( 271361 )  2025/03/02 06:02:28  
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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

65歳以上の高齢者の4人に1人が働く時代。60代後半で5割、70代以上で2割弱の人が働いています。働く理由は人それぞれですが「生活のため」というケースが多数派。年金が極端に少なく、ほかに収入を得ないと生きていけない人たちです。 

 

丸山隆さん(仮名・77歳)。バイトを2つ掛け持ちし、給与は月16万円ほど。バイト1つ目はビルの清掃業で、毎朝7〜9時までの勤務。もうひとつは宅配物の仕分け・検品で、10時から勤務開始。時給はどちらも1,280円。仕分け・検品のバイトは日雇い契約ではあるものの、現金手払いがありがたいとか。 

 

――毎日とはいかなくても、仕事終わりに缶ビールを買ってひとり晩酌するのが、この上ない至福のとき 

 

普段の食事はご飯だけ、ということも多いといいますが、昨今はさらに悲惨なことに。 

 

――元々、炊いたご飯に目一杯お湯を足して、かさ増しして雑炊にして食べるんだよ。味もほとんどない、お湯を飲んでいるようなもんだね 

 

確かに備蓄米の放出で話題になっているとおり、米の値段が急上昇。価格は1年で倍近くにもなり、食卓を直撃しています。 

 

 

 

【米の「東京都区部小売価格」の推移】 

 

2024年1月…2,283円 

 

2024年3月…2,306円 

 

2024年5月…2,403円 

 

2024年7月…2,602円 

 

2024年9月…3,152円 

 

2024年11月…3,843円 

 

2025年1月…4,051円 

 

2025年2月…4,239円 

 

出所:総務省統計局『小売物価統計調査』 

 

※数値は、国内産/精米/単一原料米(産地/品種及び産年が同一のもの/袋入り5kg入り/コシヒカリを除く 

 

米価格の上昇は年金で生活をしている高齢者を直撃。スーパーでも米の価格とにらめっこし、買うか、それとも我慢するか、迷っている高齢者の姿を見たことがあるでしょう。 

 

そんな話をすると、「年金、そんなの、大したもらってないよ」と丸山さん。聞くと、月1.6万円ほどだといいます。「たったそれだけ?」と耳を疑ってしまうような金額です。 

 

――70歳になる前だったか。それまで保険料を25年以上納めないと年金はもらえなかった。それが10年以上払っていたらもらえるようになって。ありがたいよ 

 

 

給与が月16万円。手取りにすると13万円ほど。さらに年金を加えると、月15万円弱を手にしている丸山さん。生きていくには十分だといいますが、何かあったときのことを考えて普段は可能な限り節約して暮らしています。“ほぼお湯の雑炊”をすすっているのはそのため。 

 

――仕方がない、好き勝手に生きてきた罰だよ 

 

定職についた記憶はないという丸山さん。年金保険料も払ったり払わなかったり、だったといいます。そもそも国民年金は、20歳から60歳までの40年間にわたり支払い続ける制度です。たとえば、今年から老齢基礎年金の受給資格を得る65歳の方は、1980年に国民年金に加入しており、当時の保険料は3,770円でした。以降、保険料は徐々に引き上げられ、1993年には月額1万円を超えるようになりました。結果として、2020年に60歳を迎えるまでに支払った保険料の総額は約546万円に達します。現在の支給水準であれば、約80ヵ月以上の年金受給期間があれば、納付した総額を上回る給付を受けることが可能。令和7年度、老齢基礎年金は満額受給で月額69,308円、年額では83.1万円ほどを受け取ることができます。 

 

また、厚生労働省の『令和5年 簡易生命表』によると、65歳から年金受給を開始して7年後の72歳時点で、生存率は男性80.9%、女性90.5%となっています。つまり、大多数の受給者が納めた保険料以上の年金を手にする可能性があるため、多くの専門家は日本の公的年金制度が有利であると評価しています。 

 

一方、令和5年度の国民年金保険料の納付率は77.6%。最終的な納付率は85%弱になりそうです。しかし年金に依存して生活する高齢者のなかには、非常に少額の給付しか得られていない、またはまったく年金を受け取っていないケースも散見されます。厚生労働省の『令和5年度 後期高齢者医療制度被保険者実態調査』によれば、65歳以上の無年金者は全国で49万0,909人。さらに年間20万円(月1万6,666円)未満の人たちも合わせると71.6万人ほどになります。 

 

――こんなに長く生きるとは思ってなかったから、老後の生活なんて考えてなかった。最低限のことさえやっていれば、バイトを2つ掛け持ちしなくても生きていけたかもしれないな 

 

今のところ、病院いらずの健康体というのが唯一の救いだといいます。 

 

[参考資料] 

 

日本年金機構『国民年金保険料の変遷』  

 

厚生労働省『令和3年 簡易生命表』  

 

日本年金機構『令和5年度の国民年金の加入・保険料納付状況』  

 

厚生労働省『令和4年度 後期高齢者医療制度被保険者実態調査』 

 

 

 
 

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