( 266996 ) 2025/02/18 05:34:49 0 00 “業界の健全さ”が問われるパチンコ・パチスロ業界(イメージ)
パチンコ・パチスロメーカーのベルコは、1月31日、昨年12月よりホールに導入されている、同社が製造販売するパチスロ機『Lスーパービンゴネオ』を自主回収すると発表した。ホールの撤去時期に応じた価格を設定したうえで、同機の買い取りを行うとのこと。パチスロメーカーの業界団体である日電協(日本電動式遊技機工業組合)が定める、適度な射幸性の維持を目的とした自主規制に抵触したことが理由だという。
パチンコ・パチスロにおいて、規制の対象となるのが射幸性だ。射幸性とは、偶然によって利益を得られる度合いのこと。“ギャンブル性”と言い換えることもできるだろう。パチンコ・パチスロで射幸性が高い機種というのは、大きな出玉を獲得できる性能を備えた機種のことであり、裏を返せば大きく負ける可能性も高い機種ということにもなる。そういったハイリスク・ハイリターンな機種は、ユーザーの射幸心を煽り、依存症につながる可能性があるとして、自主規制の対象になりうるのだ。
今回のLスーパービンゴネオの自主回収については、「コンプリート機能」の達成率が、想定を大きく上回ったことが原因だと指摘されている。「コンプリート機能」とは、パチンコやパチスロの出玉性能を制限するための機能で、現在新たに製造されるすべての機種に搭載が義務付けられている。同一営業日内で、出玉がもっともマイナスになったところから計算して、最大出玉が規定数に達したら、コンプリート機能が発動し、強制的に遊技が終了となる。パチンコであれば、もっともマイナスになったところから9万5000発、パチスロであればもっともマイナスになったところから1万9000枚でコンプリート機能が発動する。パチスロ事情に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏はこう話す。
「日電協の自主規制では、コンプリート機能発生率は0.1%未満にするという取り決めがありますが、Lスーパービンゴネオはそれを大きく上回っていたと言われています。それだけ射幸性が高い機種だったということが判明した結果、自主回収ということになったわけです」
パチスロの自主回収というケースは、過去にもいくつか例がある。今に比べて射幸性が著しく高かった1990年代後半から2000年代前半にかけての“4号機”の時代は、同時に複数の機種が回収されることもあった。
「2002年ごろのパチスロの4号機はとにかく出玉の爆発力が高く“一撃2万枚、3万枚”といったことが決して珍しくはありませんでした。当然著しく射幸性が高いということで問題になり、『ミリオンゴッド』(ミズホ)、『アラジンA』(サミー)、『サラリーマン金太郎』(ロデオ)といった機種が、メーカーによって自主回収されました。ただ、こういった機種はユーザーからの人気も高く、回収に応じないホールも少なくなかったのも事実です。結果的になかなかホールから消えない状況が続き、その後これらの機種は“検定取り消し”となり、ホールに設置すること自体が禁止となりました」(藤井氏、以下「」内同)
射幸性が高すぎる機種は、ハイリスクハイリターンであるがゆえに、大勝ちすることもあり、それがユーザー人気につながりやすい。一方でユーザーが大負けをすることも当たり前のように起こる。従って、ホールとしても“利益が取れる機種”として重宝するケースは少なくない。だからこそ、回収が進まないこともあるのだ。
一方で、ホール側が損をしてしまうということで、自主回収になった機種もある。
「2011年導入の『パチスロサクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~』(サミー)は、ハイリスクハイリターンな機種ではなく、他の機種に比べてかなりスペックが甘い機種でした。つまり、ユーザー側からすれば、勝ちやすい機種だったということです。逆にホールにしてみれば、利益が取れないということになり、ホールからメーカーへと多くの苦情が寄せられたといいます。結局その後、メーカー側が回収し、さらに代替機との入れ替えとなりました。何らかの攻略法が発覚して自主回収となるケースはたまにありますが、何か明確な不具合があったということではないにもかかわらず、“甘すぎた”ということで回収になったのはレアですね」
また、単純な不具合が見つかったことで、自主回収となったケースもある。
「2013年に導入された『パチスロ信長の野望 -天下創世-J』(ニューギン)では、本来出玉が増えるべき状態に移行できないという“バグ”が見つかりました。つまり、“当たっているのに、出玉が減ってしまう”という不具合が発生したわけです。パチスロ機では多少のバグのようなものの存在が噂されることもありますが、こういった形でユーザー側が明らかに損をするケースは珍しいです」
さまざまな形で自主回収になることもあるパチンコ機・パチスロ機。回収費用を負担し、補償も行うこととなるメーカーにとっては厳しいが、業界的には重要なことだという。
「パチンコ・パチスロ業界では、出玉性能に対する規制と緩和が繰り返されています。業界としてはできるだけ緩和の方向に進んでほしいという思いがありますが、依存症などの問題もあり、当然ながら規制も必要になってきます。射幸性が高い機種が増えてくれば、管轄の警察庁からの指導も入るし、法的に規制が厳しくなってしまうこともあります。そして、規制が厳しくなれば、当然ながらユーザーが離れていき、業界の存続に関わってくるわけです。
その一方で、メーカーによる業界団体の自主規制で、パチンコ機・パチスロ機の出玉性能をしっかりと制限できている状況が続けば、出玉性能に対する規制緩和が実現することもあります。現在のパチンコ・パチスロは、少し前の規制が厳しかった時期を抜けて、規制が緩和されている時期にあります。そこで射幸性の高すぎる機種が出てきたとなると、再び規制される方向に進みかねない。比較的規制がゆるい今の状態を保つという意味でも、Lスーパービンゴネオの自主回収を行うことで、業界の健全さを示していく必要があったのだと思います」
健全な遊技を提供するには、しっかりと自主規制を守っていくことが重要だ。業界として目指すべきは、今後一切、自主回収となる機種が出てこないことだろう。
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