( 267991 ) 2025/02/20 16:45:17 0 00 開業した昨年3月16日の北陸新幹線敦賀駅。小浜でも同じ光景が見られるかは未定だ
北陸新幹線敦賀―新大阪間延伸を巡り、杉本・福井県知事が1月、計画ルート上の小浜市までを先行開業する案を披露した。政府・与党が2016年、小浜、京都両市を経由するルートに決めたものの、京都駅付近などの詳細なルートが未定で、石川県内では「米原ルート」を推す声が出ている。こうした状況を受け、知事が「小浜・京都ルート」の確実な実現を求めた格好だ。小浜先行開業は実現性がある案か、探ってみた。
敦賀―新大阪間については、国や鉄道建設・運輸施設整備支援機構が小浜、京都両市を通る大まかなルートや駅の位置の検討を終えた。一方、京都府内で地下水への影響や地盤沈下を懸念する声が出るなど、建設への環境が完全に整っているわけではない。それでも、県内を中心に、大阪に直通する小浜・京都ルートの実現を望む声は高まっている。
「小浜先行開業」は技術的に可能なのか。同機構に尋ねると、「建設計画をまだ策定しておらず、答えられない」と返ってきた。JR西日本も「建設計画がない中では、運行面でどうなるかお答えできない」。
新幹線建設に詳しい関係者らにも聞いてみた。「小浜を起終点にできるかどうかは、運用次第ではないか」「小浜の駅の構造が大きくなる可能性があり、効率を考えなければできる」。非効率とみられるが、可能かもしれないようだ。
駅の構造から検討した。現在の起終点・敦賀駅は、おおむね1時間に2、3本、新幹線列車が到着する。出発するのも同程度だ。観光シーズンには臨時列車も入線する。こうした多くの列車の「折り返し」を処理するため、同駅は「2面4線」(2面のホーム、四つの線路)の大きな構造で、同時に4本の列車が止まれる。近くには車庫も備える。そうしないと、まとまった列車の運行本数を確保できないためだ。
全国新幹線鉄道整備法に基づき整備された「整備新幹線」で、先行開業した起終点の駅が誕生している。
北陸新幹線の長野駅(1997年)や金沢駅(2015年)、東北新幹線の八戸駅(青森県、02年)、九州新幹線の新八代駅(熊本県、04年)、北海道新幹線の新函館北斗駅(北海道、16年)、西九州新幹線の武雄温泉駅(佐賀県、22年)だ。
JR各社によると、長野、金沢、八戸駅は2面4線を採用した。新八代駅は当時、在来線特急などと同じ平面上で乗り換えができる構造だった。武雄温泉、新函館北斗駅は現在もこの構造となっている。
仮に小浜まで開業した場合、接続する可能性があるJR小浜線は特急が走らないローカル線で、京都、大阪方面にも直通しないため、同じ平面で乗り換える構造は不要だ。だからといって、2面4線にすると、隣の敦賀駅と2駅連続で同じ構造となり、過剰投資になりかねない。
現に、他の先行開業で起終点駅と隣接駅が連続して2面4線となった事例はない。敦賀の隣接駅・越前たけふ駅(越前市)は2面2線だ。
小浜周辺は小規模な街が多く、先行開業後も関西、中京への利用は敦賀駅での乗り換えが必要なため、小浜の乗降人数は限定的になると考えられる。新大阪駅までの全線開通を見据えると、2面2線が適当とみられる。すると、折り返せる本数が限られ、敦賀発着の全列車を小浜まで走らせることは困難とみられる。
鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは「小浜まで1駅だけ延ばすのは、小浜・京都ルートを確実なものにする上で意義はあるかもしれない」としつつ、「いずれ不要になる折り返し設備や余分な人員が必要になり、国やJRの負担が重くなることが予想される。乗客の利便性が高まるわけではなく、あまりメリットは感じない」と話す。
利便性や費用負担の面から、先行開業への壁は高そうだ。(高山智仁)
|
![]() |