( 268206 ) 2025/02/21 05:11:41 0 00 大学進学は上京のチャンス(イメージ)
大学全入時代――。文科省令和6年度学校基本調査によると、大学進学率は過去最高の59.1%。なかでも東京の大学は人気で、内閣府によれば、大学進学時における都道府県別の流出入者数は東京都が圧倒的に多く、2024年で約7.8万人の純流入となっている。
地方には大学や学部の選択肢が少ないという背景もあるが、「どの大学でもいいから、とにかく東京に行きたかった」という地方出身者は案外多い。「Fランでもいいから、地方を脱出したかった」と明かす人たちの本音に迫った。
青森県から都内のT大学に進学したAさん(20代男性)は、現在3年生。生まれ育った街には同級生が少なく、若者が多く集まる東京に憧れた。また、「経験できるものごとの選択肢が田舎は少ない」と話す。
「実家から離れる大義名分としては、大学進学が一番いい。地元はド田舎で、遊ぶところなんてなくて、娯楽は家でゲームをするくらいでした……。
学校帰りに好きな場所へ行けて、適当にふらふらしていても街には遊ぶところがあるような都会と比べたら、僕が住んでいたところはあぜ道と小川が流れているだけで、何も楽しいところはありません。高校の修学旅行で大阪に行ったときに、初めて一人で電車に乗ったことは今でも鮮明に覚えています。数分おきに電車が来て感動すると同時に、今田舎を出ないと、今後新しい体験はできないと思うようになりました。
東京に進学した感覚は、同じ日本でも海外留学とも思えるほど文化が違い、実家から出て良かったと思いました。大学生活の4年間くらい楽しく生活がしたかったんです」(Aさん)
秋田県出身のBさん(20代男性)が都内のS大学へ進学したのは、「田舎の風習、悪く言えば時代錯誤な文化が嫌だった」というのが理由だという。
「『長男なら家を継ぐよね』とか、『男なら早く働いて自立しろ』といった田舎特有の慣習が嫌でした。なので、大学進学のタイミングで東京へ出る、実家を出ることにしました。
秋田では、家から一番近い高校でも親の車に乗って30分の距離を通学です。塾なんてありませんから、受験勉強をするにしても、何から始めたらいいのかもわからないし、友達もほとんど進学を選ばないので相談もできません。全て一人で調べる必要がありました」
情報が少ないからこそ、時代錯誤な文化もなかなか変わらない、とBさんは言う。
「自分がどれだけ勉強を頑張っても、首都圏や進学校にいる生徒とは絶対的な環境の差がある。なんだかんだいっても、首都圏にいる人だと、進学にしても就職にしても情報がすぐに手に入るうえ、オープンキャンパスだって電車で簡単に行けます。田舎だと新幹線や飛行機に乗って、やっと大学を見に行けるので、物理的な距離も相当不利ですよね」
第一志望のW大学は落ちたが、なんとかS大学に滑り込んだBさん。「偏差値はちょっと低いですが、一度都内に出てしまえばこっちのもの」だという。
「偏差値が低いとしても、古い風習から逃げられるなら全然問題ありません」(Bさん)
鹿児島県出身で、現在都内のT大学2年生の女子学生Cさんは、兄と姉がいる3人兄妹。「実家だとすべて男子が偉いという感じ。お父さんだけおかずが多いとかも当たり前だし、兄だけ優遇されていた」と家を飛び出した。
「『女は黙って家事をしろ』みたいな男尊女卑の風潮が嫌すぎて、高校まで基本的に学校から帰ったら部屋に引きこもっていました。それを打破するには大学進学のタイミングしかないと思って、東京に行くと決意。地元がいちばんいいと信じている親からは、猛反対にあいましたね。偏差値のすごい大学ならともかく、『お前の頭だったら地元から通えるところにしろ』とまで言われました」(Cさん)
Cさんが幸運だったのは、すでに社会人の姉が千葉に住んでいたことだ。
「姉が千葉にいたので、私も東京に出たいと主張しやすかったし、姉も味方してくれました。大学はもう都内ならどこでもよかったです。正直Fランですが、勉強したくて大学に行く人は別として、そうでないならどこに行っても同じ。なら、東京でたくさんの刺激に触れたほうが自分の将来のためになる気がします。
おしゃれな服もすぐに買えるし、カフェもバイト先もいっぱいある。東京では男性が優しくて感動します。姉は『ひっかからないようにね』って心配していますが(笑)」(Cさん)
岐阜県出身のDさん(20代男性)も田舎の閉塞的な環境が嫌になったことを明かすが、その理由は「人間関係」だという。「閉じた人間関係をリセットしたい」がために進学を選んだ。親からは「絶対に後悔する」、「県内で進学しなさい」などと言われたが、それを振り切って都内へ出た時のことを振り返る。
「外に出るだけで噂されて、『土曜日○○に行ってたよね』なんて言われる日々に疲れました。同級生が高校の先輩と付き合って妊娠したらしいなんて話がすぐに耳に入ってくるし、『○○君がどこで働き始めた』なんて興味もありません。田舎の高校生だと、身近で普通の話題なんですが、自由さがないことを常々感じていました。こんな閉塞的な人間関係は一度リセットしたいし、それを正当化するなら大学進学が親を説得させやすかったんです」(Dさん)
親からは反対されたが、それでも説得を続けた。
「『家賃も高いし誰が金を払うんだ』なんて言われたので、奨学金を借りて全部自分で払うと伝え、絶対に出ていくことは諦めませんでした。志望校には落ちて、偏差値的には正直大した大学には入れませんでしたが、それでも楽しい大学生活を送れたと思っています。大学を卒業した後も都内で働いていますが、今は手取り23万円で、言われているほど生活は苦しくありません。
田舎の人は東京の生活は大変だと必ずいいますが、就職先の選択肢が少ないし、賃金も安い田舎のほうが僕にとっては大変。実家周辺の暮らしだと手取り14万円くらいの働き口しかありませんからね」(Dさん)
地方特有の悩みがある限り、東京を目指す若者がいなくなることはないのかもしれない。
|
![]() |