( 267671 )  2025/02/19 17:41:57  
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8年ぶりに俳優復帰した成宮寛貴(撮影/写真映像部・和仁貢介) 

 

 2016年に芸能界引退を電撃発表した俳優の成宮寛貴(42)が8年ぶりに俳優として再始動した。昨年11月、大阪で行われたトークショーで「8年ぶりに俳優の仕事を再開しました」と報告した成宮が、復帰後初めてインタビューに応じた。かつて電撃引退を決めた理由、その後の空白の8年間、俳優として戻ってきたこれから……AERA dot.だけに明かした成宮の思いとは――。 

 

*  *  * 

 

 成宮は2000年に舞台「滅びかけた人類、その愛の本質とは…」でデビューすると、翌年に「溺れる魚」で映画初出演。02年にドラマ「ごくせん」(日本テレビ系)の野田猛役での演技力が注目され、その後も数多くのドラマや映画などに出演してきた。人気シリーズ「相棒」(テレビ朝日系)では12年の「シーズン11」から15年の「シーズン13」まで主人公の相棒役・甲斐享を演じ、幅広い世代に人気を博していた。 

 

 だが、2016年に突如芸能界から姿を消してしまう。週刊誌に掲載された自身のプライベートに関する記事が世間を騒がせた直後だった。 

 

「とにかく、エンターテイメントの世界から距離を取るべきだと思いました。その時、どんなことを言っても、自分の意思に反して周りを巻き込んでしまう。これ以上迷惑かけたくない一心でした。エンターテイメントに携わる人間として、客観的に自分を見つめ直し、俳優の仕事自体をやめることが正解じゃないかと思えた。実は、その前から仕事にも少し疑問を感じていた部分もあり、俳優の仕事から離れようと決意しました。その時は、アーティストとして、感情よりも今何をすべきか深く考え、行動しました」 

 

 引退を発表してからほどなくして、成宮はトランク一つで海外へ渡った。アジア、アメリカ、ヨーロッパ各国を転々とし、行く先々で自分が興味を持てるものを探し求めた。 

 

「ほとんどの時間を夢中になれるものを探すことに費やしました。何かに興味を持って、それに没頭したい。ずっと自分と向き合って過ごしている中で、自分の価値観や物差しを壊せたらいいと思っていました。使えるお金も限られている中で、生活もトランク一つで事足りた。それに気づくと、モノって何? 生活って何? と考えるようになりました。 

 

 今思えば少し心に穴が空いた状態だったのかもしれません。約17年続けてきた仕事を辞めたわけだから、反動もかなりありました。海外ではアジア人として生活するので、良い出来事も悪い出来事もいろいろと経験しました。 

 

 ちょうどヨーロッパにいた頃、絵を描き始めました。手や指に絵の具を付けて描くフィンガーペインティングです。今思えば、カラーセラピー的な意味合いもあったかもしれません。自分の好きな色彩で自由に発想し、描いていくことがとても心地よかったんです」 

 

 

■すべてが新鮮に映ったヨーロッパでの暮らし 

 

 その他にも、ヨーロッパでの生活が成宮に与えた影響は大きかった。 

 

「街を歩いているだけで楽しかったし、いろいろとインスパイアされることがありました。たとえば、何百年前の建物が今でも普通にアパートメントとして使われている。建築の重み、デザイン、北欧ならではの色使い、家具などの質の良さ。それなのに、意外にも価格が安いことなど、どれもが新鮮でした。ヨーロッパの人たちは夕方に仕事を終え、オープンテラスに集まりビールを飲んで、食事に行く。そして食事の後、また少し飲んで、自然にそれぞれの家に帰っていく。そのスタイルがすてきだと思ったし、心地よかったです。街の外灯などのライティングも美しかったので、夜の街を歩くのも好きでした」 

 

 こうしたヨーロッパの生活の中で、自然に描き始めた絵を少しずつ発表していくと良い反応が届く事も多くなってきた。そこで、「プロダクト」に携わる仕事に興味がわいてきたという。 

 

「デザインの仕事やプロダクトワークを手掛けてみたいと初めて感じたんです。少しずつではあるけれど、自分の好きな事から始めていければと思い『HN Product』をスタートしました」 

 

 本名・平宮博重(なりみや・ひろしげ)の頭文字をとったアパレル&アクセサリーブランド「HN Product」ではマグカップなどの小物と雑貨の販売、企業のデザインコンサルティングなどを手がけ、帰国後はポップアップストアの展開をするなど実業家としての一歩を踏み出した。 

 

 コロナの感染拡大の影響で、インドネシアにある縫製工場が倒産寸前だと聞いた成宮は、現地のデザイナーと一緒にその工場にプロダクトの生産を依頼した。 

 

「それがきかっけで、自分のアパレルのプロダクトをそのデザイナーと手がけていくようになりました。自分のプロダクトが誰かの役に立てるなら、こんなに素敵なことはありません」 

 

 エンターテイメントの世界から離れて「なりたい自分」の輪郭が見え始めてきた。 

 

【後編】では帰国してからの活動や8年ぶりに俳優復帰するまでのいきさつ、思い描く未来について語った。(【後編】は2月21日に公開予定) 

 

(笠井千晶) 

 

笠井千晶 

 

 

 
 

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