの経験を生かして更生支援を続けているという。お嬢さんの誕生をきっかけに更生の道を歩むが、それも簡単ではなかったようだ。
私もカールソン氏ほどではないが、刑務所暮らしも経験しているので、更生の支援もできると思った次第だ。
こうした事例のヒントもあって、五仁會の発足にいたる。
実際には多くの方に相談し、助言をいただき、また苦言もいただいた。そうしたなかで、多くの仲間に恵まれ、発足にいたることができたのである。しかし、楽ではなかったが、思ったより早くスタートさせることができた。これも賛同いただいたみなさんのおかげであり、この場を借りて御礼を申し上げたい。
竹垣 悟/Webオリジナル(外部転載)
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