( 268486 )  2025/02/21 17:48:58  
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写真:現代ビジネス 

 

人口減少日本で何が起こるのか――。多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 

 

100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。 

 

(※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです) 

 

本来、政府は「コロナ前」から高齢者雇用を推進させるべく、旗を振ってきたはずだ。 

 

高年齢者雇用安定法を改正し、2021年4月から企業に70歳までの雇用機会の確保を努力義務として課した。これもしかしながら、このようなコロナ禍における高齢者雇用の悪化を見ると、前途多難と言わざるを得ない。 

 

高年齢者雇用安定法の具体的内容は、(1)定年年齢の引き上げ、(2)定年の廃止、(3)継続雇用制度の導入、(4)継続的に業務委託契約を締結できる制度の導入、(5)継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入──の5つの措置のいずれかを求めるものである。 

 

(1)〜(3)はすでに、65歳までの雇用の確保で義務付けられていたものだ。企業の負担を軽減するため、グループ関連企業だけでなく、関連のない他社での雇用も認めている。それどころか、勤務してきた企業とのフリーランス契約や起業の支援といった形も選択肢としている。(5)の社会貢献事業というのは、会社や商品の歴史を説明するセミナーの講師、植林事業といった環境プロジェクトに関するボランティア活動、勤務してきた企業が関係を持つ財団法人などで働くことなどが想定されている。 

 

厚労省の「高年齢者の雇用状況」(2020年6月1日現在)によれば、66歳以上の人が働ける制度のある企業は33.4%と3社に1社が何らかの措置を講じている。しかしながら「定年制の廃止」2.7%、「66歳以上定年」2.4%、「希望者全員66歳以上の継続雇用制度」7.5%だ。301人以上の大企業に至ってはさらに低く、それぞれ0.6%、0.6%、3.6%に過ぎない。 

 

政府が法改正までしてこうした現状を打破し、70歳までの就業を促進しようとする背景には、少子高齢化に伴う慢性的な人手不足と、勤労世代が減ることによる年金や医療などの社会保障制度の財源不足という2つの懸念を同時に解消したいという思惑がある。 

 

政府は、2025年度以降の「70歳まで雇用の義務化」を視野に入れており、2022年4月から、70歳となっている年金受給開始年齢の選択肢の上限を75歳に引き上げることにしたのも、その布石と見られる。 

 

70歳までの雇用に関しては、政府の思惑とは別に、個人的理由から希望する人が少なくない。公的年金の給付水準が今後低下する見通しとなっているため、老後の生活資金の確保のために働かざるを得ない事情があるからだ。 

 

内閣府の「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」(2019年)によれば、「66歳~70歳」まで収入を伴う仕事がしたいとした人は21.5%に上った。71歳以降まで希望する人を含めれば37.6%だ。こうした人にすれば、努力義務とはいえ法律が後押ししてくれることは朗報だろう。 

 

つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。 

 

河合 雅司(作家・ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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