( 268996 )  2025/02/23 05:13:48  
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撮影:近藤俊哉 

 

昨年、70歳の節目を迎えた石田純一(71)は「モテなくなりました」と笑う。老いも忍び寄る年齢に差し掛かったが、今は焼き肉店で精力的に働いている。かつてトレンディードラマで一世を風靡した男は、老後の人生をどう考えているのか。世の中がとことん清廉性を求めるなか、いま噛みしめる「不倫は文化」発言への思いとは。(取材・文:中西正男/撮影:近藤俊哉/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部) 

 

撮影:近藤俊哉 

 

2023年5月に千葉・船橋に仲間と焼き肉店をオープンさせました。ほぼ毎日、そこに通って接客する。それが今のルーティンになっています。 

 

やっぱり僕がいるから来てくださるお客さんも正直いらっしゃいますし、ありがたいことにすごく喜んでくださる。どれだけ疲れていても、喜んでいただけたら疲れも吹っ飛びますしね。 

 

そんななか、先月の誕生日で71歳になりました。70 代になったからといって、急に何かが変わるもんじゃない。連続した線路の上にいるだけで、僕としては特に変化を感じてはいないし、自分から見える景色は一緒です。 

 

車に乗っているときと一緒でね。ベントレーに乗っているか、軽自動車に乗っているか。車内から見る景色はほとんど変わらないんですけど、外から見ている人にとっては違いを認識するわけです。 

 

要は、僕らの仕事って人が評価するものですからね。今の僕をどう考えるか。ギャラひとつにしたって、こちらから「これだけください」と言ったからくれるものではない。相手が 「石田純一にCMに出てもらうんだったら、これくらいが妥当な値段」と思ったものを提示してくるわけです。  

 

例えば、お笑い芸人のなかやまきんに君も、やっていることは昔も今も変わっていないと思うんです。でも、そこに対する評価が変わって、今はあらゆるところに仕事が広がっている。やっていることは一緒なのに、周りのとらえ方が変わる。これがやっぱりこの世界の真理なんだなと思いますね。 

 

 

撮影:近藤俊哉 

 

自分が変わった気はしないと言っても、もう71歳にもなるとね、変な話、モテなくはなりました(笑)。60という響きと、70という響きだと、やっぱり違うんでしょうね。これは、仕方のないことでしょうし。 

 

このご時世、結婚している僕がモテの話なんてすると叱られるのかもしれませんけど(笑)。モテるということに関しては、自分の経験則として、すごく大切だと信じている部分があるんです。モテの感覚と仕事は合致するというか。30代でトレンディードラマが当たったときも、ドラマでドンと世に出る少し前からやたらとプライベートでモテだしたんです。 

 

周りの女性からモテる。この規模がもっと大きくなって世間からモテるようになったら、それが売れるということになる。独特の空気が出だすのか、そういう風向きになっているのか、そこはなかなか分かりませんけど、プライベートでも、仕事でも、両方にモテの空気が関係している。 

 

だから、モテの感覚には常に敏感になっておかないといけない。そう考える自分がいますし、20代の頃のようなモテ方はしないけど、70代ならではのモテは考えておかないといけないとも思っているんです。 

 

撮影:近藤俊哉 

 

岡倉天心という美術評論家というか、哲学者というか、僕が大好きな人物がいるんですけど、その岡倉天心の「変化こそ唯一の永遠である」という言葉があるんです。 

 

ありがたい話、今でも年齢よりは若く見えると言っていただくことが多い。でも、いずれ「さすがにもう若くは見えない」というときが絶対に来ます。いろいろと気を使って、それを遠ざけているだけで、いつかは来るんです。 

 

若さが今以上に増えることはないんだろうけど、それだけが勝負ではない。特に、芸能界って年を取ることでの不利が少ない世界だとも思うんです。もちろん、やり方にもよるんですけど。 

 

いま僕がアイドルグループのSnow Manのキラキラした子の人気と勝負して、その分野で並ぶことなんてあるはずもない。でも、70歳には70歳の意味がある。どれだけの人と出会って、どれだけの知識を入れて、どれだけの経験を積んできたか。そして、それをやってきた上での色気。そこを感じてもらえるのも、この世界ならではのことだと思っています。 

 

 

撮影:近藤俊哉 

 

色気というのは、本当に独特で。なんというか、満月がきれいだと言う人もいるし、欠けている三日月がきれいだと言う人もいます。完全ではないところに色気が出るのも事実だし、年を取ったからすべてがデメリットということはないはずなんです。 

 

自分のことながら、20代の頃の写真を見たら「こいつは、モテるだろうな」とは思います(笑)。ただ、話をしてもさほど面白くはないとも思うんです。それだったら今のほうが面白いはずです。 

