( 269741 ) 2025/02/25 05:10:05 0 00 6回、モロニー(右)の強烈なパンチを巧みにかわす那須川(撮影・たえ見朱実)
<ボクシング:119ポンド契約体重10回戦>◇24日◇東京・有明アリーナ
無敗の格闘家でWBOアジア・パシフィック・バンタム級王者の那須川天心(26=帝拳)が前世界王者を撃破した。前WBO世界同級王者ジェーソン・モロニー(34=オーストラリア)との119ポンド(約53・9キロ)契約体重10回戦に臨み、10回を戦い、ジャッジ3-0判定で勝利を飾った。2人が97-93、1人が98-92と大差の判定だった。
那須川は「いやー、本当にモロニー選手、予想どおりにめちゃくちゃ強くて。初めて効かされた感じ。あ、これかあーと。自分ではそんなに効いた感じはないんですが、いい経験をさせてもらいました。打ち合いをしたことがなくて、初めて、打ち合いをして、ちょっと一人前というか、男になれたかなと思います」とリング上で話した。
モロニーは20年10月、WBAスーパー、IBF世界同級王者だった井上尚弥に7回KO負けを喫した。昨年5月には武居由樹(ともに大橋)に判定負けし、23年5月に獲得したWBO同級王座を手放した。日本のファンにも知られる前王者だけに「(2人と)比べられるでしょうね。でも自分がどれだけ通用するか、そこしか考えていない。自分の可能性を全部ぶつけていく。(2人を)超えられるのか超えられないのか。はたまた飛び越えちゃうのか、どうなるかは自分でも分からない。そこは本当に楽しみ」と静かに燃えてモロニー戦に挑んでいた。
24年10月、WBOアジア・パシフィック王座を獲得。「地域王座獲得」という日本プロボクシング協会の定める内規をクリアし、国内で世界挑戦できる立場となった。バンタム級の世界ランキングでもWBA2位、WBC3位、IBF13位、WBO3位につけており、世界主要4団体で王座挑戦可能だ。「世界ベルトが見えてきたので、25年は『対世界』という感じ。自分よりも強いと言われる選手がたくさんいる中、下から上がっていく姿をみせたい」と強い決意を両拳に宿して強気のファイトを貫いてみせた。
今夏前に最後の世界前哨戦となる7戦目を控え、今秋に設定される8戦目以降に世界挑戦する見通し。那須川は言う。試合後のリングにはWBO同級王者武居由樹が上がってきた。「僕も世界チャンピオンになって、いつかどこかで必ず戦いましょう。ボクシングルールで」。武居からは「自分も試合やらなきゃいけないことあるので、クリアしたら、またこのリングで会いましょう」と言われた。 23年4月のボクシング転向6戦目で、あらためて世界トップ級であることを証明。今秋以降に控える世界挑戦に向けて、大きなはずみをつけた。
◆ラウンドVTR
1回 那須川はしっかり距離をとり、相手の出方を見る。モロニーはガードを固めながら圧をかける。出てきたところにタイミングよく那須川がジャブを合わせる。モロニーの右カウンターを食らうが、終了間際に右を返す。天心10-9モロニー
2回 那須川がモロニーのジャブに合わせてワンツーを放つ。前に出るのはモロニーだが、那須川は冷静に見極め出てくるタイミングでパンチを放つ。元世界王者の防御テクニックに苦戦。天心10-9モロニー
3回 那須川がカウンターの左ストレートをヒット。積極的に足を使って回り込むが、モロニーのガードが固く崩せない。天心10-9モロニー
4回 ゴング直後からモロニーが積極的に出る。那須川は防戦気味で足を使って相手の攻撃をかわす。天心9-10モロニー
5回 モロニーが出てくるとこを狙い、那須川の左ボディーアッパーがクリーンヒット。さらに左ボディーで相手の動きを止めにかかる。天心10-9モロニー
6回 ゴング直後にモロニーが一気のラッシュ。那須川は声をあげながら耐え、左ボディーを中心に逆襲。距離を詰めての打ち合い。勝負をかけてきたモロニーに負けず、那須川が応戦する。天心9-10モロニー
7回 モロニーが変わらず攻勢。那須川は鼻から出血で顔を赤く染める。しかし、攻め手は緩めずに壮絶な打ち合い。那須川が左ストレート連打からのボディー攻めで追い詰める。天心10-9モロニー
8回 モロニーが圧力をかけて出てくるところを那須川が狙い、左のカウンターを浴びせる。那須川の左右にステップを切る動きにほんろうされたモロニーがスリップダウン。天心10-9モロニー
9回 モロニーが出てくるところ、那須川が右アッパーから左ストレート。那須川の足の動きは落ちることなく、巧みに相手の攻撃をかわす。天心10-9モロニー
10回 ゴング前、那須川は両手を突き上げて観客に優勢をアピール。モロニーが変わらず前に出て圧力をかけてくるが、那須川の巧みな動きは衰えず。ダウンこそ奪えなかったが持ち味を存分に発揮した。天心10-9モロニー。判定はジャッジ3人とも那須川を支持。プロボクシングでも6戦6勝(2KO)と無敗を守った。
◆那須川の世界ロード 25年は世界王者への道「3年計画」のラストイヤーだ。23年4月、日本ランカーだった与那覇勇気(真正)とのデビュー戦で6回判定勝利。24年7月のジョナサン・ロドリゲス(米国)との世界ランカー対決で3回TKO勝ち。24年10月にはWBOアジア・パシフィック・バンタム級王座を獲得し、日本プロボクシング協会の内規をクリア。日本での世界王座挑戦権を得た。今夏前に7戦目を控え、今秋以降となる8~10戦目で世界挑戦する見通し。なお同じキック出身の武居由樹(大橋)はプロ9戦目で世界王座を獲得した。
◆キック出身の主なボクシング世界王者 スーパーライト級王者としてムエタイ無敵を誇ったセンサク(タイ)は75年7月、転向3戦目でWBCスーパーライト級王者フェルナンデス(スペイン)に8回KO勝ちして世界王者に。3戦目での世界王座奪取は今も最短記録。ムエタイ3階級制覇ウィラポン(タイ)は95年9月に転向4戦目でダオルン(タイ)に判定勝ちしてWBCバンタム級王座を獲得。元WBO、WBC世界ヘビー級王者ビタリ・クリチコ(ウクライナ)もキックからの転向組。転向後、世界選手権スーパーヘビー級銀、プロでも世界一に。24年5月、元K-1スーパーバンタム級王者武居由樹(大橋)がWBOバンタム級王座を獲得し、日本人初のK-1とボクシングの世界王者となった。
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