( 267031 ) 2025/02/18 06:12:38 0 00 中国・上海を走るリニアモーターカー、「上海トランスラピッド」は、中国の経済発展の象徴として、2003年1月の開業以来多くの注目を集めてきました。
上海浦東国際空港と市街地をつなぐリニアモーターカーが「上海トランスラピッド」だ
上海トランスラピッドの最大の特徴は、世界でもめずらしい超高速磁気浮上式リニア(マグレブ)であるという点です。
その最高速は、商業運行列車としては世界最速となる431km/hを記録し、上海浦東国際空港と龍陽路駅間の約30kmをわずか7分あまりで結びます。
しかし、開業から20年以上が経過したいま、上海トランスラピッドに実際に乗車してみると、かつてのような輝きを感じることはできません。
当時は近未来的であったその車体は、いまではやや古さが感じられます。また、座席やICカードもそれなりに年季が入っています。
さらに、現在では最高速度も300km/hに制限されており、「世界最速」の称号も返上しています。
上海トランスラピッドの存在感が薄れつつある要因のひとつが、片道50元(約1000円)という料金の高さです。
地下鉄を利用すればわずか10元(約200円)程度で上海の中心部までアクセスできることを考えると、この料金はやや割高です。
チケットは年季の入ったICカード
また、上海トランスラピッドの行き先である龍陽路駅が、上海市の中心部や人気の観光地から離れていることもしばしば指摘されます。
上海トランスラピッドを利用して上海の中心部まで行くには、龍陽路駅から地下鉄やタクシーに乗り換える必要があります。
ただ、そうすると上海浦東国際空港から直接地下鉄やタクシーを利用した場合と比べて、所要時間はほとんど変わりません。
上海ではタクシーの料金も割安であるため、効率重視の場合はタクシーを、コスト重視の場合は地下鉄を利用するほうが合理的です。
その結果、上海トランスラピッドは中途半端な存在となってしまっているのが実情です。
上海トランスラピッドには、浙江省の省都である杭州へと延伸する計画がありました。
かつて上海トランスラピッドは、431km/hという最高速によって約30kmの距離をわずか7分あまりで結んでいた
ただ、2010年には上海トランスラピッドとは別の高速鉄道である「滬杭(ここう)旅客専用線」が開業し、当初は最高速度350km/hでの営業運転をおこなっていました。
現在では300km/hでの営業運転となっているものの、上海から杭州までの約160kmを50分程度で結ぶなど、両都市の移動を支える重要なインフラとなっています。
こうした経緯もあり、上海トランスラピッドの延伸計画は現在までに大きな進捗が見られません。
さらに、2024年12月27日に開業した「上海空港連絡線」も上海トランスラピッドの未来に暗い影を落としています。
これまで、それぞれの空港間の移動には、地下鉄で約90分、バスで60分以上、タクシーでも50分程度を見込む必要がありました。
一方、上海浦東国際空港と上海虹橋国際空港をダイレクトにつなぐ上海空港連絡線を利用すると、両空港をわずか40分程度で移動することが可能となります。
料金も26元(約520円)と比較的手ごろであるうえ、15分間隔での運行されている点や既存の地下鉄と接続している点など、利便性にも優れています。
上海空港連絡線は「市域線」と呼ばれる都市型の高速鉄道のひとつであり、最高速度は160km/hと地下鉄をはるかにしのぎます。
現在でも上海市中心部とその郊外を結ぶ市域線がいくつか存在していますが、今後はさらに増えていく予定とされています。
上海トランスラピッドの車内。長時間の乗車を想定していないためか、日本の新幹線などと比べるとシートはかなり簡素
※ ※ ※
上海空港連絡線の登場により、上海トランスラピッドはもはやその役割を終えたと言っても過言ではありません。
一方、数少ない超高速磁気浮上式リニアである上海トランスラピッドは、上海を訪れる観光客から根強い人気を得ているのも事実です。
そのように考えると、上海トランスラピッドは上海を代表するアトラクションのひとつとして、今後もその価値を保っていくのかもしれません。
Peacock Blue K.K.
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