 

映画「ロッキー」のシルベスター・スタローンなんかがまさにそれだろうなと。「ロッキー」のときの若さとカッコよさももちろん魅力的ではあるんだけど、打ち震えるような色気を感じるのは最近配信されたドラマ「タルサ・キング」なんかの姿。すごい色気ですよ。 

 

昔に比べたらワーキャー言われるようなモテはなくなりましたけど、それでもモテてはいたい。これは女性からという意味もありますけど、それ以上に世の中からというか。そうでありたいと思っています。 

 

撮影:近藤俊哉 

 

今年に入って、またテレビのお仕事も増えてきたし、新しいお仕事もたくさん入ってきているんです。昔とは違う形ですけど、今の自分なりのモテ方ができているとすれば、ただただありがたいことだと思います。 

 

この前、(芸能事務所タイタン社長の)太田光代さんがすごくうれしい言葉を言ってくれたんですよ。「石田さんって何か気になるのよね」と。テレビとかで見ると、少し出ているだけでも知らず知らずのうちに見たくなっちゃうと。そういう部分って作って作れるものではないですよね。 

 

靴下をはかないことをフィーチャーしていただくことが今もあります。ま、ジョークみたいなものですけど(笑)。これも常識や権威というものへのアンチテーゼというか、そういう部分もあるんです。当たり前を疑うというか。これ一つを見ても、それが既にもう自分の形を表しているんだと思いますし、結局、自分は自分としてしか生きられない。 

 

 

撮影:近藤俊哉 

 

それで言うと「不倫は文化」という言葉が独り歩きして、いろいろなことがあった人生でもありました。 

 

また物議を醸すかもしれないけど、今はとりわけ不倫への“量刑”が厳しくなっている世の中でもあります。ただね、そもそも恋愛に倫理なんかあるのか。本当に正直な思いを言うと、そう考えたりもします。もちろん、ダメなことはダメだし、倫理はあったほうがいい。でも、そこを超越することが起こってしまうのも事実だし、そこをないものだとするのは不自然なのかなとも思うんです。 

 

不倫を全面的に良いものだとはもちろん思いませんし、たたかれても仕方がないことだと思います。ただ、たたくことはあったとしても、みんなで寄ってたかって社会的に抹殺するようなことはやめたほうがいい。僕はそう思います。そんな権利、誰にもないし。 

 

昔ね、妻の理子に聞いたことがあるんです。「どこからが不倫だと思う?」と。彼女は二人だけでご飯に行くのもアウトだって言っていました。それが彼女の線引きで、ここに対しても、人それぞれの感覚があるはずです。なんというか、何のグラデーションもないなと。 

 

撮影:近藤俊哉 

 

「不倫イコール極刑」。そんなシステマチックな構図が押しつけられている。繰り返しますけど、不倫はいいことじゃない。それにしても、それはやりすぎじゃないか。倫理、倫理と振りかざしているのに、実際に世の中がどれくらい良くなっていますか。それも同時に思います。 

 

もう少しおおらかになりませんかと僕は言いたいです。 

 

自分はこの先80歳、90歳とそんな世界からはどんどん離れていくんでしょうけど、人を好きになったりとか、ワクワクしたりとか、そういう気持ちを持つことまで悪いことなのかな。そんなことを考えたりもします。 

 

20代のときの自分は思いもしなかったかもしれませんけど、69 歳から焼き肉店を始めて、今はほぼ毎日最終電車で深夜1時頃に帰宅する日々を過ごしています。始めてから「やっぱりムチャだったな……」と思うこともあります(笑)。 

 

ただ、それをやろうと思うのが自分だし、そんな自分として生きていくしかない。いまこの年になって、そんなことを強く感じています。 

 

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石田純一(いしだ・じゅんいち) 

1954年1月14日生まれ、東京都出身。“トレンディー俳優”としてフジテレビ「抱きしめたい!」「君の瞳に恋してる!」などに出演し、一躍、時の人となる。ニュースキャスターとしても注目を集めるが、「不倫は文化」騒動で仕事を失う経験もする。俳優のいしだ壱成は息子、モデル・俳優のすみれは娘。2009年12月にプロゴルファーの東尾理子と再婚。12年に男児、16年に女児、18年に女児が誕生。 

 

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」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。2025年、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となります。また、さまざまなインフラが老朽化し、仕組みが制度疲労を起こすなど、日本社会全体が「老い」に向かっています。生じる課題にどう立ち向かえばよいのか、解説や事例を通じ、ユーザーとともに考えます。 

 

 

 
 

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