( 267986 )  2025/02/20 16:39:57  
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ホンダの三部社長(右)と日産の内田社長 

 

“ホンダと日産が経営統合”というニュースが世を駆け巡ったのは昨年末。実現すれば世界3位の自動車メーカーが誕生するはずだったのだが、わずかひと月半で構想はご破算に。絶体絶命の日産はどこへ行くのか。 

 

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 両社のトップは12月23日にそろって会見。経営統合に向けた協議に入ることで基本合意したと発表した。今年6月には統合契約を結び、両社がぶら下がる形で持株会社を来年8月に設立させる予定だったのだが、 

 

「ホンダは、業績が低迷する日産が再建策を明示することが統合の“絶対条件”だとしていました」 

 

 とは経済部デスク。 

 

「昨年11月に日産が発表した9月中間決算は、営業利益が前年同期比90.2%減の329億円、純利益も93.5%減の192億円と惨憺(さんたん)たるものでした。併せて全社員の7%にあたる9000人と車両生産能力の2割削減という『ターンアラウンド計画』を打ち出したのですが、事業再生のプラン策定はいっこうに進みませんでした」(同) 

 

 業を煮やしたホンダは、 

 

「1月末、日産に子会社化を打診。これが日産側の“プライド”を傷つけ、2月5日に開かれた取締役会では反対意見が相次ぎました。翌6日、ホンダ本社を訪れた日産の内田誠社長は、協議を打ち切って白紙撤回する旨をホンダの三部敏宏社長に伝えたのです」(前出のデスク) 

 

 両社の統合は表向き「対等」とされながら、実質的に日産の「救済」であることは明白だった。 

 

「破談が決まった6日時点で、ホンダの時価総額は7兆6000億円と日産の5倍。新会社のトップはホンダが選び、取締役も過半数を指名することになっていました。“ホンダに助けてもらう”との認識を周知徹底できず、社内をまとめ切れなかった内田社長の手腕が疑問視されています」(同) 

 

 モータージャーナリストの岡崎五朗氏が言う。 

 

「日産の取締役会は、さながら既得権益を守りたい人たちによる『互助会』の様相です。ホンダは今回、そうした日産経営陣の“危うさ”に気付いてしまったのでしょう」 

 

 さかのぼれば26年前、日産はルノーに“救済”された過去がある。経済ジャーナリストの井上久男氏は、 

 

「当時『われわれは日本を代表する会社だからつぶれるはずがない』と構えていたら、あっという間に倒産寸前までいきました。そこでゴーンがやって来て大手術を施したわけですが、今回も日産には『(歴史の浅い)ホンダなんかに……』といった思い上がりが見られます」 

 

 としながら、 

 

「日産の自力再建は望むべくもなく、人体でいえば、すでに膝下くらいまで細胞が壊死し、もう少しで膝上まで到達しそうなイメージ。下半身を切り取らないと全身に毒が回ってしまう状態です。ゴーンは“外科医”としては優秀でしたが、内田社長には切る勇気もノウハウもありません」 

 

 

 その上で、今後は四つのシナリオが想定されるというのだ。かねて台湾の電子機器受託生産大手の鴻海(ホンハイ)精密工業が日産の買収を画策しており、 

 

「まずは鴻海が本格的に動き出す可能性。次に統率力が問われる内田社長が辞任して新体制となった日産が、あらためてホンダと再交渉を始める可能性もあります。三つ目にホンダと鴻海が組み、日産を引き込むというシナリオも想定できます」 

 

 さらには、 

 

「米国のテック企業も日産に触手を伸ばしているといいます。例えばアップルやエヌビディアは、自社でハード面は開発できず、自らの技術を試す車が欲しい。両社とも時価総額は3ケタ兆円ですから、日産はお買い頃。買収が失敗しても“誤差の範囲内”でしょう」 

 

 はたして「技術の日産」の行く末は――。 

 

「週刊新潮」2025年2月20日号 掲載 

 

新潮社 

 

 

 
 

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