( 268176 )  2025/02/21 04:37:28  
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“転売ヤー”の増加も米価格急騰の原因に(イメージ) 

 

 異例の高騰が続く米価格。江藤拓・農林水産大臣は2月14日、政府が保有する備蓄米21万トンを放出することを正式に発表した。いったい誰が価格をつり上げているのか──価格高騰に乗じてカネを稼ごうとする事業者や個人の動きを追う。【前後編の後編】 

 

 昨夏からの米価格上昇の背景には、農協より割高な値段を提示して買い取る「新規の卸売業者」の存在があった。さらに、「個人」で活動する“転売ヤー”も増えている。 

 

「コロナ禍でマスクの品切れが続出した時のように、フリーマーケットサイトに米が高値で出品されている。これまで洋服やゲーム機器などを出品していた人たちが、軽い気持ちで行なっているケースも多いようです」(ITジャーナリスト) 

 

 あるフリマサイトを見てみると、ただでさえ高騰する米相場よりさらに高い、1kg5000円といった金額で米を販売する出品者が相次いでいる。東北地方のある米農家が嘆く。 

 

「数は少ないのですが、出品者のなかには本職の米農家だろうなと思われるアカウントも散見されるんです。なかには自前で精米した米を10kg1万円で出品しているケースもありました。別にフリマサイトで販売することは違法ではないのですが、高額転売ブームに乗っかるような形は自制してほしいですね……」 

 

 一連の米高騰について農水省に聞くと、以下のように答えた。 

 

「流通全体に目詰まりが起きているものと考えています。その結果として店頭価格の上昇につながっている状況と認識しています。現在、大規模な集荷業者、卸売業者に加え、生産者や小規模な集荷業者、卸売業者に調査の範囲を広げ、在庫状況の調査を行なっているところです」(農産局農産政策部企画課) 

 

 江藤農水相は「備蓄米の放出」を発表したが、米専門店「つねもと商店」COOで米流通評論家の常本泰志氏は、その効果に懐疑的だ。 

 

「備蓄米は農協や集荷業者が入札して政府に売ったもので、市場に放出した同量の米を政府は1年以内に買い戻さなければいけない決まりがある。ようするに一時的に“貸し出す”だけなのです。短期的には流通量が増えて値下がりする可能性はありますが、根本的な解決にはなりません」 

 

 米の値段はいつ下がるのか。エネルギー価格の高騰による生産、流通コストの上昇という課題もあるが、常本氏が指摘するのはより根深い問題だ。 

 

「米農家の廃業、高齢化は進む一方で、この10年で作付面積は2割も減少しました。長期的に見ればさらなる減少は避けられず、国産米の供給が先細りになることは目に見えている。若い担い手を増やす、農地の集約を加速させるなど抜本的な対策をしない限り、米高騰は続くでしょう」 

 

 これからは「米=高い」が当たり前の時代になるのかもしれない。 

 

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※週刊ポスト2025年2月28日・3月7日号 

 

 

 
 

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