( 268726 ) 2025/02/22 15:04:03 0 00 兵庫県の維新県議から提供された情報を拡散した立花孝志氏
兵庫県議会の調査特別委員会(百条委員会)の委員だった兵庫維新の県議2人が、委員会の非公開データや一部の委員を中傷する文書を、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏に提供していたことがわかり、委員を辞職した。提供したのは斎藤元彦知事が失職し、再選を目指していた知事選のさなかで、データは斎藤氏を応援する立花氏によって拡散され、選挙に影響を与えた可能性が高い。
兵庫県では昨年3月、斎藤知事らの数々の疑惑が元県民局長によって内部告発され、県議会は百条委員会を設置して問題の追及にあたってきた。9月に県議会は全会一致で斎藤氏の不信任を決議し、斎藤氏は失職。10月31日に斎藤氏が出直しを求める知事選が始まった。
知事選には立花氏も立候補したが、自らの当選ではなく斎藤氏を応援する異例の「二馬力選挙」を展開した。そのなかで立花氏は、知事を失職させた「黒幕」は百条委員会委員の竹内英明県議だなどという情報をSNSなどで拡散させた。
AERA dot.の取材に竹内氏は完全否定していたが、竹内氏はSNSなどで集中的に誹謗中傷を受けることになった。11月17日に斎藤知事が再選を果たした翌日、「家族を守るために」と竹内氏は県議を辞職、今年1月に亡くなった。自殺とみられている。
立花氏は、竹内氏を「黒幕」とした根拠は、百条委員会の副委員長で維新県議団の団長(12月に辞任)だった岸口実県議から受け取った文書だと主張した。
これを受けて日本維新の会が調査し、2月19日に岩谷良平幹事長は、 「政治倫理上、問題がある軽率な行為」 と調査内容を明かした。
それによると、岸口氏は昨年11月1日に他の民間人とともに立花氏に文書を渡す場にいたことを認め、「自分が手渡したと言われても反論のしようがない」と話したという。
■「マスコミに提供しても握りつぶされる」
維新県議の立花氏への情報提供はこれだけではない。
同じ2月19日夜、やはり百条委員会委員である維新の増山誠県議がYouTube番組に出演し、 「片山元副知事の発言を録音して立花氏に渡したのは私です」 と“自白”した。
昨年10月25日の百条委員会では片山安孝元副知事の証人尋問があったが、知事選の日程が近いため、選挙に影響を与えないように「非公開」とされた。その委員会で片山氏は、元県民局長の公用パソコンにあった私的文書の内容を話し始めた。内部告発の問題とは無関係であり、真偽不明のプライベートな内容だったため、委員長の奥谷謙一県議は発言をやめるよう制止したが、片山氏はしばらく話を続けた。この委員会の動画は知事選後に公開されたが、片山氏の不規則発言部分は音声を消されている。
だが、増山氏は非公開だったこの日の委員会を録音し、片山氏の不規則発言も含めた録音データを、選挙告示日の10月31日に立花氏にLINEで送信していたというのだ。
この録音データを立花氏は選挙中にSNSなどで公開。YouTubeで29万回再生されるほど広く拡散され、斎藤氏を告発した元県民局長が問題のある人物であるような印象付けにつながった可能性が高い。
増山氏は番組内で、ルール違反については謝罪したものの、 「マスコミに提供しても握りつぶされると考えた。立花さんは発信力がある。県民が多くの事実を知ったうえで、選挙に臨むべきだと思った」 などと正当性を主張した。
だが、増山氏は委員会で選挙に影響を与えないよう「非公開」と決めたデータを、知事選のさなかに斎藤氏を応援する選挙活動をしていた立花氏に、真偽不明な内容を含めて提供して拡散させ、選挙に影響を与えようとしていた。正当化できる話ではないだろう。
■知事は「私がコメントする立場ではない」
百条委員会が設置された当時、内部告発に記された事案を調査するという方針が示された際に、維新の県議は、元県民局長の公用パソコンのデータなどについて、「すべて開示してほしい」 と強く主張していた。これに対し、元県民局長は弁護士を通じて内部告発とは無関係なデータを公開しないよう求めたが、百条委員会の証人尋問に出席する直前の昨年7月に自ら命を絶った。
当時、兵庫県の複数の職員がAERA dot.の取材に対し、 「パソコンのデータ開示を求めて、元県民局長を『つるし上げたる』と維新の県議が言っていた」 と証言した。
その際、増山氏に電話をしたところ、 「公用パソコンのデータ開示を求めたかどうか、会議は非公開でしたのでお答えは差し控える」 と答えていた。だが、増山氏は自ら非公開の委員会の内容を漏洩していたわけだ。
百条委員会委員の丸尾牧県議は、岸口氏が流した文書内で竹内氏とともに「黒幕」と名指しされていた。丸尾氏が憤慨する。
「百条委員会のメンバーが情報漏洩に関与していたというのは驚くばかりだ。岸口氏が立花氏に渡した資料は誹謗中傷であり、事実に基づかない。2人はあまりに無責任だ」
日本維新の会代表である吉村洋文・大阪府知事は県議の情報漏洩について、 「本人たちの思いがあるのはわかるが、ルール違反ですから、あってはならないこと」 と発言。
斎藤知事は2月19日の定例記者会見で岸口氏の問題について問われ、 「私がコメントする立場ではない」 と話している。
維新の国会議員の一人は、沈痛な表情でこう語った。
「また不祥事で、地元の選挙区でも有権者の厳しい声が突き刺さっています。それでなくとも党勢が冷え込んでいるのに、これは痛い。(公職選挙法違反容疑で告発されている)斎藤知事以上に、こっちが瀬戸際ですよ」
(AERA dot.編集部・今西憲之)
今西憲之
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