( 269481 )  2025/02/24 16:08:29  
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写真:現代ビジネス 

 

習い事や家族旅行は贅沢?子どもたちから何が奪われているのか? 

 

低所得家庭の子どもの約3人に1人が「体験ゼロ」、人気の水泳と音楽で生じる格差、近所のお祭りにすら格差がある……いまの日本社会にはどのような「体験格差」の現実があり、解消するために何ができるのか。 

 

発売たちまち7刷が決まった話題書『体験格差』では、日本初の全国調査からこの社会で連鎖する「もうひとつの貧困」の実態に迫る。 

 

*本記事は今井悠介『体験格差』から抜粋・再編集したものです。 

 

事例5:泣きながらやったピアノ 

 

菊池彩さん 長男(小学生)・長女(小学生) 

 

菊池彩さんは二人の子どもを育てながらパートで働いている。昨年からある資格の取得を目指して勉強を始めたという。 

 

──何の資格を目指しているんですか。 

 

社会保険労務士です。去年から勉強し始めました。今年は合格率が5%で、仕事や子育てをしながらも自分としてはできる限りやって臨んだんですけれど、まだまだでしたね。10科目で満遍なく点数を取らないといけなくて。不得意科目をつくっちゃだめなんです。 

 

問題の内容も、「未満」か「以下」かとか、「義務」か「努力義務」かとか、覚えることがたくさんあります。試験が1年に1回しかないのもプレッシャーですね。今年は力及ばずでした。また1年がんばります。 

 

──なぜ社労士の資格を取ろうと思ったんですか。 

 

今はある会社の人事でパートとして働いていて、給与計算とか退職金の計算とかをしています。環境はとてもいいし、やっていることも大好きです。 

 

時給は最低賃金のちょっと上ぐらいです。週3から週5で、月収は8万から10万円くらいですね。時間帯は日によっても違いますが、朝に子どもを学校に送り出してからなので、9時半から16時ぐらいまでです。 

 

資格の勉強を始めたのは、子どもを育てるにあたって「今よりお金が上がったらいいな」という気持ちも少しはあるんですけど、それよりも「リストラされたら困る」という気持ちのほうが大きいです。 

 

社労士は国家資格だし、もしそれが取れたら、リストラの列に並ぶ一番最後にしてもらえるかなって。パートから社員に立候補するにしても、資格があったほうがしやすいかなって。前例はないんですけどね。 

 

──今の仕事を失いたくないという気持ちが強いわけですね。 

 

そうですね。今は元の夫から養育費を受け取れていますが、それがいつどうなるかわからないという不安もあるので。 

 

──現状の収入は給料と養育費以外にありますか。 

 

あとは公的な手当ですね。児童手当、児童扶養手当、自治体からの手当があります。貯金は増やせないけれど、減りもしないというところで何とか収めたいと思っています。 

 

ただ、児童扶養手当が18歳までで、今は本当にそれに頼っているので不安です。今年は長男が10歳の年で、あと8年で手当が減り始めます。そういう不安もあって、社労士の資格を取っておこうって。自力で稼げるようにしておかないと。 

 

今井 悠介(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事) 

 

 

 
 

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