( 270861 ) 2025/02/28 03:59:51 0 00 男性が事故を起こした現場(鳥取市東町で)
高齢者の交通事故が後を絶たない。加齢で集中力や瞬間的な判断力が衰え、加害者にも被害者にもなる可能性がある。昨年2月に人身事故を起こし、有罪判決が確定した鳥取市の男性(92)は「なぜ早く免許を返納しなかったのか後悔している」と法廷で語った。(久保田万葉)
地裁は今月5日、車で歩行者をはね、約3か月の重傷を負わせたとして自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致傷)に問われた男性に対し、禁錮1年2月、執行猶予3年(求刑・禁錮1年4月)の判決を言い渡した。
判決などによると男性は昨年2月15日朝、軽乗用車を運転し、病院へ向かった。鳥取市内の国道を走行中、赤信号で止まらず、横断歩道を渡っていた女性(当時57歳)に衝突。女性を転倒させて引きずり、けがをさせた。
女性に気がついたのは「車の隣に乗っていた妻が大きな声を上げ、『ドン』というぶつかった音がした後だった」という。
男性は2020年にも横断歩道を渡る歩行者をはね、罰金刑を受けた。運転免許証の返納を考えなかったわけではないが、「病院やスーパーに行くのに便利なもので、ついつい返納しなかった。『しなければ、しなければ』で時が過ぎてしまった」と話した。
今回の裁判で、検察側は「基本的かつ重要な注意義務を怠った」と指摘。弁護側は「反省している」などとして、執行猶予付き判決を求めて結審していた。
鳥取県警によると県内の免許人口は、14年の約38万5000人が23年に約37万2000人となり、約1万3000人減少した。一方で、65歳以上は23年が11万1000人で、14年の8万6000人に比べ、約2万5000人増えている。
県内では、高齢運転者による事故の割合も増加している。65歳以上の人身事故の割合は、14年の20・6%が24年に29・9%になった。また、24年の交通死亡事故13件のうち、8件が高齢者による事故だった。
公共交通機関の少ない鳥取県内では、高齢者が免許を返納するのに大きな壁がある。鳥取市は、65歳以上を対象に路線バスの定期券購入費を半額にし、米子市は、70歳以上で自主返納から1年以内は路線バス6か月定期券が1000円で購入できるといった支援策を取るが、バスや列車の便数が少なく、移動手段の確保には課題がある。
男性は事故を起こした8か月後、免許を返納した。病院にはバスを乗り継いで通っているという。
高齢運転者による事故が相次いでいる現状を受け、県警交通事故抑止対策室の小椋克久室長は「まずは自分の認知機能低下を知り、不安がある場合は気軽に相談窓口に連絡してほしい」と話す。東部(鳥取市)、中部(湯梨浜町)、西部(米子市)の各免許センターに相談窓口がある。
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